働く女性が陥りやすい落とし穴というテーマで、前回は「delegation」についてご説明しました。女性は自分が全てをやらなくてはいけないと思いがちなので、なかなか人に任せることをしないといった内容でした。二回目の今回は、感情論で話をしてしまう女性が多いことについてお話したいと思います。
自分は感情的な人間ではないと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、生理的に考えると、女性が感情で物事を判断し、感情で話をしてしまうのは避けられないことなのです。脳の仕組みがどうもそうなっているらしく、女性には右脳で物事を考え、行動するタイプが多、感情論に走ってしまうというわけです。大学で専攻する学部などを見ていただいてもわかると思うのですが、文学部に多いのは女性で、理工系に多いのは男性ですよね?男性には左脳が強い人間が多く、よって論理的に脳を使うことに優れています。そのため男性が物事を判断し、話したりするときは論理的思考が働いており、その正反対にある女性の感情論というのはとてもとても理解できないようにできているわけです。
「男性が一番困ってしまうのは女性の涙」ということを聞いたことはありませんか?論理的な脳を持っている男性にしてみれば、泣くという行為はまさに感情の固まりなので、まったく理解できないそうです。よって泣かれるとどう反応していいのか見当もつかなくなるとか。
いえいえ、そんな泣いてばっかりいる女性じゃありませんよ。と思っている読者の方もいることでしょう。それは確かにそうです。私の職場も泣いてばかりいる女性が集まっていたことはありません。それではどういったことが感情論と思われてしまうのでしょうか?それは、ビジネスを抽象的に話してしまったり、具体性に欠けるなど、ものごとを単刀直入に伝えられないことです。それではもう少し一つ一つ掘り下げて考えていってみましょう。
単刀直入ではない場合:
私の好きな本の一つでもあるAllan PeaseとBarbara Pease著「話を聞かない男、地図が読めない女」* からいくつか引用してご紹介します。この本は、いかに男性と女性の考え方や行動の仕方が違っているかということを脳の作用から医学的に説明しています。その違いがよくわかる一つの例として、男女それぞれがオムレツを食べたい時の表現方法が取り上げられています。
男性の場合はとてもストレートです。「オムレツを作ってこい」「朝食にオムレツを作ってくれよ」など、単刀直入にオムレツを食べたいということを伝えます。しかし、女性の場合だとこのようにストレートに言うことができません。いくらオムレツが食べたいと思っていても、「朝食にオムレツなんてどう?」「朝食にオムレツがいいんじゃないかな?」といったように相手の意見を聞こうとします。男性が単刀直入に話すのは仕事の話を敏速にかつ効率よくまとめるのに便利だし、他人に対して権威づけをする手段になるからだと本に書いてあります。
ビジネスに置き換えて言うと、男性は単刀直入に物事を言う人間なので、逆に自分がそのように言われても大丈夫な人間なのです。むしろ、単刀直入に言われないとわからない人間でもあるわけです。となると、仕事を頼む場合、どのようにして仕事を頼んだほうがよいでしょうか?「これをいつまでにしてください」とズバっと淡々と言ったほうが伝わりやすいのかもしれません。また仕事を断るときでもそうです。「できません」とはっきり断らないと、男性にはまったく通じていないのかもしれません。男性と多く仕事をする女性は単刀直入に物事を言えるようにしておかないと、「こいつは何を言ってるんだかわからない」と避けられてしまうかもしれませんね。
抽象的に話してしまう場合:
抽象的に話すとはいったいどういうことでしょう?これは感情が前に出てきてしまうがために、物事がはっきりと伝わらないということです。例えば、ものすごく忙しくて残業が続いていたとしましょう。上司に時間をもらい、この状況を説明して、人を雇ってもらおうという状況にまできている。上司とのアポはとれ、いよいよ説明。女性だとどんな風に説明するでしょうか?
「毎日、毎日残業が大変で、もうやっていけません。どうにかしてください。」女性はまず上司に彼女がどれほど大変だったかをわかってもらいたいのです。よって「大変」だとかいう抽象的な言葉を使うわけです。また上司に解決策を押し付けたくもないので「どうにかしてください」といったこれまた抽象的な言葉になります。どのくらい大変か、どうして大変か、また、どうすればよくなるかを本人はわかっているにも関わらず、このような感情的な言葉で表現してしまうため、上司には(男性と仮定してですが)伝わりにくいわけです。よって上司は、ただ愚痴をこぼしにきたのではという程度にしか考えず、その場で話を少し聞いておしまいということになりがちです。
それでは男性の場合はどうでしょう?男性が毎日残業で大変で体力的にも限界にきており、誰か雇って欲しいと思った場合には、どのように上司に訴えるでしょうか?「何々の締め切りを間に合わせるためには毎日12時過ぎまで残業しても間に合いません。人を雇ってください。」と話を持っていくと思います。これは論理的な頭が働いて、現実論で話をするからだと私は考えます。これを聞いた上司は「こいつは毎日12時まで残業しているのか。大変努力家だ」という印象をもつことでしょう。そして、男性社員が求めたような人を雇うという解決策ではないかもしれませんが、締め切りを守るためにはどうにかしてやらなくてはと解決策を考案してくれることでしょう。12時まで仕事していることや、締め切りが間に合わないなど、具体的に状況を話した結果です。
いかがでしょうか?女性は男性に比べると感情論に走ってしまう傾向にありませんか?多かれ少なかれ、当てはまる部分があるのではないでしょうか。そして感情論を理解できない男性と働いている女性は、それによって職場で苦労していることが多いのではないかと思います。できれば女性が男性と仕事をする時には、具体的に数字や例を入れて話をするように心がけると、落とし穴にも陥らなくてすむようになるのかもしれませんね。
*「話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く」 アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ(著)/主婦の友社 2002