多文化で逆に高まる集中感!

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河谷隆司の多文化人材の活かし方

異文化マネジメント・コンサルタントの河谷隆司です。今月から新コラムを担当させて頂きます。これまで25年ほどの間、支援先の企業さんの現地拠点を訪問して、現地人幹部へビデオインタビューをしています。成果は、赴任前と赴任後(現地開催)の異文化マネジメント系の研修で、参加者には聞こえてこない現地スタッフの生声として視聴・討議しています。

この新コラムでは当初の数か月間は、アセアン、中国、欧米で効果的なリーダーシップ行動のヒントをお届けしたいと思います。皆さんの反応が良ければ(笑)、バイリンガル人材の活かし方、外国人マネージャー向けのManaging a Japanese Teamまでたっぷりお届けするつもりです!

異文化を消し、異文化を出す

初回は、グローバルな組織作りの最終ゴールと言ってもいい「異文化シナジー」を、最もビビッドに語ってくれたシリコンバレーのアメリカ人研究員に登場してもらいましょう。いきなり、ハイライトシーンです。

“Multiculturalness helps motivate because there is a sense of wonder!”
「多文化は集中感を高めますよ。だって(相手が何を考えているか解らないのですから)ドキドキなんです!

(アメリカ・日系IT研究所・シニア研究員)

「私のメンバーはウクライナ、イラン、インドと多国籍ですが、メンバーが多文化出身であっても、マネージャーは 時にはその異文化を忘れさせる(forget their differences)ことが大切です*。と同時に、創造性が欲しいときには、個人の持ち味を出させるんです(発言はkeep their individualitiesでしたがニュアンスから「出させる」と私訳)。
… ある時、ある研究員のアイデアが生かされず没になったんです。私はその時、“今回は確かに陽の目を見なかった。しかしあなたは未来に貢献したんだ** (you have contributed to the future!)”と励ましたんです」

*忘れさせるのは、タスクの面白さやチームのビジョンなどの話しで、一体感を創ろうとするとき。

**何と人の気持ちのわかるcaringなボスなんでしょう!あるアセアン日系企業のローカル部長氏が日本人ボスのことを「悪い知らせの時しか話しかけてこない」と言ったのを思い出します。没でも何か言う。これこそフィードバックですね。こういった当意即妙のひと言はリーダーが相手に到達して欲しいと願っている光景がはっきりとあるから出てくるのです。私の造語でBurning Messageと呼んでいます。

リーダーの黄金律はボスとフレンド?

「日常のコミュニケーションでは、仲間関係と上下関係のバランス*を心がけています (“balance collegial vs. managerial relationship”)。皆が落ち込んでいる時には、チームでドライブに出かけます**。車中は無礼講です。 私も彼らの一員になりきって、彼らの心の奥底を探ります。仕事でかなりプレッシャーをかけたなぁと思うときは、いったん引いて(pull back)そんなことをするんです。やっぱり緊張感と動機づけの組み合わせですからね(“combination of threat and incentives”)」

*当たり前のように聞こえますが、中国~アセアン全10カ国~インドまで歩いた結果、理想のグッドボスの要件として上がったのが「boss & friend」。異口同音で驚きました。これは多くの国に共通するリーダーシップの黄金律と言えそうです。米Kellogg Business School の教科書にもリーダーシップの要諦として”Does my boss care about me?”とありました。もちろんcareの仕方はその土地の風習や上司の考え方によって違ってくるのですが。

**行き先はスタンフォード大学院!職場から車で北上15分です。研究員の心の故郷に帰ってビジネス疲れを癒すそうです。

「多文化は集中感を高めますよ。だって相手が何を考えているのかわからないのですから、ドキドキなんです*。 異文化マネジメントの秘訣は、すべて自分自身の中にあると思います。 相手の立場に身を置いてみること。自分が相手と同じ境遇にあるとしたら、どう考えるだろうかと考えてみることです」
*氏が、 「多文化は…ドキドキです(a sense of wonder)」 と言った時、思わず、” Japanese might call it a sense of fear!!” (日本人なら恐怖感と言うでしょね!)」と突っ込むと大爆笑でした。

字数の都合でほんの一部でしたが、ねぎらいの会話が減ってきた?日本の職場にたくさんのヒントが込められている会話でした。こんな動画を皆さんと見ながらお話しする場を作りたいですね! ぜひ質問やコメントをお待ちしています!


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<公開セミナーのご案内>

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●株式会社 ダイバーシティ・マネジメント研究所 

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河谷隆司プロフィール
株式会社 ダイバーシティ・マネジメント研究所 代表取締役 世界各地の日系と外資系企業、政府機関、経営大学院で異文化マネジメント、日本型ビジネス文化、グローバルビジネススキルを指導。マレーシア戦略国際問題研究所を含めアジア勤務17年。外資系日本支社長へのコーチング、外資系企業の日本企業買収前後の文化統合コンサルティングにも携わる。メインドメインは「アジア太平洋×異文化マネジメント×日本精神」の三位一体。日本文化を発信するネットテレビJapan Spiritキャスター(YouTube視聴可)。著書は『Winning Together at Japanese Companies』『アジア発 異文化マネジメントガイド』他多数。