人事相談室 -人事のお悩みを回答-

2009.08.01

Q-01. 「短期滞在」ビザから就労ビザへの切り替えはできますか?

在留資格「短期滞在」で日本に滞在している時に日本での就職が決まり、このまま日本で働きたい場合、本国に帰国せずに就労ビザへの切り替えはできますか?
2009-08-06 質問者: 日系/情報サービス
 

■ 回答
就労系の在留資格に関して、結論から言えば回答としてはNOです。日本は在留資格制度を採用しているため、まずは在留資格認定を入国管理局で受けないといけません。そのため、原則は一度、国に帰らなければなりません。但し、例外として、その認定証明書が交付されたあとに未だ、「短期滞在」の在留資格の期限が残っている状態であれば、その期限内にパスポートと認定証明書を持って入国管理局へ行き、変更申請をすることができます。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  行政書士 岡島理人


 

Q-02. 夜勤勤務を行う者の有給休暇の付与数、労働賃金は?

夜勤勤務を行う場合、有給休暇の付与数を計算する際の労働日数は午前0時をまたぐ場合、2日間勤務したものとして計算するのでしょうか。
 また、夜勤勤務の場合、仮眠時間を設けるべきですか?仮眠時間中に呼び出しがある業務の場合の労働賃金はどうなりますか?
2009-08-11 質問者: 日系/その他製造業
 

■ 回答
労働基準法で定める年次有給休暇の“労働日”とは、原則として、暦日計算とされています。例えば、通常の日勤の従業員が、時間外労働によって翌日の午前2時までに業務が及んだ場合、この翌日の勤務を免除したとしても年次有給休暇を与えたことにはなりません(翌日の午前0時から2時までの2時間勤務しているため)。

 また、この翌日の2時間勤務を“全労働日の8割以上の出勤”(パートタイマーのいわゆる“比例付与”の日数は、そのパートタイマーの所定労働日数で年次有給休暇を付与する日数を定めているため、ここでいう“労働日”とは、比較対象になりません。)の一労働日として取扱うか否かという問題があります。これは、所定労働時間より短くても、“全労働日の8割以上”の出勤率の計算にあたっては、労働日を単位としてみますので、この上記例の2時間勤務は、一労働日として取扱います。すなわち、ご質問の場合、午前0時をまたぐ場合、2日間勤務したものとして計算します。しかし、8時間の3交代勤務の2暦日にまたがる勤務時間帯(①午前6時~午後2時、②午後2時~午後10時、③午後10時~午前6時の場合の③のケース)と、常に夜勤勤務の場合については、その勤務時間を含む継続24時間を一労働日として取扱って差支えないとされています。すなわち、ご質問の場合、夜勤勤務の状況により、2日間勤務したものとみなすかどうかを判断します。

 夜勤勤務の場合の仮眠時間を設けるべきかどうかですが、労働法規上では、仮眠時間についての定めはなく、休憩時間について「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなくければならない。」と定めているだけであり、たとえ何時間勤務であっても、労働法規上は、1労働ごとに最長1時間の休憩を与えればよいことになっています。ただし、会社に就業規則が存在する場合は、そちらを優先されます。休憩の規定は、ある程度労働時間が継続した場合に、蓄積された従業員の疲労の回復を目的としているため、現実問題として1時間の休憩では業務に支障をきたすことが明かである場合などは、会社と従業員側との交渉の余地があるかと思います。

 仮眠時間中を労働時間として取扱うかどうかについては、何らかの仕事が発生する可能性がありそれに備えて待機していなければならないのであれば、労働から開放されているとはいえず、労働時間として取扱わなければなりません。すなわち、労働法規上、労働者は会社の指揮命令下にある時間は、労働時間としてみなされます。

 しかし、夜勤の際の仮眠時間がすべて労働時間としていなされるかというと、必ずしもそうではありません。業務の発生の頻度が極めて低い場合には、労働基準法の“監視断続的労働”に該当すると判断される場合がありますが、通常の労働と監視断続的労働が混在し、または日によって反復するような場合は、監視断続的労働とは許可されませんので、仮眠時間における賃金は発生します。ご質問の場合、仮眠時間中に呼び出しがある業務ということですので、労働から解放されておらず、労働時間としてみなされます。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  社会保険労務士/行政書士 秋山周二


 

Q-03. 平成22年の労働基準法改正による、年次有給休暇の設定方法はどうなりますか?

弊社では現在、年次有給休暇は日単位での取得のみとし、半休などは認めていません。平成22年の労働基準法改正に伴い、労使協定を締結し、年次有給休暇が時間単位で取得できるようになった場合、1時間毎の単位ではなく、半日単位(4時間ごと)等、会社で取得できる時間数を限定することは可能でしょうか?
2009-08-11 質問者: 外資系/化学・製薬
 

■ 回答
労働基準法の現行では、年次有給休暇は日単位で取得することとされていますが、平成22年の労働基準法改正では、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。

 年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができるとされおり、半日単位(4時間ごと)等で会社が取得できる時間数を限定することは、改正の趣旨(少子高齢化が進行し労働力人口が減少する中で、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう労働環境を整備するというもの)にから判断して、適切な対応とはいえないでしょう。

 また、今回の改正は、時間外労働の割増賃金率が引き上げに関しては、中小事業主の事業(資本金の額又は出資の総額が3億円以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人以下である事業主等)については、当分の間、適用が猶予されますが、年次有給休暇の時間単位取得については、この猶予規定がありません。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  社会保険労務士/行政書士 秋山周二


 

Q-04. 海外赴任者にも健康診断を実施する必要がありますか?

当社ではアメリカと中国に赴任をしている社員が何名かいるのですが、海外赴任者の場合も年に1度は健康診断を受けなければいけないのでしょうか?業務の都合などで日本に帰国できない場合はどうすべきでしょうか?
2009-09-05 質問者: 日系/ソフトウェア
 

■ 回答
海外赴任者に対する健康診断をはじめとする健康管理については、海外へ従業員を6ヶ月以上派遣しようとするときは、あらかじめ、事前の健康診断の義務付けており、また6月以上海外派遣した従業員を日本国内の業務へ就かせようとするときも健康診断の実施を義務づけています。

しかし、経済のグローバル化に伴い海外勤務者が増加する一方で、上記以上の健康管理対策については、個々の企業に任せているのが現状であります。すなわち、複数年を予定する海外赴任者の場合、会社に対し派遣前および派遣後の健康診断を義務付けていますが、その間の健康診断についてまでは、会社に求められてはいません。しかし、家族帯同の場合は、海外赴任者本人のみならず、配偶者、子供も含め健康診断を受けておくほうがよいでしょう。

近年の健康診断は、法定の健診項目のみならず、海外渡航者に特化し、赴任先に応じた感染症や予防接種などのアドバイスの他、世界各地の生活情報や医療環境などの情報提供などを行っているところが多いようです。海外生活では、自己の健康状態を把握し、赴任地の状況に応じた健康の自己管理が、予防という観点からも重要といえます。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  社会保険労務士/行政書士 秋山周二


 

Q-05. 海外赴任者の所得税は、どのように計算すれば良いですか?

日本で採用した社員が海外への赴任をした場合、所得税はどのように計算し、対応すればいいのでしょうか?
2009-08-04 質問者: 日系/金融・証券
 

■ 回答
従業員が海外へ赴任した場合は、その対象者が非居住者となるかどうかで所得税計算の取扱いが異なります。

 年の途中で非居住者となる場合は、居住者として支給を受ける給与を1年の最後の給与とみなして年末調整をすることになります。その後、海外赴任に対する給与等は、日本の課税対象ではないため、源泉徴収の必要はありません。非居住者とならない場合は、源泉徴収の対象となり、他の従業員と同様に年末調整を行うことになります。

 所得税法上の居住者とは、日本国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人(所得税法2条1項3号)をいい、非居住者とは、居住者以外の個人(所得税法2条1項5号)をいいます。また、1年以上の予定で海外へ赴任した人は居住者ですが、業務の都合により赴任期間が1年未満となることが明らかとなった場合には、その時点で居住者となります。逆に、1年未満の予定で赴任した人が、業務都合で赴任期間が1年以上となることが明らかとなった場合には、その時点から非居住者となります。いずれにしても海外への赴任時に遡って居住者と非居住者の区分が変更されることはありません。

 上記は、一般的な所得税計算と居住者と非居住者の区分ではありますが、詳細は税理士などの専門家へご相談ください。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  社会保険労務士/行政書士 秋山周二


 

Q-06. 会社指定の病院で健康診断が受けられない場合の対処方法は?

法定健診に関しては年に1度会社での実施が義務付けられておりますが、会社で指定した病院(候補、複数箇所あり)での健診を拒否し、自身の掛かりつけの病院での診断を希望する場合、健康診断にかかる費用や交通費は会社で負担すべきでしょうか?
 会社では業務の都合や時間を鑑みて、いくつか病院を指定しており、ほとんどの従業員はその中から選んで受けております。しかし中には、完全に個人的な理由で特例を希望する社員もいるのですが、その場合会社側がそれを請け負う必要があるのでしょうか?
 また、自宅から会社とは反対方向への病院のため、交通費が全額かかってしまう分や、会社指定病院であれば、業務の途中で抜けての受診が可能(業務の範囲内としている)ですが、反対方向のため、会社を休まなければならない場合も業務の範囲内とすべきなのでしょうか。その場合、個人の有給を使用してもらうことはできるのでしょうか。
2009-08-01 質問者: 外資系/情報サービス
 

■ 回答
従業員自身が、その掛かりつけの病院で健康診断を受診した場合、会社で健康診断にかかる費用と交通費をどのように対処すればよいか、まずは、健康診断を取り巻く原則的な法律の規定および行政解釈を見てみましょう。 

 年に一度の定期健康診断は、会社にその実施義務が課せられており、その健康診断を実施するのに要する費用についても、会社に健康診断の実施が義務づけられている以上、当然に会社が負担すべきものとされています。健康診断の実施に伴う受診時間の賃金の取扱いについては、一般的な健康の確保を図ることを目的として会社にその実施義務を課せられたものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、受診時間の賃金については、当然には会社の負担すべきものではないが、労使協議によって定めるべきものであるとしながらも、従業員の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、会社が支払うことが望ましいとし、負担義務までは課してはいませんが、会社が負担すべきものという態度を示しています。

 さて、ご質問のように、従業員自身の掛かりつけの病院で健康診断を受診した場合、労働安全衛生法第66条第5項では、従業員の健康診断の受診義務を定める一方で、例外として会社が指定した医師等が行う健康診断を受けることを希望しない場合、他の医師等の行う健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社へ提出したときは、この限りではないとしています。つまり、従業員から法定項目どおりの健康診断結果が提出された場合には、その健康診断は正規の健康診断を行ったとみなしています。これは、従業員へ会社が実施する健康診断の受診義務を課しているものに対して、その義務を免除する規定であり、会社がその費用を負担することは定めてはいません。すなわち、従業員がその掛かりつけの病院で健康診断を受診した場合、会社は、その費用を負担する必要はありません。

 健康診断の実施に伴う受診時間の賃金および交通費に関しましても、法律にその賃金および交通費を会社が負担すべきとする規定はなく、さらに、本来の健康診断の目的である一般的な健康の確保を図ることとは相容れないため、適正に健康診断を実施した会社側に、従業員の個人的な理由で会社指定以外の医師等の健康診断を受診した費用を負担させることは、必要はありません。また、そうした個人的理由の健康診断を受診するために会社を休まなければならない場合、会社は、業務の範囲外として取扱い、有給休暇を与えなくても差支えないでしょう。従業員が希望するのであれば、事業の正常な運営を妨げない範囲で有給休暇の扱いとすればよいと考えます。

 いずれにしましても、従業員が会社指定病院の健康診断の受診を拒否することは、実施方法に問題がないのであれば、従業員が会社の健康診断に対して誤解が生じているといえます。従業員へ健康診断の実施方法や趣旨などを理解させるとともに、会社と従業員のコミュニケーションを図っていくことも重要であると考えます。
2009-08-21 株式会社ACROSEED  社会保険労務士/行政書士 秋山周二