前回に続き、ヨーロッパ発のAI利用をしたIT人材に特化した採用プラットフォームを紹介する。
日本でも、技術者に対しオンライン技術テストを課す企業は増えているが、同プラットフォームでは、書類選考はなしで、テスト結果(または過去のプロジェクト)を基に審査し、AIを使ってマッチングする。
hackajobは、ロンドンベースだが、フランスやドイツなどヨーロッパ大陸にも進出し、プラットフォームはフランス語とドイツ語にも対応している。
< ロンドンのITハブ>
2008年の米発金融危機で、ロンドンの金融業界も大打撃を受け、失業率も上昇した。同時に、不況のおかげで、イーストロンドンでは家賃が下がり、ITスタートアップが流入し始めた。
2010年、イギリスで景気が悪くないのはIT業界のみとなり、イーストロンドンにシリコンラウンドアバウト(Silicon Roundabout/East London Tech City)が台頭した。英政府も、海外からの人材獲得のために高度専門職向けビザを設けるなどし、グーグルなどのグローバルIT企業も拠点を開設するようになった。
2015年時点で、ロンドンのスタートアップ企業の社員半数以上がイギリス生まれではなかったという。
ロンドンのIT業界には、2016年から50億ポンドのベンチャー資金が投入され、他のヨーロッパ諸国をリードするようになった。今では、ロンドン在住の開発者は30万人以上にのぼり、サンフランシスコやニューヨークを凌いでいる。
hackajob
URL | https://www.hackajob.co/ |
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企業名 | Hackajob Limited |
本社所在地 | ロンドン |
創業 | 2014年 |
代表 | Razvan Creanga (CEO兼共同創業者) Mark Chaffey (COO兼共同同業者) |
フェイスブック | https://www.facebook.com/hackajob |
ツイッター | https://twitter.com/hackajob_co |
リンクトイン | https://www.linkedin.com/company/hackajob | 資金調達 | 初期にはエンジェルやアクセレレーターから100万ドル以下。 2018年にVCから670万ドルを調達し、計800万米ドル。 |
創業経緯
ルーマニア出身の創業者は、高校時代からインターネット関連の企業を3社起業。コンピューターサイエンスを学ぶためにロンドンに移住してからも、複数の起業に着手。※1
2014年、人材紹介会社でデジタル戦略展開を担っていた際に、非技術者が技術者の採用審査をしているのを見て、もっと客観的にIT技術者を評価する仕組みの必要性を痛感。
ちょうど技術者を探していた共同創業者と知り合い、hackajobを設立。
IT技術者の採用に関し、下記の3つの課題を解決するためのプラットフォームを構築。
・人材紹介会社を通じると費用がかかる。
・優秀な技術者を見つけるのはむずかしい。
・採用には時間がかかる。イギリスやアイルランドでは、IT技術者の採用には平均51日を要する。(hackajobでは、これを半減。)
2018年にパリ、2019年にベルリン、アムステルダムにも事務所開設。
2019年、フリーランス向けプラットフォームも開始。
※1.ルーマニアは「世界のIT人材事情」で人材供給国として紹介。
仕組み
履歴書ではなく、技術者のスキルをベースに採用。
応募者には、オンラインでプログラミングテストを課し、実際のプログラミングの質、スキルを確認。
テストは、Java、Javascript、Python、.NET/C#、Node.Jsなどのほか、DevOpsエンジニアやデータエンジニア向けもあり。
テストは、採用企業のニーズに応じカスタマイズ可能。
テスト結果に基づき、独自のAI技術で応募者のスキルを評価し、採用企業の職とマッチング。
その後の面接も、オンラインで可能。
特徴
応募者のプロフィールの横で、プログラミングやクラウドインフラ導入などのスキルを表示。
応募者は、オンラインで技術テストを受ける代わりに、BitBucketやGitHub 、Gitlaなどのリポジトリにあるプロフィールにリンクして、過去のプロジェクト(実際のコード)を採用企業が閲覧できるようにすることも可能。
つまり、応募者がプロフィールを表示するには、テストを受けるか、過去のプロジェクトを開示することが必要。
なお、Hackajobのプロフィールは、現雇用主には見えないようにすることができる。
各応募者には、hackajobの担当者(Talent Advocate)がつき、審査過程などについてコーチング。
プラットフォームは、英語、フランス語、ドイツ語に対応。
プラットフォームは、採用企業の既存の採用管理システム(ATS)に統合することも可能。
客観的審査により、採用プロセスから人種や性別、年齢などに対する無意識のバイアスも削除可能ということで、「ITにおける多様性(とくに女性)促進」などのイベントを主催。
<フリーランス就労者の取り込み>
イギリスだけでもフリーランサーが200万人もいるものの、企業は必要なIT人材の雇用に苦労している。フレキシブルな勤務形態、フリーな働き方が人気を博していることから、プロジェクトのアウトソース、契約社員やリモートワーカーの雇用といった選択肢を採用企業に提供するため、hackajobでは、今年、フリーランス向けにもサービスを開始。
収入モデル
採用企業ごとにカスタム料金。
成果
登録者10万人以上。そのうち95%がhackajobにのみ登録しているという。
アップルやボーダフォンなど採用企業1000社が利用。
ベータ段階で、英大手小売業者のArgosが8人の技術者を求人したところ、3カ月で、ソフトエンジニア、モバイル開発者、テスターなど400人以上を紹介。
企業にとっては、候補者に連絡しても連絡がないことが多いのが採用担当者の悩みの種だが、hackajobでは48時間で95%の返答率。
採用にかかる時間は平均17日。
今後の計画
今年、アメリカに事務所開設予定。
中欧・東欧にも進出予定。(ルーマニアには、すでに事務所あり。)
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