今回は企業等がよく行う申請のパターン及び在留資格の種類ごとに入管の審査ないし申請準備等に必要な期間について実務上のお話をしたいと思います。
※ 在留資格認定証明書交付申請(いわゆる認定申請)
★「技術・人文知識・国際業務」,「企業内転勤」,「経営・管理」
「技術・人文知識・国際業務」,「企業内転勤」及び「経営・管理」の申請はカテゴリーで分かれておりますが、上場企業や国の機関などはカテゴリー1,『前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表』の源泉徴収税額が1,500万円以上の場合はカテゴリー2,徴収税額が1,500万円未満の場合はカテゴリー3,前記合計表自体がない場合はカテゴリー4にそれぞれ該当することとなっています。
カテゴリー1及び2の場合は、申請が入管に受理されてから、問題がなければ2週間程度で『在留資格認定証明書』が交付されます。その後『在留資格認定証明書』の原本を本人に送付するのに3~7日かかり、更に『在留資格認定証明書』を基に本人より日本の在外公館へ査証(=ビザ)申請し、発給までは通常5営業日ほどかかります。申請前の準備なども併せて全体的に考えると、二,三回経験した後の申請であれば、ぎりぎりに1か月で手続を終えることも可能ですが、初めての場合は準備から来日まで1か月だけではなかなか難しいと言わざるを得ないところです。
カテゴリー3及び4の場合は、申請が入管に受理されてから、通常でさえ2~3か月かかるのが一般的ですが、この二つのカテゴリーでは、よく入管から『資料提出通知書』が送られるため、その求められる資料の準備→提出→入管による更なる審査という流れになるので、来日までは相当な時間がかかると考えたほうがよいかと思います。
★「高度専門職1号」
「高度専門職」の前身はいわゆる〔高度人材〕の「特定活動」という在留資格です。前記と同じくカテゴリー1~4に分かれておりますが、実際、前記3つの在留資格と違い、審査にかかる期間はさほど変わりません。しかし、2015年4月1日の入管法改正により、高度専門職ポイント表のポイント項目の増加及びこの在留資格自体に種々の優遇措置の増設などを機に、入管へ「高度専門職1号」の申請が殺到され、本来は優先処理且つ2週間程度で結果を出すというものの、実質、審査は1か月~1か月半程かかっているのが現状です。
そこで、その優遇措置を受けるため、採用しようとする外国人が「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」など通常の就労の在留資格ではなく、「高度専門職」で入社したいとの要望がときどきあります。そのようなケースでは、カテゴリー1,2の場合は、通常の在留資格なら2週間程度で審査が終わるのに対し、「高度専門職」を申請すると、その倍以上かかる可能性があります。逆にカテゴリー3,4の場合は、通常の審査が2~3か月かかるのに対し、「高度専門職」を申請するなら、優先処理で審査期間が短縮されることが可能となります。入社のタイミングや企業自身の都合等を見計らって適当な在留資格を決めて申請したほうがよいでしょう。
★「研修」
先ずここで言う「研修」は従来(と言っても大分前)の外国人研修制度(後の技能実習制度)上の“研修”ではなく、2010年7月1日の入管法改正(「研修」制度と「技能実習」制度が分かれた)により、原則“実務を伴わない研修”のことを指します。通常、この在留資格は海外に現地法人を持つ日本企業が日本式ビジネス等の知識や慣習を業務上、日系企業等と係りのある現地外国人従業員に学んでもらうために申請される在留資格であり、実質はいわゆる座学である場合がほとんどです。それゆえ、企業の規模によって若干の差も出ますが、申請に必要な資料さえ正しく揃っていれば、審査期間にそこまで変わりがなく、概ね1か月半程度で『在留資格認定証明書』が交付されます。
★「技能実習1号」
2017年11月1日から、全ての技能実習の申請が新技能実習制度に沿って申請せねばならなくなったことによって従来の「技能実習1号」の申請に比べ、特に企業単独の場合は準備から来日まで、以前より倍以上の期間がかかってしまうと言っても過言ではありません。新制度では先ず、技能実習を申請する度に且つ申請人ごとに全ての資料(計40種ほど,3年以内に提出したことのある資料は一部省略可)を〖外国人技能実習機構〗(法務省と厚労省が聯合で設立した認可法人)に提出し技能実習計画の認定申請をしなければなりません。その申請は技能実習生の来日予定日前6か月以内~4か月以内の間にしなければならず、標準審査期間は2か月となっています。その後、『技能実習計画認定通知書』が交付され、更に入管へ「技能実習1号」の『在留資格認定証明書』を申請し、交付されるまでは3週間前後が必要です。従って実際、技能実習生が来日8か月前ほどから準備しなければ、予定日どおりに来日できないおそれが従来よりも高くなります。
★〔インターンシップ〕又は〔サマージョブ〕の場合の「特定活動」
近年、人手不足による優秀な人材を確保するために、多くの日本企業も積極的に海外の大学生や大学院生を在学中にインターンシップとして受け入れ、卒業後には自社への入社に繋げたいと考えているようです。そこで、〔インターンシップ〕(学習の一環として実施,最長1年)又は〔サマージョブ〕(休暇等期間中に行う,最長3か月)の「特定活動」の『在留資格認定証明書』の交付申請が必要です。申請してから交付されるまで通常は1か月半程度ですが、例えば初めて受け入れる場合は、申請人が所属する海外大学と契約の締結や大学が申請人に対し種々の証明を発行するなど、そしてコンタクトのことも併せて考えると、申請までの準備に必要な期間は入管の審査期間よりも長いことが考えられるので、企業は期間的余裕を持った計画の策定及び手続の実施をおすすめします。
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