ホームレス支援オンラインプラットフォーム

Hand Using Mobile to Donate Money, Mobile Performance Concept
2017.01.18

ホームレス人口が 56 万人を超える(10 万人あたり 18 人)アメリカでは金融危機による大不況からの回復後、全米単位ではホームレス人口は減少傾向にあるものの、住宅価格が高騰している西海岸やニューヨークでは逆に増加している。とくにカリフォルニアは、全米のホームレス人口の2割を抱え、緊急シェルター容量はホームレス人口の4割にも満たない。

とくに1LDKアパートの家賃が 3000 ドル以上するサンフランシスコでは、ミドルクラスでも住むのが困難になっているが、約 6700 人のホームレス人口に対し緊急シェルターは 1200 人分しかなく、「ホームレス危機」が叫ばれている。

今回、紹介するのは、そうしたサンフランシスコでホームレス支援のためのオンラインプラットフォームを提供する公益法人である。

【HandUp】

URL http://www.handup.org
企業名 HandUp PBC
本社所在地 サンフランシスコ
創業 2013年
代表 Rose Broome(CEO兼共同創業者)
Sammie Rainar(COO兼共同創業者)
フェイスブック https://www.facebook.com/handup.us
ツイッター https://twitter.com/handup
リンクトイン https://www.linkedin.com/company/handup
従業員数 数人
資金調達 VCや個人投資家より87 万ドル、Google.org から50 万ドルの助成金

 

 
■ 創業経緯
2012 年、サンフランシスコ市内でホームレスの女性を見かけた創業者は、ホームレス支援のためのモバイル寄付システムを開発。

2013 年、HandUp を公益法人(public benefit corporation)として創立。ホームレス支援非営利団体と協力し、クラウドファンディングサイトを立ち上げ。

2015 年、ホームレスの人の間でギフトカードを求める声が高かったことから、行政機関や非営利団体で食品や衣服などの生活必需品に交換できるギフトカードを発行。非営利でなく公益法人とした理由は、営利の方が資金を集めやすく、スケールアップがしやすいため。また、非営利や行政だけでは社会問題を解決できず、営利ビジネスが役に立つとの考えから。

デラウエア州公益法人は2013 年に法制化された新たな法人形態で、株主の利益と法人設立の目的である社会的使命とのバランスをとることが必要とされる。なお、handup とは、handout(施し)でなく、ホームレスの人が自立できるような支援という意味で使われている。 

■ 仕組み
ホームレス支援を容易にするためのオンラインプラットフォームを提供。

クラウドファンディング
サンフランシスコだけでなく、デトロイトやアトランタなど各地の非営利団体が支援している個々のホームレス(メンバー)のオンラインプロフィールを作成。個々のメンバーのニーズを説明し、募金を募る。たとえば、「(元ホームレスのシングルマザーが)車が壊れて働きに行
けず家賃が払えず、アパートを強制退去されそうなので家賃を援助してほしい」「就職できるよう車が買いたい、資格を取りたい」「歩けないので車イスがほしい」など。
プロフィールには、写真入りで個々の生い立ちやニーズ、募金目標額と達成度が表示され、オンラインで寄付できるようになっている。プロフィールはSNSで共有可能である。
誰がいついくら寄付したかの履歴も表示される。進展状況を把握するために、そのメンバーをオンラインでフォローすることもできる。
個々のメンバーでなく、地域や全米の基金に寄付することも可能である。(1回限り、または月々の自動寄付。)
寄付金は全額メンバーの手に渡る。
寄付の際にはHandUp に10%ほどのチップを払うことが奨励されており、それがHandUp の収入となる。
個々のメンバー支援以外にも、HandUp のサイトでは、ネットで必要事項を入力するだけで非営利団体が簡単にオンライン募金キャンペーンを開始することができる。

ギフトカード
ホームレス支援希望者は下記の方法でギフトカード(一枚25 ドル)を購入し、街で個々のホームレスに手渡しする。

・オンラインで購入すると寄付者に郵送される。(HandUp へのチップ奨励。)
サンフランシスコでギフトカードを直接ホームレスの人に渡せない人は、地元のボランティアが代わりに手渡しする。
・市役所や提携コーヒーショップで購入。
ギフトカードは、行政機関や提携非営利団体で食品や衣服、飲食店のギフトカード、バス定期券と交換したり、散髪や携帯電話料金支払いなどに利用できる。ギフトカードにはギフトカード利用可能場所の地図や利用方法が書かれた情報シートが添えられている。
ギフトカードが使用されると、寄付者にメールで通知が送られる。


(出典:www.handup.org)

<企業との提携>
・Twitter やSalesforce など地域の提携企業がギフトカードを購入し、社員に配布。各社員がホームレスに手渡す。
・Google では社員に対しマッチング(社員の購入1ドル分に対し1ドル追加)。

■ 成果
立ち上げから15 か月でギフトカード3000 枚を配布。その6~7割がホームレスによって利用された。
ギフトカードには有効期限があり、有効期限を過ぎるとホームレス支援基金に回される。
現金でなくギフトカードを配布する理由のひとつは、ホームレスの人が市のケースワーカーと接触することを促し、各種ホームレス向け支援プログラムを知ってもらうため。

■ 収入モデル
・オンラインで寄付を募る非営利団体に課金。
1) Starter プラン(1回限りキャンペーン向け):無料
寄付者が8%の募金決済手数料を支払う。
2) Plus プラン:月249 ドル+募金決済手数料5%
・寄付者によるチップ

■ 今後の展望
サンフランシスコ以外の地域でも、ギフトカード配布プログラムを展開予定。

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有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。