ガイドラインは、その後、2020年と2022年に改定されたが、2022年の改定では、労働者の多様なキャリア形成を推進することを後押しする目的で、企業が「副業や兼業を許容しているか」「条件付きで許容している場合の条件内容」を公表することが求められることになった。
こうした政府の施策により、副業を容認する企業が増え、副業をする人も増えている。企業にとっては、副業により社員が新たなスキルを習得したり、収入増によるモチベーション上昇が社員の定着につながるというメリットがある。
経団連の調査によると、2022年時点において、回答企業の半数以上(53%)が「社員の副業・兼業を認めている」、17.5%が「認める予定」と答えている。一方で、「検討していない」(21.5%)、「認める予定はない」(8%)も併せて3割にのぼっていた。
労働者側も、今年、717人を対象に行われたアンケート調査では、32%が「副業を経験したことがある」と答えている。(※1) そのうち「勤務先で副業を認められている」というのは68.5%で、副業を認めていない企業でも副業を行っている社員が一定数いるということがわかる。
年代別では、副業の経験があるのは30代が最多(36%)で、20代と50代が一番少なかった(28%)。後述するように、多くの国では、副業はZ世代(19~28歳)の間で一番盛んである。副業のきっかけは「本業収入への不安」が最多で、副業の目的は「収入源の確保」が最多であった。
・副業をする若者が世界的に増加
他国を見てみると、コロナ禍で失業したり一時帰休を余儀なくされた人たちが、副業を始めたケースが多く、コロナ前に比べ、副業をする労働者の割合は増えている。
今年、44ヵ国のZ世代(1995年~2004年生まれ)とミレニアル世代(1983年~1994年生まれ)を対象に行われた調査では、Z世代の46%、ミレニアル世代の37%が副業を行っている。(※2)これは、前年比、それぞれ3ポイント、4ポイント上昇している。
副業を行う理由は「新たな収入源が必要」というのが一番多く、Z世代で38%、ミレニアル世代で46%だった。両世代にとって「生活費」が最大の心配事であり、Z世代では35%、ミレニアル世代では42%が生活費を一番心配している。これは、昨年の調査時に比べ、両世代とも6ポイント上昇しており、インフレによる生活費の高騰により副業を行わざるを得ない状況がうかがえる。なお、Z世代では「失業」(22%)が心配事として、昨年の3位から2位に上昇している。
副業で人気な職種は、「オンラインでの販売」(Z世代21%、ミレニアル世代25%)、「料理宅配やライドシェアなど」(Z世代20%、ミレニアル世代19%)、「芸術関連」(Z世代18%、ミレニアル世代15%)、「ソーシャルメディア・インフルエンサー(Z世代16%、ミレニアル世代15%)」の順で、インターネットを利用したものが半数以上を占めている。
※1. JobQ Town, 2023年9月6日~9月11日 に同社登録者717人(20~50代)を調査。
※2. Deloitte, “2023 Zen G and Millennial Survey”, 2022年11月~12月に、ブラジル、ドイツ、インド、日本、イギリス、アメリカを含む44ヵ国のZ世代(1995年~2004年生まれ)1万4000人以上、ミレニアル世代8300人以上を調査。
アメリカ
アメリカで今春、行われたアンケート調査では、成人の39%が副業を行っているという結果だった。 (※3)
世代別では、Z世代(18~26歳)が最も多く53%で、ミレニアル世代(27~42歳)も50%、G世代(43~58歳)では40%で、ベビーブーム世代(59~77歳)が最も低く24%だった。
副業を行っている回答者の33%が「日々の生活に必要なお金を稼ぐため」と答えており、「趣味など好きなことに費やすお金を得るため」という回答者(27%)を上回っていた。次に「貯金するため」(25%)、「借金を返すため」(12%)という順であった。
所得によっては、生活のために副業が必要であり、年収5万ドル未満の42%が「日々の生活に必要なお金を稼ぐため」と答えており、どの所得層よりも多い。年収10万ドル以上の層では、生活費のために副業をしているのは22%のみであった。
副業を行っている割合は、所得別では10万ドル以上が45%で最も多く、副業によって収入を増やしているのがうかがえる一方、次に多いのが5万ドル未満(40%)で、主業だけでは食べていけないため、生活のために副業せざるを得ない層である。
また、23%が「インフレのために副業に費やす時間が増えた」と答え、20%が「副業をしたくはないが、せざるを得ない」と答えている。28%が「生活していくのに、これからもずっと副業が必要だ」と言うことで、一部の人にとっては臨時収入を得るためのものではないことがうかがえる。 (※4)
副業での収入は、月に1~100ドルというのが一番多く(42%)、月1000ドル以上稼いでいるのは15%のみだった。
なお、前四半期の家計の脆弱性(一ヵ月以内に予定外の2000ドルの出費をまかなえるか)は66%で、2008年の金融危機後、最悪のレベルである。(※5)
※3. Bankrate 2023年4月26日~28日に調査。回答者2000人のうち、900人が副業。
※4. 筆者は20年以上、アメリカで賃貸経営を行っているが、30年前から、一般庶民の間では生活のためにダブルワークやトリブルワークをする人たちは珍しくなかった。
※5. 筆者の借家の借主(中の中~中の下層)に、これを賄える借主はいない。失業や疾病などが起こるたびに、2000ドルに満たない家賃も払えなくなる。賄えるのは、夫婦のどちらかが少なくとも大卒のホワイトカラーで、まともな健康保険に加入できている人。
リモートワークの影響
コロナ禍以降、副業が増えている背景には、コロナ禍で失業や(無給の)一時帰休に遭い、副業を余儀なくされたという人たちがいるだけでなく、リモートワークによって、副業がしやすくなったという側面もある。
上記とは別の調査では、アメリカの成人が副業を行っている割合は、2021年には34%だったのが、2022年には40%に増えていた。(※6)
・フルタイムの仕事を掛け持ち
2021年に行われたアンケート調査によると、リモートワーカーの69%が、その本業以外に別の仕事をしていることがわかった。(※7)37%がもうひとつ別のフルタイムの仕事を(フルタイムの仕事を2つ掛け持ち)しており、32%がパートタイムの仕事を掛け持ちしていた。
フルタイムの仕事を2つ掛け持ちしている人の45%は、「もう一つの仕事もリモートで行っている」というが、32%は「出勤」し、23%が「ハイブリッド勤務」をしていた。フルタイムの仕事を2つ掛け持ちできるのは、39%が「どちらの仕事も週40時間働かなくてよいから」と答えているが、34%は「2つの仕事を維持するのに、週に40時間超働かなければならない」と答えている。
ただし、通算して、週に80時間以上働いているのは23%のみで、31%は「週に50~70時間労働」であった。
「もう一つの仕事は、出勤しなければならない」という人では、その職場で、もう一方の仕事(本業の方)をリモートで行っているという人が60%にも及ぶ。2つの仕事を掛け持ちしていて、週に80時間以上働かずにすむのは、こうして勤務時間が重複しているのが一因と考えられる。(これは、勤務先の許可を得て行っているとは考えにくいので、解雇の理由となり得る。)
32%は「2つの勤務スケジュールを調節し、出勤していないときに、もう1つの仕事をリモートで行っている」ということだ。
・フルタイムとパートタイムの掛け持ち
リモートワーカーの32%が、フルタイムの仕事以外に、パートタイムで副業をしており、そのうち「パートタイムの方は出勤しなければならない」という人は39%で、33%が「副業の方はハイブリッド」、28%が「どちらもリモート」だという。
主業はフルタイムで、副業はパートタイムという人では、31%が「労働時間は両方併せて週40時間以下」で、42%が「50~70時間」、「80時間超」というのは14%のみだった。
「副業は出勤しなければならない」という人の49%は、副業勤務時間後、フルタイムの方の仕事をリモートで行っているが、38%は「両方を同時にこなしている」という。4割近くが、パートタイムの職場で、主業をリモートで行っているということだ。
なお、複数の仕事を掛け持ちする理由として、一番多いのが「お金を稼ぐため」(45%)で、そのうち、50%は「使えるお金を増やしたい」で、49%は「借金の返済」だった。また、43%は「副業によって新たな実務経験を得ている」と答え、39%は「主業よりも興味のあるキャリアを追うために副業している」と答えている。
・副業は自営業
「どうやってフルタイムの仕事を掛け持ちできるのか」と不思議に思うところだが、副業は会社勤務とは限らず、「副業は自営」という人が77%にのぼっている。これは、「フルタイムの仕事を2つ掛け持ち」という人では84%で、副業はパートタイムという人では69%だった。
52%は「コロナ以前から行っている」ものの、25%は「コロナ禍中に始めた」と言い、「独立したいが、経済的に会社勤務はやめられない」という人には、リモートワークは起業する格好のチャンスとなっているようだ。
なお、別の起業に関する調査では、フリーランスや事業を経営する人の75%が、別の会社で雇用されていた。(※8)
・Z世代
先の調査では、副業を行っているのはZ世代が一番多かったが、別の調査でも、Z代の40%が副業を行っているという結果だった。(※9)その73%が「お金を稼ぐために副業をしている」という。
Z世代の52%が「十分なお金がないのが心配」、39%が「お金に関して誤った選択をすることが大きなストレスになる」と答えている。
これは、今後、景気が悪化し、クビを切られる時が来るかもしれないという不安が背景にある。彼らの親の世代は、2008年の金融危機で、失業したり、自宅を失っており、また、ミレニアル世代が大不況の時代に大学を卒業して就職に苦労していたのも見ている。Z世代自身も、コロナ禍で、2020年春に大量の人員整理を経験している。企業は利益のためなら、平気でクビを切るということを目のあたりにし、会社やキャリアのためにプライベートを犠牲にするのなどは、まっぴらごめんなのである。
また、Z世代が副業に熱心なのは、自分のアイデンティティがキャリアに結びついていないことも一因である。自分の価値をキャリアに見出し、キャリアのためなら残業や休日出勤もいとわなかった前の世代とは違うということだ。
さらに、Z世代には、デジタルという兵器がある。インターネットのおかげで、副業が実に容易にできるようになり、Eコマースやソーシャルメディアを利用して、自分の作品や商品などを国内どころか、海外にも簡単に売れるのだ。
・公務員
日本では、2019年に、一部の国家公務員の副業が解禁されたが、アメリカでも、職種によって制限はあるものの、連邦政府職員は申告すれば副業の許可が出るようである。ただし、申告せずにやっている人の方が多いと思われる。
副業の例として、夜間にバーテンダーや職場のビル内のスターバックスでアルバイトをする職員、コロナでリモートワークになってから夫婦でコインランドリーを開始し、週末にはライドシェア(Uber)の運転をしている(つまり3つ掛け持ち)という職員もいる。
インフレで物価高の中、「公務員の給料では食べていけない」という声は多く、「昇給がないのであれば退職する」という声も聞かれる。
米連邦政府は、毎年のように予算案を巡って政府閉鎖の危機に迫られているが、2018年~2019年には実際に閉鎖されて、過去最長の34日間、機能が停止した。その間、連邦政府職員の給与は支給されなかった。約80万人の職員のうち、38万人が一時帰休となり、残りは無給での勤務を余儀なくされた。こうした場合に備えても、副業の必要性が高まっている。
実際に政府が閉鎖するというのは、職員にとっても驚きだったようで、職員の3割近くが転職先を探したり、起業を模索する結果となった。(※10)政府閉鎖当時、連邦職員の13%が、サイドビジネスを行っていたが、53%は「閉鎖前から行っていた」ものの、27%は「政府閉鎖とともに思い付いた」と言い、政府再開後も大半が継続している。
また、公立学校の教師は、各学区に雇われているが、州政府の職員扱いである。低賃金とされる教師の間では、生活費を補うための副業は、非常に盛んである。2021年に行われた教師を対象とした全米調査では、「現在、副業をおこなっている、または以前、行っていた」という教師は82%にのぼっていた。さらに、53%は「現在、複数の仕事を掛け持ちしている」と答えている。
全米教育協会によると、教師の給与はインフレに追いついておらず、実質賃金は、10年前に比べ、平均して3600ドル減っているという。2022年、他の大卒の職種に比べ、教師の給与は26%以上低かった。
・副業禁止
アメリカの場合、雇用契約は随時雇用(employment at will)なので、雇用主は(人種や性別など差別禁止属性以外の)いかなる理由でも社員を解雇することができる。社則で副業が禁止されているのに行えば、解雇の理由となる。
ただし、「全面的に副業禁止」という企業は少なく、職種を限定したり、競業避止など条件を設けている場合が大半である。申請制にしている企業も少なくない。もちろん、職場での業績に支障がでれば、解雇の理由となる。
少なくとも、競合他社、具体的にどの会社の仕事をするのは禁止というルールは必要であるが、厳しい規則を作ればいいというわけではなく、ルールを厳しくすればするほど、社員は隠れて行う可能性が高まるという考えである。
副業に関しては、雇用契約とは別に、規則に関しての理解、合意を求める書類に署名させる企業もある。
・副業奨励
スタートアップ企業では、社員に副業を持つよう促す企業もある。中には、会社の事業と競合しない限り、副業の許可を雇用契約書で明示している企業もある。
たとえば、IT企業の社員が、プライベートで仮想通貨の投資などを行えば、関連知識を得られ、職場での仕事にも役立ち得るという考えだ。副業として、オンラインショップなどを経営することを促す起業もある。副業で実際に経営者として経験を積むことで、クライアントの問題などを理解でき、うまく対応できるという。
また、自分も会社の仕事以外のことに興味があるので、誰もが自分の好きなことや得意なことを追求すべきだという考えの創業者もいる。職場以外の関心事がチームの多様性にもつながるという。
働き方で柔軟性を提供し、職場外で、さまざまなことを学習できる機会が生まれ、業界ともエンゲージできれば、離職率も減らせるというメリットも生まれる。
※6. Zapier/The Harris Poll, 2022年5月24日~26日に18歳以上の2032人を調査。
※7. Resumebuilder.com 2021年10月4~5日に、フルリモートの就業者1250人を調査。
※8. Index by Pinger “The Small Business Insights Survey”2023年10月4~6日に、18~60歳の米国在住者1085人を調査。
※9. EY “How can understanding the influence of Gen Z today empower you tomorrow?”2023年2月3日~16日に全米のZ世代(1997年~2007年生まれ)1500人以上を調査。
※10. GoDaddy/One Poll, 2019年、連邦政府職員500人を調査。
カナダ
カナダでもコロナ禍で副業を行う人が増えた。2022年に行われたアンケート調査では、42%が2021年の同調査に比べ(31%)、11ポイント増えている。(※11)ただし、この中には、パートタイム就業者や学生も含まれている。
・副業禁止のグローバル企業
日本でも、簡単にECサイトを開設できるプラットフォームとして知られているカナダのShopify(社員1万人以上)では、今年9月に、CEOが社員に向けて副業をしないように通達した社内メモを送ったことが、世界的なニュースとなった。
CEOは「最近、内定書やオンラインの社則ページで副業が許可されていることが発覚したが、今までも、Shopifyは100%専念しなければならないプロのスポーツチームのようなものだと何度も伝えてきた。Shopifyは家族ではなく、チームであり、競技と同様、チームメンバーは、毎日、出勤してチームの成功に貢献することが求められている」という。
また「副業というのは、週に1~2回、ヨガを教えたり、子供のサッカーチームのコーチをしたりといったことを言っているのではない。Shopifyでの仕事と競合したり、仕事の遂行の妨げになるような副業はすべきではないということだ。会社でクリエイティブな力を十分に発揮できないような状況を作るべきではないのだ」とも述べている。
利益相反になり得る副業は、事前に会社に申告して許可を得ることが義務付けられており、今後、それを社内で周知させ、徹底するということだ。
こうしたCEOの通達に、とまどいを隠せない社員もいる。同社では、社内で起業家精神を促し、個々の社員が興味のあることやサイドプロジェクトを追求することを促してきたという。社員は皆、Shopifyを学ぶために、Shopifyでオンラインストアを運営することを求められている。ただし、店が大きくなった場合、スタッフを雇うか、会社を辞めてフルタイムで運営するよう促される。
※11. Abacus Data/Direct Sellers Association of Canada, “2022 Insights on Canadians pursuing opportunities to earn additional income,” 2022年6月6日~8日に、成人1500人を調査。
イギリス
イギリスでも、2021年に行われた副業に関するアンケート調査では、イギリス人就労者の68%が、株式投資を含み、何らかの二次収入を得ていたという。(※12)とくにコロナによるロックダウンの間に副業を開始した人が多い。
副業は、ミレニアル世代(25~34歳)の間で一番盛んで、78%が副業を行っている。しかし、副業で一番稼いでいるのはZ世代で、平均月546ポンドであった。
一番人気の副業は、手作り品の販売で、副業の59%を占めている。販売品は、ろうそく、カーテンやクッションなどの室内装飾品, 手作りの衣服や鞄、手作りの石鹸、食品や飲料などである。
その他、第二次収入を得る手段として、投資(20%)、アンティークや収集品の販売(12%)があげられた。
一番儲かっている副業は、ポッドキャストで月954ポンド、次いで手製のろうそく販売(月670ポンド)、部屋貸し(657ポンド)、ブログ(646ポンド)であった。
・副業による所得税徴収強化
イギリスでは、来年1月から「デジタルプラットフォーム用モデル報告規則」が施行され、UberやAirbnb(民泊)、Etsy(手作り品などのECサイト)などデジタルプラットフォームで得られた収入が正しく申告されているかをチェックするため、こうしたプラットフォーム運営企業に、歳入関税庁へユーザの収入の報告が義務付けられる。
同庁では、その収入と個々の国民が申告する収入に差異がないかをチェックするために、3700万ポンドを費やし、24人の職員を採用している。
この報告規制は、2020年に経済協力開発機構(OECD)が発行した「シェアリングおよびギグエコノミーの販売者に関するプラットフォーム事業者のモデル報告規則」に基づいており、多国間での情報交換が可能となる。英歳入関税庁では、すでにイギリス拠点のプラットフォームに関しては情報を入手できるが、新たな報告規制によって、イギリス国外を拠点とするプラットフォームの情報を他国の国税局と交換できるようになる。
なお、2019年の調査では、副業を行う人の67%が「自分が税制を遵守しているか、脱税をしているかどうか」を見極める方法を知らないということで、「収入をすべて申告していない」(34%)、「事業経費を多く見積もっている」(25%)、「確定申告をしていない」(19%)ということだった。
※12. 118 118 Money
EU
ヨーロッパ大陸では、労働者の労働時間は週に38時間や40時間を超えてはならないと法律で規制されている国が多い。法制化されていない国では、EU指令に従い、残業を含めて週に48時間以上働く必要はないという労働者の権利を遵守する義務がある。
この労働時間は、主業、副業などすべての仕事を通じての通算時間で、副業によって労働時間が規定以上になる場合、雇用主との合意を得る必要がある。ただし、この規則は自営業には適用されないため、副業をするのであれば、主に自営を選ぶことになる。
日本でも、通算労働時間が法定外労働にあたると、36協定の締結、届出、時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要となる。
日本やEUで、副業の際は申告を義務付けている企業が多いのは、雇用主が労務管理をしなければならないからというのも一因である。
インド
冒頭のZ世代・ミレニアル世代に関するグローバル調査によると、2021年、インドでは、Z世代の62%、ミレニアル世代の51%が副業を行っており、世界平均43%、33%を大きく上回っていた。(※13)
ただし、インドでは、他国と異なり、生活費を心配する若者は少なく、とくにZ世代では「生活費」は、「心配事トップ5」に入っていない。インドの若者は、生活のために、副業をするわけではないようだ。
さらに、大半の若者が、「経済的に心配はいらない」「老後の生活は心配ない」と答えており、今後、経済発展の見込まれる新興国ならではの楽観的な展望といえるかもしれない。
また、インドで人気の副業も、グローバル平均とは異なり、「ソーシャルメディア・インフルエンサー」が第一位(Z世代35%、ミレニアル34%)で、「非営利団体」「オンラインでの商品やサービスの販売」「芸術関連」「ブログ、ポッドキャスト、ニュースレター発行」が続いた。
なお、インドでは、先月、大手ITアウトソーシング企業の創業者が「国の経済成長のために、若者は週に70時間働くべきだ」と発言して物議をかもしている。若者や労働組合は反発しているものの、業界トップは、「ワーク・ライフバランスというのは欧米の考え方で、新興国がグローバル市場で競うには、長時間労働、犠牲が必要だ」と賛同している。
※13. “The Deloitte Global 2022 Gen Z and Millennial Survey”2021年10月24日~2022年1月4日に46ヵ国のZ世代1万4000人以上とミレニアル世代8400人以上を調査。インドではZ世代500人、ミレニアル世代301人を調査。
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