私たちのコラムも、第 3 回目(最終)となりました。これまでお付き合い下さったみなさま、ありがとうございます。
前回までは、労働法の位置づけや意味について考えてきましたが、最後に、私たちが人事担当者だった頃に従業員からよく受けた質問、又は、現在、人事担当の方から日常的に多く受ける質問(トラブル)について、一部ですがご紹介したいと思います。
事例 1 「半休取得の際の割増賃金について」
月曜から金曜の週 5 日間、勤務時間は 9 時~ 18 時(昼休 1 時間)という契約で、勤続 5 年の社員がいた。その会社には半休の制度があったが、半休を取得したその日の残業代について、割増賃金が支払われていなかった。
この場合、残業時間に対して割増賃金はつくのでしょうか ?
回答)
この人の半休を取得した日の実労働時間によっては、割増賃金を支払う必要があります。
理由)
半休とは、1 日の労働時間 8 時間のうち、午前あるいは午後の分を休みにできる制度です。半休の制度(年次有給休暇の半日付与の制度)は、使用者に特に義務があるわけではなく、労働者の便宜を図ったものです。通常、半休分については労働していませんので賃金はありません。しかし半日付与の年次有給休暇を定めている会社もあるので、その場合の半日年休の場合は賃金が出ます。
例として、午前中を半休にあて、13 時から 18 時まで働いたとします。実労働時間は 5 時間なので、この 5 時間に対して賃金が支払われます。さらにこの 5 時間では仕事が終わらず、20 時まで残業しなければならなくなった場合は、超過の 2 時間に対しても賃金を支払う必要があります。
上記の例は、1 日の労働時間が8時間を超えていないケースなので割増賃金にはなりません。つまり、残業代は出さなければなりませんが、この場合の賃金は法定の8時間を超えていませんので、通常の賃金と同額となります。法定時間外労働を行った場合にのみ、割増賃金の支払いの義務が生じます。
これは半休を、年次有給休暇の半休に振り替えたとしても同じです。年次有給休暇について賃金は支払われますが、労働したわけではありませんので、実労働時間には含まれないのが普通です。こういうケースの取扱いはトラブルに発展する可能性が高いので、使用者側としてもきちんと就業規則に記載しておくと労使の無用なトラブルが避けられます。
事例 2 「試用期間の延長について」
入社の際、「 3 か月から 6 か月は試用期間としてアルバイト扱いになる」と言われて承諾し入社したが、6 か月経っても正社員についての案内がなかった。
この場合、無告知での使用期間の延長は法的に認められるのでしょうか ?
回答)
この場合の試用期間の延長は認められません。
理由)
試用期間を延長するためには、延長せざるを得ない特別の事情があった上で、更に本人の同意も必要です。使用者側としては、延長する期間を定めなければ本採用したと判断されますので、やむを得ず延長する際は必ずその期間を定める(同意書などを取り付ける)ようにする必要があります。
試用期間には「試しに使える労働力、とりあえず働いてもらって、採用するかどうかは後になって考えよう」というようなイメージがあります。しかし、判例は試用期間をほとんど本採用に近いものとしてとらえています。試用期間をとりあえずの採用と安易に考えていると使用者は痛い目に遭いますので注意が必要です。
上記の 2 つの事例のような会社で起こる労使のトラブルは、様々な場面で発生します。そして、そのたびに使用者側の曖昧な知識や判断はトラブルの元となります。こうしたトラブルを未然に防ぐための必要な知識や考え方に興味を持っていただきたく、今回セミナーを開催いたします。人事担当者の方はもちろん、これらの内容に興味のある方もぜひご来場ください。当日は、対面での個別の労務相談会も予定しております。お気軽にいらしてください。
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