特定技能と解雇(特定技能労働者を雇用または雇用を検討する会社の方・登録支援機関の方向け)

HRClub_特定技能と解雇
2022.03.30

 日本人の雇用をもってしてもなお人手不足が著しい業種において、外国人労働者の方々の手を借りるのが、在留資格「特定技能」による外国人労働者の受け入れです。

 在留資格「特定技能」を導入するにあたって気をつけなければならないのが、「特定技能外国人と同種の業務を行う従業員(外国人だけでなく日本人も含む)を1年以内に非自発的に離職させていないこと」という条件を満たさなければならないことです。この条件を満たしていないにも関わらず在留資格を得てしまった場合、在留資格等不正取得罪に問われます。入管が特定技能の在留資格を許可したからと言って、会社が1年以内に非自発的に離職させていないものとして認められたことを意味するのではありません。

 また、特定技能による労働者を受け入れ後、「特定技能外国人と同種の業務を行う従業員(外国人だけでなく日本人も含む)を非自発的に離職させた」場合、その時から会社は特定技能による労働者を働かせることはできなくなります。上記に該当するにも関わらず、特定技能による労働者を就労させた場合、労働者は不法就労罪に該当し得ますし、会社は不法就労助長罪に該当し得ます。労働者は非自発的離職に関与できない立場、知りえない立場にもあり得るため実際に罪の責任を取ることを免れる可能性はありますが、会社においては罪の責任を取らなければならなくなるかもしれません。

 
特定技能の労働者、または同種の業務を行う労働者を解雇するには重責理由が必要となる

 特定技能制度において許容される解雇というのは、労働関係法令において許容される解雇よりも厳しいものになっています。労働関係法令において許容されても、特定技能制度において許容されない解雇を行った場合、特定技能制度を利用できない会社となってしまいます。つまり、解雇が更に制限されるということです。

 特定技能制度で許容される解雇は、重責理由で解雇をすることに限られると考えても良いでしょう。重責理由による解雇を「重責解雇」ということがあります。重責解雇と懲戒解雇は考え方が異なり、重責解雇は懲戒解雇よりも厳しい条件の下でしか認められません。重責解雇の例として一般的には労働者において社会通念上重大な非行と認められるような行為が必要となります。つまり、特定技能制度により労働者を雇い入れるということは会社が行使できる解雇の権限が著しく制限されるということを理解する必要があります(もちろん特定技能制度により労働者を雇い入れる必要がないと判断した場合、通常の労働関係法令に基づく解雇の考え方を採用することができます)

 
有期限雇用契約における解雇と特定技能の関係

 有期限雇用契約においては期限まで働いてもらうことが原則で、有期限中に解雇をするにはやむを得ない事由がない限りできません。つまり期限中の解雇は、極めて限定的な理由に限られると考えてよいでしょう。もちろん特定技能の制度の下にあっても同じです。

 
有期限雇用契約の雇止めと特定技能の関係

 通常の労働関係法令において有期限雇用契約は、原則として期限までの労使関係が保証され、期限の更新が保証されているものではありません(もちろん、労働者において期限が更新されることについて期待をもって当然であるという環境があれば更新しないことについて一定の制限がかかります)。

 しかし、特定技能制度の下において有期限雇用契約は、原則として更新されるものでなければなりません。つまり、労働者の勤務態度に重責理由がなく、労働者の更新の希望があった場合、原則として更新しなければなりません。有期限雇用契約の更新を会社が望まない場合、あらかじめ更新しない旨の特定技能雇用契約を締結するか、就業規則等に基づく会社の評価制度を利用して、公平な評価の上で「有期限雇用契約の更新をしない」ことを会社から労働者へ明確に意思表示をしなければなりません。

 以上の通り、特定技能により労働者を雇い入れる場合、解雇については労働関係法令よりも厳しい制限下に置かれるということを雇用主である会社や雇用主を支援する登録支援機関はしっかりと理解しておかなければなりません。

 以上について疑問がある場合、労働関係法令および入管法双方に通じた専門家の助言を受けるとよいでしょう。

長岡由剛プロフィール
行政書士明るい総合法務事務所 代表 特定行政書士として行政書士6名(約20年入管の審査官を務めた者もいる)、外国人補助者3名の体制のもと、年間1,500件以上の外国人の在留関連の手続きや各種法律相談・行政手続きの依頼に応じる。ポリシーは「外国人にとって日本がもう一つの故郷になりますように。プロの矜持と共に敬意を込めて。」 【書籍】『行政書士の業務展開』入管実務専門行政書士の専門領域と仕事【就労編、身分・地位編】担当。出版社:成文堂。『知識ゼロからの外国人雇用』 監修。著者:竹内幸一(株式会社グローバルパワー代表取締役)出版社:幻冬舎 行政書士明るい総合法務事務所URL http://www.akarui-home.com