適応学習やゲームを取り入れた学校教育

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2016.05.09

今回、紹介するのも適応学習ツールを提供しているスタートアップだが、今回は幼稚園から高校までの生徒を対象にしている。ビル・ゲイツのゲイツ財団から助成金を得、今のところ非営利で運営している。
学校向け適応学習プラットフォームを提供しているスタートアップは他にも数々あるが、大半がシリコンバレー発で、教育現場の視点で開発されたものではない。IT業界では、教育の問題も技術的な問題で、最新技術さえ導入すれば解決できると考える傾向にあるが、基本的に社会的活動である学習は技術だけでは解決できないとEnlearnでは考えている。
実際に学校で導入してみて、生徒分布や教師の教授スタイルが予想以上に多様であること、オンライン学習活動と教室ベースの学習活動の相互作用の難しさを実感したという。
日本でも適応学習が試験展開され、米Knewtonが進出したりしているが、実際の教育現場での成果は、今後、見守ることになる。

■ Enlearn

URL http://www.enlearn.org
企業名 Enlearn
本社所在地 シアトル
創業 2012年
代表 Zoran Popovi(創立者兼最高科学責任者)
John Mullin(CEO)
フェイスブック https://www.facebook.com/Enlearn
ツイッター https://twitter.com/EnlearnOrg
リンクトイン https://www.linkedin.com/company/enlearn/
資金調達 ゲイツ財団より700万ドルの助成金(そのうち100万ドルは、同財団と提携した社会起業家向け非営利ベンチャーファンドより)

 

 
■ 創業経緯
ワシントン大学のゲーム科学センターのセンター長(兼コンピューター科学教授)が、学生にタンパク質の畳み込みを教えるのにゲーム(FoldIt)を開発。まったくの素人が半年未満でバイオ化学の専門家になることができ、アルゴリズムとゲームを利用した同方法を学校教育にも導入できると確信。

どの学校のどの教室でも生徒の95%が学習を達成できるよう、当分は利益を追求せず非営利の形で運営。ただし、教科書出版社には製品を販売して利益を得る予定。

2014年、タブレットのみでシアトルやミネソタの学校でパイロット展開。その後、Webベースに拡大。
 

■ 仕組み
生成的適応(Generative Adaptive)エンジンを開発。個々の学校やカリキュラム開発業者、教科書提供会社と提携し、教材を同社プラットフォームに統合。
今のところ、科目は算数と英語(国語)のみ。適応学習で英語を教えているところは珍しい。

個々の生徒だけでなく、各教室や個々の教師にも適応。
教師は学習成果をリアルタイムにモニターし、個々の生徒の学習度に合わせた授業ができる。
その時の教室の状態にも適応する点が、競合他社と異なる。

英語学習プログラム
カリキュラム開発・アセスメント・学習サービス提供業者のVoyager Sopris Learningと提携し、幼稚園から小学5年生向けに英語(国語)学習プログラム、Velocityを提供。
Enlearnでは生成的適応エンジン供給。

生徒の基本スキル、単語力、文法、読解力をその学年に求められるレベルに到達させる。
(とくに底上げが狙い。)そのため、学習量は個々の生徒によって異なる。
各生徒の読解力に文章の難解度やヒントも適応。
生徒が問題を解く前、解いている間、解いた後、それぞれ学習内容を適応させる点が他社とは異なるという。
生徒の個々の解答や間違いではなく、全体的な思考経路や問題への取り組み姿勢を基にコンテンツやサポートを提供。


生徒向け画面

画面の左の文章を読み(音声で聞くことも可)、生徒の考えを右欄に入力。
I believe (私は~思う)_______________________________________________________
because (というのは)_________________________________________________________




 

各生徒への対応の仕方も教師に提案。
主にオンラインでの教授だが、教師によるオフライン教授もサポート。


教師向け画面
各生徒の学習行動、どこでつまずいているかを表示。



Velocity は、今年4月に展開されたところだが、展開前に8州の140以上の教室で1,250人の生徒でベータテスト。

算数学習プログラム
インドの非営利団体EkStopと提携し、インドの生徒向けに基本的な算数スキルを習得できるゲームを開発。
近日、展開予定。一学年ごとに50万のゲーム販売を目標。

■ 成果
2014 年の試験展開で、タブレットを使って算数を教授。従来の紙媒体での授業も同時に行い比較。

・教師はリアルタイムのデータ(フィードバック)用いて、紙媒体に比べ、個々の生徒らを3倍サポートでき、一番サポートの必要な生徒に焦点をあてることができる。

・生徒らは、紙媒体に比べ平均4.5倍多くの問題を解き、紙媒体で一番成績のいい生徒よりも6.5倍多くの問題を解くことができた。

・代数方程式の解答率は平均94.5%。中学一年で習う問題を小学生も解くことができた。

■ 今後の展望
米テスト機関と協力し、大学補習授業や教師研修向けアセスメント機能拡大中。

教科書出版社のカリキュラムをライセンスし、出版社が学校に販売する教材と統合して、Enlearnのプラットフォームで提供するのが目標。

掲載内容は、作者からの提供であり、当社にて情報の信頼性および正確性は保証いたしません。

有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。