第52回「労働時間の端数処理について」 – アルバイト店員の勤務時間一部切り捨て報道より

今月はじめに、大手居酒屋チェーンの西日本の一部の店舗で勤務時間を過小に計上していたとして、労働基準監督署から是正指導を受け、未払い賃金を支払ったという報道がありました。報道によると、アルバイトの労働時間について30分未満を切り捨てて賃金を計算しており、その切捨て部分について賃金未払いと判断され、是正指導を受けたということのようです。

今回は予定を変更し、労働時間の計算方法について解説していきたいと思います。

労働時間の算定は1分単位で行うことが原則となります。したがって、労働時間として記録されている時間はすべて計上して、賃金を計算する必要があります。

下記の通達があります。

遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理5分遅刻を30分の遅刻のとして賃金カットするというような処理は、労働の提供無かった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金支払いの原則に反し、違法である。

上記のとおり、実際労働した時間以上の賃金カットは違法とされております。30分未満の労働時間をカットするということは賃金全額払いの原則に違反し、違法となります。
したがって、日々の労働時間は端数処理することなく1分単位で記録し計算し、賃金の計算を行う必要があります。

この労働時間および賃金の計算の原則に対し、一部例外が認められています。

《割増賃金の計算に関する例外》

1.1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合には、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること

2.1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること

3.1箇月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、2と同様に処理すること

《1箇月の賃金支払額における端数処理》

1.1箇月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと
2.1箇月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと
また、割増賃金の計算の過程では1円未満の処理は四捨五入で行います。

上記のとおり、原則は1分単位で労働時間の計算を行い。1ヶ月単位で賃金を計算する場合のみに例外が適用することができるということになります。

タイムカードが本当の労働時間を記録しているかどうか疑問であるという経営者もたくさんいらっしゃいます。また、どこからどこまでが労働時間であるという線引きがなかなか難しいといった意見も多く聞かれます。

今回のような労働時間に関するトラブルは労使双方に労働時間についての定義が一致していないことが原因の一つとなっているのではと思います。

タイムカードなどの情報を基礎として、残業指示書や各種申請書を用いることにより、労使双方の労働時間について認識を一致させることが重要と思われます。

 

宮嶋 邦彦プロフィール
社会保険労務士の仕事を通して受ける人事労務関係の相談の中から、旬な話題やお役立ち情報を掲載。 人事・労務関係の旬な話題や、法律、規則などの改正など新しい情報やお役立ち情報をお届けします。