日本ではホテルのデイユースは浸透しているが、アメリカではデイユースというと売春などの違法行為を連想させる。しかし、近年では、フランス発のホテルデイユース予約サービスが、アメリカの一部の大都市にも進出している。
そうした中、高級ホテルを分単位で利用できるサービスがアメリカに登場した。在庫を最適化でき、稼働率、売上を伸ばせるため、ホテルには非常に評判がよい。
これまでのシェアリングエコノミーはP2Pが中心で、既存業界や自治体、地域住民などと摩擦を生み出すことになったが、このようにB2Cで企業の遊休資産を活用することで企業と利用者の間で win-win の関係が生まれている。
【Recharge】
URL | https://www.recharge.co |
---|---|
企業名 | Recharge Labs, Inc. |
本社所在地 | サンフランシスコ |
創業 | 2015年 |
代表 | Emmanuel Banfo(CEO兼共同創業者) Christopher Lo(製品設計担当兼共同創業者) Will Johnson(CTO兼共同創業者) |
フェイスブック | https://www.facebook.com/tryrecharge |
ツイッター | https://twitter.com/recharge |
顧客数 | サンフランシスコとニューヨークで 31 軒のホテルと提携 |
資金調達 | 2016 年、シード資金 230 万ドル 2017 年4月、航空会社ジェットブルーの投資部門より戦略投資。 (ホテル観光業スタートアップ投資専門) |
■ 創業経緯
2014 年、配車アプリ Hitch で働いていた創業者が(Hitch を買収した)Lyft や Uber の運転手がサンフランシスコ市内で休憩できる場所を提供をするために、大学時代の友人2人と立ち上げ。
当初、マンションの部屋を 30 分単位で貸していたところ、運転手以外に需要があることを知り、2015 年に通勤者やビジネスパーソンをターゲットに方向転換。
その後、チェックアウトの度に部屋の清掃が大変なので、ホテルとの提携を思いつく。
2016 年、サンフランシスコでサービス開始。
2017 年4月、ニューヨークでサービス開始。
■ 仕組み
4つ星や5つ星の高級ホテルを分刻みで予約して利用できるアプリ。
Uber などと同様、ユーザ登録時点でクレジットカードを登録。
アプリで地図上に最寄りのホテルが表示されるので、希望のホテルを選択して予約。
前もって、何時間滞在するかを指定する必要はない。
予約後 30 分で、またはホテルでルームキーを受け取ってから課金が始まり、アプリで「チェックアウト」ボタンを押すまで課金が続く。
チェックアウトの通知は、客室担当マネジャーにも送付される。
ホテル内のジムやビジネスセンターなどの施設の利用も可能。スパサービスや駐車など追加料金が発生する場合も、ホテルが追加し、Recharge を通じて課金。
オンデマンドなので、前もって予約はできない。
最低滞在時間はなく、好きなだけ滞在できる。
(分課金は割高なので、一泊料金で予約した方が得な分岐点あり。)
ただし、利用者の平均滞在時間は2時間で、大半の利用客がベッドを利用しないという。
提携ホテルは、Wやウエスティンなどサンフランシスコに 15 軒、 The Pierre や The Knickerbocker などニューヨークに 16 軒。
<料金>
サンフランシスコ:一分 0.66~3ドル(+宿泊税)一時間換算 40~180 ドル
ニューヨーク: 一分 0.83~2ドル(+宿泊税)一時間換算 57~128 ドル
料金は日時によって異なる。
客室清掃時に、まだ利用客が部屋にいれば超過料金 250 ドル。
ホテル側は Recharge のソフトを通じて、一週間、一ヵ月ごとに料金を精算。
アプリ
(出典:www.businessinsider.com)
■ 成果
利用者のメリット
乗り継ぎ便までの休憩、深夜便で到着後の仮眠、勤務後やジョギング後のシャワーと着替え、仕事スペースなどさまざまな用途で利用されている。乳児を抱えた母親による搾乳のための利用も多いという。
カフェやレンタルオフィスなどが競合だが、浴室もあり仮眠もでき、よりプライベートな環境を求める利用者のニーズを満たす。
また、たとえばニューヨークの 1 ホテルセントラルパークは一泊 400 ドルだが、Recharge では一時間 80 ドルで利用でき、普段、高級ホテを利用しない層にも手が届く。
ホテルのメリット
ホテル宿泊者の大半が午後6時~翌朝9時まで滞在し、満室の場合でも日中は 35%が空室だといわれる。デイユースを可能にすることにより、稼働率 100%超も可能となる。
たとえば、Recharge の利用により、一日 275 室相当の売上を上げる客室 250 室のホテル、年間売上が 25 万ドル~100 万ドルに達するホテルもあるという。
ホテル業は地域外からの宿泊客を対象にしたビジネスだが、短時間の利用者は主に地元民であり、これまでの食事や貸会議室以外にも、新たな地元市場の開拓に至っている。
リピーター率は 75%。
当初のホテル側の予想よりも利用客が多いという。
当初、ホテル側は売春など違法利用を懸念したが、違法行為はほとんど見られないという。
また、ホテルは利用者を評価でき、望ましくない利用者は拒否できる。
■ 収入モデル
ホテルより手数料。
■ 今後の展望
・他の米国内都市に進出。
・パッケージ(プラン)の販売。
回数券や食事やマッサージ、パーソナルトレーナー込みプランなど。
・プロモーションとしての販売。
航空会社がファーストクラス乗客やマイレージ会員などに進呈できるバウチャーなど。
掲載内容は、作者からの提供であり、当社にて情報の信頼性および正確性は保証いたしません。