ジョブボード配信サービス「ZipRecruiter」

2255_1608040
2016.08.04

先月、マイクロソフトがLinkedInの買収を発表したが、アメリカでもっとも人気のある求職情報サイトといえばLinkedInとIndeed.comである。両社は世界各国にも進出し、市場シェアを競っているが、バトルはモバイルアプリへとシフトしている。米国内のモバイルアプリ月間ユーザ数ではLinkedInがIndeed.comをリードしているものの、今年中にIndeed.comがLinkedInを抜くと見られている。


アプリ月間アクティブユーザ数(2016年3月)
※(百万人)

そうした中、主に中小企業をターゲットに健闘しているスタートアップが、上記5位のZipRecruiterだ。同社はモバイルアプリに力を入れており、アプリユーザ数でジョブボードの草分け的存在のMonster.comをも上回っている。(Monster.comは、近年、売上が下落傾向にあり、2007年に50ドルだった株価は、今では3ドル以下。)

【ZipRecruiter】

URL https://www.ziprecruiter.com/
企業名 ZipRecruiter, Inc.
本社所在地 サンタモニカ
創業 2010年
代表 Ian Siegel(CEO兼共同創業者)
Willis Redd, Joe Edmonds, Ward Poulos(共同創業者)
フェイスブック https://www.facebook.com/ZipRecruiter
ツイッター https://twitter.com/ZipRecruiter
リンクトイン https://www.linkedin.com/company/ZipRecruiter
顧客数 85万社以上
求人アラート利用(求職)者数3,500万人
従業員数 400人
売上 1億ドル(2015年)1億4,000万ドル(2016年見込み)
(世界ランキング14位)
資金調達 2014年にVCより6,300万ドル

 

 
■ 創業経緯
いくつものインターネットスタートアップ企業に勤めたCEOは、各社で人事業務も担当し、同じ人材募集広告を複数のサイトに何度も掲載しなければならない時間のかかる非効率な作業を経験。中小企業のためにプロセスを効率化することに。

最初の4年半は外部資金を調達せず。CEO自ら顧客からの電話にも対応していた。
2014年にVCより資金調達。

2016年、初の州外事務所をフェニックスに設立。今後3年で300人の雇用を予定。
デンバーやソルトレークシティなど進出先候補5都市で求人広告を掲載したところ、フェニックスでの応募数および応募者の質がダントツであったという。
 

■ 仕組み
企業の求人広告を一度の投稿で100以上のジョブボードやSNS(Facebook, LinkedIn, Twitter, Google+)に掲載・配信。(Indeed.comは含まれていない。)
Monster.comやLinkedInなど有料サイトへの掲載は別途料金。
なお、顧客は掲載するボードの選択はできない。

下記のような機能を提供し、採用企業は求人募集から応募者の審査やトラッキングまでを一ヶ所で行える。
・ 求人広告作成:検索最適化による広告書き直し機能など搭載。企業は自社のサイトで掲載も可能。
・ モバイル最適化
・ モバイル応募
・ 応募者への自動返信
・ 応募者のスクリーニング
・ 応募者トラッキング・評価(社内協働)

オンラインでの応募の過程で応募者への質問を加えておくと、応募内容とともにその回答を閲覧でき、また回答の内容によっては、回答時点で不採用とすることもできる。

顧客企業はZipRecruiterの履歴書データベースの検索も可能。

求人広告の成果を分析するデータアナリティックスが注目を浴びていた頃、同社もデータを顧客企業に提供していたが、それとともに顧客からの問い合わせが増加。アナリティックス機能の大半をオフにしたところ、顧客からの問い合わせは激減したものの、収益は減らなかったという。この経験から、無駄な機能は極力搭載しない方針。

大企業(エンタープライズ)向けには、応募者の履歴書とクリック履歴を分析し、機械学習機能により求人を最適な応募者とマッチングする。

<求職者向けサービス>
求職者には履歴書掲載や求人検索・応募機能を無料で提供。
ZipRecruiter独自の求人広告30万~40万件を含む600万件を検索可能。
求職者には各自の履歴書に基づき、毎日ふさわしい求人広告のモバイルアラートを送付。
応募後は状況をリアルタイムで更新。
自称「求人検索エンジンというよりキューレーション」。


モバイルアプリ

■ 成果
ZipRecruiterを通じ、年間100万人以上が採用されるという。

■ 収益モデル
求人企業に課金。
・ Starter: 一度に3件まで月249ドル(同じ職でなくても可)
・ Team: 10件
・ Enterprise: カスタムメード

月間(クレジットカード支払のみ)、3ヵ月、半年、年間支払い。

■ 今後の展望
アメリカでは500万社が求人にほとんど経費をかけておらず、まだまだ市場開拓の余地があると見ている。

近い将来、求職者が検索するこなしに、コンピューターが自動的に適職を各求職者に通知する機能を追加。
 
掲載内容は、作者からの提供であり、当社にて情報の信頼性および正確性は保証いたしません。

有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。