AIを活用した人事採用(面接)ソリューション

AI採用
2018.01.10

 今年10 月にラスベガスで開かれたHR Technology Conferenceでは、大手HCMベンダーからスタートアップまで50社がAIベースのアプリケーションを披露した。今回は、そのうちの一社、HireVueを紹介する。

HireVue–録画面接・デジタル面接プラットフォーム

 HireVueの録画面接プラットフォームは、すでに日本でも販売され、日本の大企業が導入を始めている(大京住友化学)。 日本では、AIの部分はあまり強調されていないようだが、同プラットフォームでは録画面接の評価にAIが利用されている。

HireVue Video Interview

 応募者は、スマホやタブレット、PCから、好きな時に好きなところから、専用のアプリを通じ、応募企業の質問に答え、面接を録画する。撮り直しは、何度でも可能である。

専用アプリ
録画面接の推定所要時間を表示。

(出典:www.businessinsider.com)

面接の質問例

「満足のいかないお客さまと顧客担当者のやりとりの動画を見て、あなたらな、こうしたお客さまにどのように対応するか、過去にどのように対応したかを述べてください。」

(出典:www.hirevue.com)

 文章で回答を求めることも可能で、下記は「採用面接の予定のある応募者から下記のメールが届きました。調べた結果、その応募者の面接は二日後に予定されていることがわかりました。応募者に、その旨、伝えるメールを書いてください」というもの。

(出典:www.businessinsider.com)

HireVue Assessment (録画面接アセスメント)

 面接終了後、音声・顔認識ソフトによって、応募者の使った表現(言葉の選択)や声のトーン、顔の表情など2万以上のデータポイントにおいて、それまでに、そのポジションで採用された優秀な社員のものと比較される。そして、どの応募者が理想の人材に近いか、アルゴリズムを用いたスコア(そのポジションに対する理想の人材の資質を満たした割合)を基にランク付けがされる。
 たとえば、応募者が「現上司とはうまく行っています」と答えながらも、顔の表情は、そうは語っていない、といったことも評価の対象となる。

応募者ランキング画面

(出典:www.hirevue.com)

応募者詳細画面
順位2位にランクされた応募者の詳細画面。
Insights Score 65%(理想の顧客担当者の資質の65%を備えている)や面接の質疑が閲覧可能。

(出典:www.businessinsider.com)

成果

 こうしたソリューションのメリットは、採用プロセスの簡素化・時間短縮、採用コスト削減、より適した人材の確保だが、HireVueは、とくにホスピタリティ産業など大量採用業界で、スクリーニングツールとして活用されている。
 また、録画面接の段階では人間は関与しないので、性別や人種、服装、第一印象などによるバイアスがかからず、多様性の促進が図れるというメリットもある。
 HireVueのプラットフォームは、ゴールドマン・サックスやボダフォンなど600社以上で利用されているが、下記ではユニリーバとヒルトンでの活用例を紹介する。

<ケーススタディ:ユニリーバ>
 190か国以上で事業展開するグローバル企業、ユニリーバでは、「有名大学に人事採用者が出向いて履歴書を受け取って、面接をして…」という例年どおりの新卒採用を考えていたが、2020年には社員の60%をミレニアム世代が占めることが予想されることから、採用プロセスをデジタル化することにした。そこで、2016年、認知脳神経科学に基づいたPymetrics のゲームとHireVueが導入された。
 フェイスブックやリンクトインなどにターゲット広告を掲載し、応募者を応募サイトに誘導。応募者のリンクトインのプロフィールからデータが抽出される。アルゴリズムによって、この段階で応募者の半数以上が振り落とされる。
 通過した応募者は、ネットで20分間、Pymetricsのゲームをし、集中力や記憶力、リスク許容度などが測られる。合格基準はポジションによって違い、合格すれば、HireVueの録画面接へと進む。進むのは、応募者の3分の1以下であるという。
 録画面接に合格した応募者は、ユニリーバで幹部と面談し、「典型的な職場の一日」を体験する。最終結果は、通常、同日に決定されるという。(なお、ユニリーバの録画面接に落ちた応募者のプロフィールは、Pymetricsの他のクライアントに送信可能。)
 ユニリーバでは、こうした採用方法を北米本社から開始し、その後、68か国、15か国語で25万人の応募者に利用するに至っている。
 2016年7月から2017年6月の一年の間に、北米本社では、下記の成果が得られた。
・求人広告掲載後90日間での応募者数が、前年度の1万5000人から3万人に倍増。
・これまでで「もっとも多様な人材」を採用。非白人の採用が大きく増加し、出身者の大学も840校から2600校と幅広く。
・採用までにかかった平均日数は4ヵ月から4週間に短縮。応募者が要した累計時間は5万時間、
 採用担当者が要した時間は、前年比75%短縮。年間採用コスト100万ポンド節約。
・最終選考まで残った応募者へのオファーの割合は63%から80%に、オファー承諾率も64%から82%に向上。

<ケーススタディ:ヒルトン>
 103か国で5000軒以上の施設を運営し、16万人の社員を抱えるるヒルトンでは、人材採用プロセスを簡素化・短縮化するために、2014年にHireVueを導入した。
 それまでは、応募者は100を超える質問に答えるのに1時間以上を要し、応募者の回答率も低かった。ヒルトン側も、25人を採用するのに平均6週間を要していた。
 HireVueを導入することにより、「プリスクリ―ニング~評価~面接~採用」と複数のステップを要したプロセスを「録画面接~対面面接~採用」に簡素化することができた。採用に要する日数は5日に短縮され、応募者の回答率も倍増した。

 なお、HireVueでは、面接スケジューリングツール、HireVue Coordinate や、動画によるコーチング、HireVue Coach も提供している。

掲載内容は、作者からの提供であり、当社にて情報の信頼性および正確性は保証いたしません。

有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。