【多様な人々が生き生きと働ける社会とは?】ビジネスカンファレンス「MASHING UP」vol.3レポート

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2019.12.04

(写真:理論物理学者、科学技術者 / Off-World Founder アドリア―ナ・マレ氏)

2019年11月7日~8日、株式会社メディアジーン主催のビジネスカンファレンス「MASHING UP」が、TRUNK(HOTEL)(東京都渋谷区)にて開催されました。第3回目となる今回のテーマは「Reshape the Perception – 知らないを知って、視点を変える」。「性別や国籍、人種などの異なる背景を持つさまざまな人々が、互いに認めあい、生き生きと働ける社会を作りたい」という思いのもとに、2日間に渡って約100名のスピーカーが登壇しました。弊社Daijob.comが、アソシエイトパートナーとして協賛した同イベントの様子をレポートします。

■『日本人は男女平等に興味がない? ―職場での男女平等実現は200年先!? データから見る、今の日本の立ち位置』
登壇者:河田瑶子(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング)、村上由美子(OECD東京センター所長)、山口慎太郎(東京大学准教授)

セッション写真①

(写真:村上由美子氏)

まず、世界中の人々の経済的・社会的福祉を向上させる政策を推進している「経済協力開発機構(OECD)」の村上氏から、社会における女性の活躍状況についてのデータが共有されました。

OECDが発表している国際統計によれば、「成人女性の読解力と数的思考力」が日本の女性は世界で第1位を獲得しているそうです。「自信を持ってください!」と村上氏が参加者に呼びかけると、会場内には大きな拍手が沸き起こりました。その後、実は日本の男性も同じ「成人男性の読解力と数的思考力」において世界第1位を獲得していることも明かされつつ、日本の社会が抱える問題点は、依然として男女の“賃金格差”が世界の中で3番目に大きいことにあると指摘されました。

同じ条件で働いている場合でも、男性より女性の方が25%程賃金が低くなっているのが、日本の現状のようです。その上、日本では女性の方が家庭での家事労働時間も長いことがデータ化されています。さらに興味深いのは、日本の女性が仕事を辞める理由です。大半を占めるのは「仕事に満足できない:63%」「キャリアに行き詰った:49%」という、仕事の環境に満足できないことが理由となっていました。

一方、村上氏が長く働いていたアメリカでは、女性が仕事を辞める理由を例にあげると、「仕事と家庭の仕事とのバランスがとれなかった」が60%以上になっていたそうです。これらの結果から、日本の女性は他の国と比べて、家庭環境の事情より「仕事を頑張りたいけれど力を発揮しきれていない」という現状があり、多くの日本の女性が本当に求めていることは、「仕事の面白さや楽しさを追求させてもらえる環境なのではないか?」ということが、浮き彫りになっていました。

セッション写真②

(写真:山口慎太郎氏)

続いて山口氏は、「エビデンスの活用でジェンダーバイアスを減らそう」というテーマで、日本にあるバイアスをどう取り除くのかについて、実際の取り組みを例にあげて発表されていました。

バイアスを取り除くために最初にやらなければいけないことは、「データをとってバイアスを可視化する」ことにあるようです。アメリカのマサチューセッツ工科大学では、大学教員の「給料、研究賃金、研究室の広さ、賞の授与」など、さまざまな点で男女差を可視化。その結果、約10年の間に女性教員の数が倍増したそうです。

また、男女格差をなくすために「ダイバーシティ研修」を取り入れるよりも、仕組みを取り入れる重要性が説かれていました。この仕組みの重要性についてあげられた例は、アメリカの有力オーケストラで取り入れられたオーディション方法。このオーケストラでは、1970~80年代に女性の割合が5%だったところ、現在は35%にまで引き上げられているそうです。その変化に大きな効果を発揮したのが、オーディション時に演奏者の姿が見えないようにひかれた1枚のカーテン。オーケストラの審査員を務めていたプロの音楽家たちは、演奏力だけで審査を行っていたはずでしたが、無意識に潜んでいたジェンダーバイアスから逃れられなかったようです。

さらに村上氏の親族の1人が、偶然このオーケストラの団員だそうで、この“ブラインドオーディション”の導入により、人種のバイアスをとることにも大きな効果が発揮されたというエピソードが加えられていました。

セッション写真③

(写真左:河田瑶子氏)

最後に、まだまだ世の中に多くのバイアスが残っている状況の中で、生き生きと働くために大切なこととして、村上氏は「会社が個人個人の能力や成果をいかに見極めていくのか」と「1人1人が自分のキャリアは自分が作るという意識を持つこと」を強調。山口氏は、「日本の男性も育休を取ること。そして周りもそれを応援すること」をあげていました。ある海外の調査によると、約1カ月の育休を取得した男性は、後の家事負担率が増加する傾向にあるそうです。世界と比べてまだまだ低い日本の男性の育休取得が増えることも、世の中が変わっていくきっかけになるのではないかと提案されていました。

イベント写真②

(写真:左からBusiness Insider Japan 統括編集長、浜田敬子氏、社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長、上野千鶴子氏、ブラスト代表取締役社長、石井リナ氏、アドビ バイスプレジデント、秋田夏実氏)

この他、男女格差のテーマ以外でも多くのセッションが開かれました。多様な人々が活躍できる社会になるには、「トップダウンではなくボトムアップが大事」、「リーダーのポジションに女性を増やしていくこと」、「オープンイノベーションも大事だが、すでに組織内にいるメンバーの異能を活かしてあげること」などが、あげられていました。

男女格差だけでなく人種格差など、世界と比べてダイバーシティの導入に後れをとっている日本でも、2019年4月に入管法が改正され、世の中の仕組みが変わってきています。さまざまなバックグラウンドを持った人たちが利用している「Daijob.com」も、1人1人の能力が発揮されるような転職支援を今後も行っていきたいと思います。