ゴールデンウィークも終わりましたが、いかがお過ごしでしょうか。景気がよくなったこともあり、JRや飛行機の利用者も大幅に伸びたようで、多くの人が行楽や帰省で出かけたようですね。
今回は、年俸制の割増賃金の計算方法について解説いたします。
上場を希望する企業に対して労務面の調査やコンサルティングのために、全国各地の多種多様な企業を訪問しております。調査に伴い賃金規定や賃金台帳などを拝見すると、多くの企業で年俸制を導入されていることがわかります。ところが割増賃金の計算方法に問題がある企業がたくさん見受けられます。
年俸制を採用すれば割増賃金を支払わなくていいと考えている人も多いと思いますが、月給制と同様に、週又は1日の労働時間が法定労働時間を超えた部分に対して、割増賃金を支給しなければなりません。したがって、年俸制とはいえ、個別に時間を管理し、時間外、休日及び深夜について割増賃金を支払う必要があります。
その割増賃金の計算にあたり、
1. 家族手当
2. 通勤手当
3. 別居手当
4. 子女教育手当
5. 住宅手当
6. 臨時に支払われた賃金
7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
この7つの賃金は、割増賃金の計算にあたり算入しないものとされております。
賞与は、6ないし7に該当するものとして割増賃金の算定に当たりその基礎に入れないものとされておりますが、年俸制などであらかじめ賞与の「支給額」が確定しているものに関しては賞与とみなされません。
年俸制で毎月支給分と賞与の額を合計して、年俸額が確定している場合の賞与部分は上記の6または7に該当せず、割増賃金計算時に除外して計算することが出来ません。
賞与部分を含めた年俸額を12で割り、各月の残業代などを計算することになります。
例)
年俸・・・・・・600万
支給方法・・・・毎月40万円
賞与、夏冬それぞれ60万円(合計120万円)
この場合は「賞与額」が確定しておりますので、賞与部分の120万円を毎月支給分に按分して、40万(毎月支給分)+10万(賞与部分の按分した額)をもとに割増賃金の算定の基礎となる賃金を計算します。
ただし、年俸制でも毎月支給分は確定しているが、賞与については月給制のように「支給額」が確定していない場合は、月給制のように毎月支給分のみを基礎となる賃金として計算します。
ちなみに、いわゆる管理監督者は時間外及び休日に関する事項が適用除外になっておりますので、時間外労働という問題は生じず、上記のような計算は行わなくてもよいことになっております。このことから、管理監督者から年俸制の導入が進められていったという背景もあります。
ただし、管理監督者といえども、深夜労働に関する事項は適用除外とはなっておらず、深夜労働に対して割増賃金の支給が必要となりますのでご注意ください。