世界を働きながら旅行する!? デジタルノマドライフを可能にする支援ビジネス

2015.08.07

デジタル化が進む中、休暇中にも働く人が増え、workation(仕事ケーション)、co-workingholidays(コワーキング休暇)という言葉も生まれているが、一方、働きながら旅行したい(旅行中も稼ぎたい)という若者も増えている。

これは世界的なトレンドであり、世界各地でコワーキングスペースが開設されている。

今回、紹介するスタートアップは、世界を働きながら旅行するというデジタルノマドライフを可能にし、支援する、いわば旅行企画運営会社だ。

彼らが提供するプログラムが一般の旅行と違うのは、仕事、キャリアに重きを置き、そのための労働環境、支援体制を整えている点である。

彼らは各地でコワーキングスペースを提供するだけでなく、グループで協働したり、助け合う環境、つまりコミュニティを提供している。各自が抱えているプロジェクトに協力したり、労働(スキル)をバーターしたり、アイデアを交換したり、他のメンバーも面白いプロジェクトに携わっているため、参加者にとっては、いい刺激になるという。また、孤独な一人旅と違い、仕事の後はお酒を飲んだり、旅行をしたりする仲間がいるのも魅力のようだ。

Remote Yearでは、当初、仕事の斡旋もする予定だったが、応募者が予想をはるかに超えたせいか、現地の査証のせいか(母国からの仕事でも労働許可が絡む?)、フルタイムの仕事があることが参加条件となっている。

今後、「海外で働きながら旅行したい」という人のためにフリーランスの仕事を斡旋するところも出てくると思われる。

旅行企画運営以外にも、エキゾチックな地で、コワーキングスペースやキャリアイベントを提供するビジネスも登場している。
 ・Hubud(バリ)
 ・SurfOffice(カリフォルニア州サンタクルーズ、カナリア諸島、リスボン)
 ・Outsite(サンディエゴ、カリフォルニア州サンタクルーズ、今後、レイクタホ、ハワイ)

■Remote Year

URL http://www.remoteyear.com
企業名 Remote Year
本社所在地 ニューヨーク
フェイスブック https://www.facebook.com/RemoteYear
ツイッター https://twitter.com/RemoteYear
代表 Greg Caplan(創業者), Sam Pessin(共同創業者兼 COO)
創業 2014年
利用者 2015年参加者 75人
従業員数 5人

創業経緯
2014年9月に Groupon を辞めた創業者(26歳)は、1年働きながら旅行することに。
友人らを誘ったところ、仕事を辞めるのは無理と言われたため、仕事をしながら旅行ができる仕組みを考案。
2015年6月1日に第一弾開始。

仕組み
1年間、11ヵ国の12ヵ所を訪問。各都市に1ヵ月ずつ滞在。
ヨーロッパに4ヵ月、アジアに4ヵ月、南米に4ヵ月。
プラハから始まり、リュブリャナ(スロベニア)、ドゥブロヴニク(クロアチア)、イスタンブール、ペナン、コータオ(タイ)、ハノイ、京都、ブエノスアイレス、メンドーサ(アルゼンチン)、サンチャゴ、リマを回る。

Remote Yearが、各都市で宿泊先とコワーキングスペースを確保。
宿泊は、アパート、ホテル、寮など滞在先でいろいろ。個室は保証。

<料金>
年2万7,000ドル(手付け 3,000ドル、月 2,000ドル)
旅費、宿泊費、共同ワークスペース利用料、イベント参加料、週に3度ほどの食費、旅行保険料を含む。査証代や予防接種費用などは含まれない。

<参加条件>
・遠隔で働けるフルタイムの仕事があること。ただ旅行がしたいという人は不可。
・遠隔で働いた経験があること。
・ユニークで、他人の多様性を許容できること。
・Remote Yearでの経験を通じキャリアアップを狙っていること。

<参加者>
Webで参加者を募ったところ、2万5,000人が応募。

オンライン応募用紙(パート1)
http://www.remoteyear.com/application

1,500人がエッセイ提出。300人近くを面接。75人が参加。
参加者の年齢は 22~49歳。平均30歳。男女半々。
アメリカ人 55%、45%が14カ国から。
ソフト開発者やWebデザイナーなどのIT従事者が半数。
75人中35人がグーグルやマイクロソフトなど大手企業勤務者、残りはフリーのライターや自営業者、小規模企業勤務者。

たとえば、ロンドンのトルコ人起業家は、海外市場開拓、各地での提携先探しを兼ねて参加。
大手油圧機器メーカーのプロジェクトマネジャーは、各地で同社の支社を訪問するなど実益も兼ねている。

サラリーマンの場合、雇用主の許可要。
雇用主から許可が出ず、参加を断念した応募者も。
個人が好きに旅行するよりも、Remote Yearのような主催者が遠隔で働きやすい枠組みを提供することで、雇用主の安心につながる。雇用主は、従業員にオフィススペースなど探しなどで労働時間を無駄にしてほしくない。

収益モデル
月に2回、参加者の給料から Remote Yearの手数料を天引き。

今後の展望
事業として成り立つのかどうかは、まだ未定。

 

■Hacker Paradise

URL http://www.hackerparadise.org
企業名 Hacker Paradise
本社所在地 なし
フェイスブック https://www.facebook.com/HackerParadise
ツイッター https://twitter.com/HackerParadise
代表 Alexey Komissarouk(共同創業者),Casey Rosengren(共同創業者)
創業 2014年
利用者 2014年参加者 30人

創業経緯
ウクライナ生まれイスラエル育ちの創業者(28歳)は米大学を卒業後、学生ビザが切れ、アメリカ出国を迫られたことから、かねてから念願のノマドワーカーになることに。
同じ大学を卒業した共同創業者(22歳)もノマドワーカーを目指しており、Skypeで打ち合わせ後、クリエイティブワーカーのために働きながら旅行できるコミュニティ(traveling community of developers, designers, and other creative types)を形成することに。

2014年秋に第一弾としてコスタリカのホテルで1ヵ月滞在。
2015年は、ベトナム、インドネシア(バリ)、タイに1ヵ月ずつ滞在。
7~9月、エストニア、バルセロナ、ベルリン、9~11月 東京、11~12月 台湾

仕組み
3ヵ月ごとのプログラムだが、参加者は1週間~3ヵ月まで参加期間を選べる。
途中抜けて、再度、参加することも可能。
参加人数は10~12人程度。半数以上がIT従事者。

自分で仕事、プロジェクトを用意することが必要。
Hacker Paradiseに特別なプロジェクトを始めてもよく、たとえば新たな言語の習得でもいい。

オンラインの応募フォームを提出した後、Skypeで面接。
http://www.hackerparadise.org/apply/

<イベント>
コワーキングスペースを提供する以外に、各種イベントを提供。

毎週、個々に週目標を設定し発表。
グループは目標達成のために、いかに協力できるかをアドバイス。

・週に何度かテーマ別のグループミーティング。
 たとえば「フリーランス」「データサイエンス」「起業」「ライティング」など。
・グループメンバーによる専門分野に関するワークショップ
・週に一度、自分の仕事、プロジェクトをプレゼン。グループからフィードバック。

<料金>

参加期間 宿泊費込み プログラムのみ
12週間 週500ドル 週225ドル
4~11週間 週600ドル 週300ドル
2~3週間 週850ドル 週450ドル

旅費は個人負担。各場所には個々に集合。

バリでの Hacker Paradiseの様子。
https://youtu.be/AII6uy4IlCI

今後の展望
社員に福利厚生・研修の一部として提供したいという企業もあり。
Hacker Paradiseの方が短期滞在のため、企業向けビジネスとして成り立ちやすいのでは。

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有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。