二度目の技能実習生受け入れについて

Young people in metallurgy training

ここ最近、中国を生産国としてきた多くの日本産業企業は、中国人の人件費の高騰をきっかけに、生産工場をマレーシア,タイ,インドネシア,フィリピン,ベトナムなどの東南アジア諸国へ移転しつつあります。そのため、日本商品としてのブランド価値を保つためには、日本で新たに開発された機械をそれらの国に導入し、現地工員にもその機械を利用して商品を作るための能力を身に付けさせることが重要であることは言うまでもありません。

 このような経緯の中、日々高速に発展する日本の技術や機械を現地工場で利用できるようにするためには、技能実習1号イ、いわゆる企業単独型、かつ2号へ移行できない職種は、1年を期限に全工程の実習を実施することが困難であり、カリキュラムごとに日本で実習⇒現地で発揮⇒熟練⇒日本で新たな実習⇒現地で発揮⇒ … … の繰り返しが企業にとって止むを得ない現状になっています。

 こういった二度目の技能実習生を受け入れたい相談が昨年から増えています。実際、当法人も直接入管に行き、二度目の技能実習1号イの可能性はあるかどうかを確認しました。入管からの回答は主に以下のとおりであります。

a.同一申請人が技能実習で在日した期間は合わせて3年未満
 b.二度目の実習の必要性
 c.実習実施計画は一度目のものと同様でない

上記3つの要件を先ず満たすことが不可欠です。

aの要件は、現行の技能実習制度は1号,2号の期間を合算すると、最大3年であることとの観点からだと推測できます。bの要件に関しては、一見一度目の技能実習生を受け入れた際と変わらないようですが、やはり全く同じ招聘理由で現行の技能実習制度上、同じ実習生を受け入れることは認められる余地がありません。更にcの要件は、一度実施計画どおりに実習したので、当然違う計画でなければ、そもそも一度目の実施計画の意義上での信憑性まで疑われ、二度目の技能実習どころか、今後一度目の実習生受け入れにも支障が出かねません。

二度目なので、技能上でのレベルアップがなければ、単純労働での来日ではないかとの疑惑が持たれても仕方がありません。例えば一度目の実習後、本国における現地工場で習得した能力を発揮してこなすことができないと、次の工程には行けず、一度目で実習した技能が熟練レベルに達し初めて次の段階の技能を実習できるといったような事由が必要かと考えられます。

また、二度目の技能実習のための講習要件についての要点も説明したいと思います。1991年に法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五省共管により設立された国際研修協力機構(JITCO)のHPに以下のことが記載されています。

「次の科目についての講習(座学で、見学を含む。)を「技能実習1号イ」活動予定時間の6分の1以上の時間(海外で1月以上かつ160時間以上の事前講習を実施している場合は、12分の1以上)実施すること。
a.日本語
b.日本での生活一般に関する知識
c.入管法、労働基準法等技能実習生の法的保護に必要な情報
d.円滑な技能等の修得に資する知識
なお、上記cの講義は、専門的知識を有する講師(内部職員でも可)が行うこととされ、また、入国後技能等の修得活動に入る前に実施することが求められます。」

先ず、問い合わせで企業の担当者から、たとえばa及びbの講習については、一度目の技能実習のときに既に行われたので、今回も実施しなくてはダメなのかとの質問がよくあります。こちらに関しては、以前は関係なく、技能実習を実施する度に講習も全項目を実施しなければなりません。

その中、c以外の項目に関しては例外的に海外で実施することが認められています。その代り、海外の講習機関より発行される実施した証明を入管に提出しなければなりません。ただし、当法人が入管に確認した時点で、海外で実施した証明を提出されたのはaの日本語のみであり、b及びdを海外で実施した事例はありませんでした。

一部の講習を海外で実施する場合、認められるのは日本滞在予定期間の 1/12 と限定しており、しかも、仮に日本に滞在する予定が3月だけであっても、海外で講習したことを証明するには、1月以上且つ160時間以上実施したことが必須です。また、海外講習の時期に関する時効は特に規定されていませんが、通常観念上、例えば技能実習には関係なく、自己の発意による3年前に日本語を勉強した証明を提出しても、一部の講習を海外で実施したと認められる可能性が低いと思います。既に忘れたかも知れないと考えられるからです。

最後に、講習の内容に関しては、実施しようとする技能実習に必要程度の内容であれば、仮に一度目の講習内容と全く同じ内容であっても問題ありません。


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ACROSEEDグループプロフィール
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