ここ最近、環境問題や社会的課題の解決に取り組むという
経営の新たな視点が重視されてきた中で、
「社内起業家の育成」という考え方が注目を集めています。
「社内起業家(イントレプレナー)」とは、
広義の意味としては、
「大企業内で、あたかも独立企業のように新規事業を実施する部門や
プロジェクトチームを作り、その自主的な新事業創造の活動を、
本社が全面的にバックアップしていくこと」
であり、「起業家マインドを持った社員」
「経営者意識に長け、一事業部を任せられる程の社員」を指します。
しかし私が皆さんにお伝えしたいのは、
ESの視点から捉えた「社内起業家」の意味です。
それは、
「志を持って”社会とのつながり”を強め、そのような場づくりや
場への参画を実践していくビジネスリーダー」
といういわば”狭義”の社内起業家の定義です。
会社勤めをしながらも、「起業家」や「ベンチャー企業」に負けないほどの
活力を持っているのが社内起業家であり、
今注目を集めている「”社会”起業家」のように、
一組織から独立したりNPOを立ち上げたりすることで
ビジネスにソーシャル(社会的)なエッセンスを盛り込んで経営をしていく
存在とも異なると言えます。
私がこの「社内起業家」の話をする時、
必ず頭に思い浮かぶ方がいらっしゃいます。
それは、昨年、私ども日本ES開発協会 http://www.jinji-es.com/
の活動「Good job プロジェクト」
http://www.jinji-es.com/good-job_project.html
の一つである「未来のカタリバ」で講演をしてくださった、
東京急行電鉄株式会社の森田創さんです。
森田さんは、2012年に渋谷駅上にできるミュージカル劇場の計画責任者として
開業準備に奔走している方です。
「夢のある都市文化を創る」ため、東急電鉄という舞台の上で、
20代の頃から新規事業の立ち上げを進めるなど、
リーダー社員として活躍してきた森田さん。
そして現在は、海外の劇団との演目交渉といった
感性あふれる仕事を通して自らのキャリアを切り拓きながら、
渋谷という地域の街づくりに関わっているのです。
東急電鉄という企業に勤めながら、
地域やそこで暮らす人々=社会との結びつきを強め、
さらに自らのキャリアを広げていった森田さん。
昨年の「未来のカタリバ」では、
そのようなおもい・キャリアについてお話をいただいたわけですが、
私は、「社内起業家」について考えた時に、
必ずこの森田さんの姿が、一人の社内起業家のあり方として頭に浮かびます。
そして、この森田さんのようなリーダー社員を
多くの企業で増やしていくことが、
”ESを軸とした組織づくり”の一つの使命ではないかと思うのです。
このように、一組織に属しながらも、社会とのつながりを強め、
大きな志をもって仕事に取り組む「社内起業家の育成」を視野において、
未来の経営を担うリーダーの育成に取り組む必要があります。
その理由は、企業はもはや、”お金持ち”、あるいは情報という資本の大きさ
だけで競争力を生み出すだけではやっていけなくなったという点にあります。
これからの競争力の最大の要因は、共感資本の大きさであり、商品・サービスが
「人や社会、環境を大切にするストーリー」をいかに持っているかがお客様に
選ばれる決定要因となっているということです。
企業の共感資本とは、「社員同士のつながり」「社員と組織とのつながり」
「社員と仕事そのものとのつながり」「商品サービスのつながり(ストーリー)」
そして「社会とのつながり」の総量であり、
これを如何に高めるかは、経営者だけではなく
各職場のリーダーの力にかかっています。
だからこそ、リーダー自身が大きな志をもって
共感資本を高める取り組みをしなければならず、
その一つが「社内企業家」として率先して社会とのつながりを強める場に
身を置くということなのです。
しかし、リーダーを社内起業家として育てるためには、
マネジメントのしくみで会社側がフォローしていく必要があります。
具体的には、
1、社内起業家として活動する社員の育成プログラムやキャリアビジョンの構築
2、社内起業家として活動することを推進するルール(社内規程)づくり
3、社内起業家としての活動を評価する人事制度づくり
という3点です。
2,3は、改めてご紹介するとして、
私の方では次号で1の
「社内起業家としてリーダーを育てるプログラムやキャリアビジョンの構築」
についてご説明していきたいと思います。
まずは、企業の持続可能経営を実現するためには、
社員自らが”社会とのつながりを強める場”に
積極的に関わっていくことが重要であり、
そのための道筋を会社が示していくことが重要である、
という点を皆さんにご理解いただきたいと思います。