第84回「各国との社会保障協定について」

2011.03.09 ,

グローバリゼーションが進み、経済活動も中国を中心にアジア各国との関係が深まっており、今後も新興国をはじめとして広範囲にさらに深まっていくことが予想されます。
これを背景に、日本企業の多くで社員を国外で就労させる機会が多くなっております。また、同様に日本で働く外国人の方も増えております。
今回はこれを踏まえて各国と締結されている社会保障協定について取り上げたいと思います。

社会保障協定が締結された背景は、国際的な交流が活発化する中、企業から派遣されて海外で働くことや、将来を海外で生活される方が年々増加しています。海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入をする必要があり、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が生じています。また、日本や海外の年金を受けとるためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、保険料の掛け捨てになってしまうことがあります。

(1) 社会保障協定の目的として下記のものがあげられております。

1.「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)
2.保険料の掛け捨てとならないために、日本の年金加入期間を協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)

(2) 現在時点社会保険協定が締結されている国は下記の通りです。

ドイツ イギリス 韓国 アメリカ ベルギー フランス カナダ オーストラリア 
オランダ チェコ スペイン アイルランド

(3) 社会保障制度の加入は下記の通りとなります。

「被用者本人」
【協定発効前】
日本において被用者として就労する者が事業主により日本から海外に派遣される場合、海外の社会保険制度に加え、日本の社会保険制度に二重に加入しなければならないことがありました。

【協定発効後】
原則
協定により原則として就労する国の社会保障制度のみに加入することになります。つまり、日本の事業主により協定相手国の支店などに派遣された場合や現地の企業で採用された場合には、協定相手国の社会保障制度のみに加入することになります。

一時派遣 ( 5 年以内)]
しかしながら、事業所から協定相手国へ 5 年を超えない見込みで派遣される場合には、協定の例外規定が適用されます。すなわち、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、協定相手国の社会保障制度の加入が免除されます。

《日本の社会保障制度に継続加入する人》
日本の社会保障制度のみに継続して加入し、協定相手国の社会保障制度の免除を受けるためには、次のすべての条件を満たす必要があります。

1.日本の社会保障制度に加入していること
2.派遣期間中も日本の事業所との雇用関係が継続していること*
 「雇用関係が継続している」とは、日本の事業主に役務を提供し、その事業主が労務管理をしていることをいいます。
3.派遣期間が 5 年以内と見込まれる場合であること

「配偶者及び子の取扱い」
協定相手国に一時的に派遣された人および自営活動を行う人が、引き続き日本の社会保障制度に加入し協定相手国の社会保障制度の加入が免除される場合、その人に生計を維持される配偶者および子についても、派遣前と同様に引き続き日本の社会保障制度の被保険者または被扶養者として加入することになります。

一方、長期派遣および長期の自営活動により協定相手国で就労する人が、協定相手国の社会保障制度に加入することになる場合、日本の社会保障制度の被保険者の資格を失うことになりますので、その人に生計を維持される配偶者については、日本の国民年金の第 3 号被保険者および(または)健康保険の被扶養者としての資格を失うことになります。その人に生計を維持される子については、医療保険を含む協定の場合、健康保険の被扶養者としての資格を失うことになります。
この場合で、配偶者および子の住所地が日本国内のままである場合は、それぞれが国民年金および国民健康保険に加入することになります。
また、配偶者および子の住所地が海外である場合は、国民年金については任意加入することができます(日本国籍を有する 20 歳以上 65 歳未満の人が対象)。

(4) 手続について

被用者が一時的に協定相手国に派遣される場合

協定相手国社会保障制度の加入免除: “適用証明書”
一時的に日本から協定相手国に派遣され就労する人が、協定相手国の社会保障制度への加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要があります。日本でのあなたの事業主が年金事務所(郵送の場合には、日本年金機構ブロック本部を含む。以下同じ)に申請手続きを行う必要があります。

具体的な手続きは、以下の通りです:

1) 事業主は年金事務所に適用証明書交付申請書を提出
2) 審査の結果、申請が認められた場合には、適用証明書を交付
3) 派遣された被保険者は、協定相手国内の事業所に適用証明書を提出
協定相手国の規定により相手国実施機関に提示または提出を求められた時、また協定相手国の社会保障制度に加入していない理由を尋ねられた時には、証明書を提示または提出してください。

上記2)の過程において、申請が認められなかった場合には、協定相手国の社会保障制度に加入することになります。

当初の一時派遣期間の予定を延長して協定相手国で就労する必要が生じた場合は、事業主が年金事務所に適用証明書期間継続・延長申請書を提出してください。審査の結果、延長申請が認められた場合には、新しい適用証明書が交付されます。
適用証明書を紛失、き損または記載内容に変更があった場合には、適用証明書再交付申請書を提出することとなります。

(3) 協定相手国の社会保障制度にのみ加入する場合

協定相手国へ長期派遣される場合など厚生年金保険・健康保険の被保険者である者が、協定相手国の社会保障制度にのみ加入する場合は、その事業主が厚生年金保険(および健康保険)の資格喪失届を年金事務所へ届け出る必要があります。この場合、資格喪失届には、協定相手国制度へ加入した旨がわかる書類を提示することとなります。

今後も経済のグローバル化が進むにつれ、多くの国との社会保障協定が結ばれる可能性があるのではないでしょうか。
 

宮嶋 邦彦プロフィール
社会保険労務士の仕事を通して受ける人事労務関係の相談の中から、旬な話題やお役立ち情報を掲載。 人事・労務関係の旬な話題や、法律、規則などの改正など新しい情報やお役立ち情報をお届けします。