出入国在留管理庁の設置に伴った 1つの改正と1つの改定

出入国在留管理庁の設置に伴った改定

2019年4月1日、出入国在留管理庁が新設され、各(前)入国管理局の直上級行政庁となり、各(前)入国管理局の名称も例えば東京入国管理局の場合は、東京出入国在留管理局に変更されることになりました。
 そのことに伴い、法務省は2つ大きな動きもありました。(下記文書の一部は法務省HPに公表された広報資料から引用)

1.「特定活動」による本邦大学卒業者の就労の容認
本年5月28日、“法務省告示「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」の一部改正されることにより,本邦大学卒業者が日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを希望する場合は,在留資格「特定活動」による入国・在留が認められる”こととなった資料が発表され、5月30日から施行されることとなりました。
 この改正は、それまでの“制度上,飲食店,小売店等でのサービス業務や製造業務等が主たるものである場合においては,就労目的の在留資格が認められていなかった本邦大学卒業者については,大学・大学院において修得した知識,応用的能力等を活用することが見込まれ,日本語能力を生かした業務に従事する場合に当たっては,その業務内容を広く認めることとし,在留資格「特定活動」により,当該活動を認める”こととされました。
 文言上、主な要件は、①本邦大学卒業者(大学を卒業した者及び大学院を修了した者を指し、専門学校等の卒業者は含まれない点が要注意)であること,②日本語能力を生かした業務に従事する(逆に言えば、単に日本語での指示を受けて黙々と作業をする場合は含まれない)ことの2つであります。
 また、当行政書士法人が法務省にお問い合わせをしたところ、この制度は特に業種の制限がなく、例えばそれまで「技術・人文知識・国際業務」では認められなかったホテルでのフロント業務も今回の「特定活動」の許可対象になりうるとの回答をいただきました。
 今回の改正は非常に画期的な改正であり、この緩和政策とも言える改正により、各チェーン店(例えば牛丼店、コーヒー店など)やファミリーレストランないしコンビニエンスなどの従業員確保が期待されると考えます。ただし、この在留資格を申請して許可された場合は、期間が何年のものになるかはまだ不透明であり、これから実務で探っていく必要があります。

2. 永住許可の厳格化
本年5月31日、永住許可に関するガイドラインが改定されました。これは同3月28日から4月26日までの間、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課による緊急に意見募集の結果、出入国在留管理庁及び法務省が応募された計23個の意見を熟慮し永住の許可要件を実質、厳しくしたものです。
今回の改正は平成29年4月26日の改定と比べ、一番大きいのは“納税義務等公的義務を履行していること”を“公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること”に具体的かつ明確的にした点であります。
詳しく説明すると、本年7月1日以降の申請は以前と比べ、主に下記資料の提出又は届出が必須になりました。(6月30日までに申請した審査中の案件でも求められる場合があります。)

① 納税状況を証明する資料

1)源泉所得税及び復興特別所得税,申告所得税及び復興特別所得税,消費税及び地方消費税,相続税,贈与税に係る納税証明書
コメント: ここで注意すべきなのは、父母等からの海外送金を受けた場合や父母等のキャッシュカードで不動産を現金で購入した場合などは、贈与税がかかりうると考えます。

2)直近5年分(日本人の配偶者等の場合は直近3年分)の住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料
コメント: “適正な時期に納めていること”は主に転職などの事情により自ら規定期間内に納税の有無を指すと考えます。

② 過去2年間公的年金及び公的医療保険の保険料納付の証明資料

1)年金: 年金記録資料、かつ、国民年金(加入分のみ)保険料領収証書の写し
コメント: 未就労期間中でも国民年金に加入及び保険料納付の義務があると考えます。

2)医療保険: 健康保険被保険者証、かつ、(国民健康保険加入者のみ)保険料納付証明書及び領収証書の写し
コメント: 未就労期間中では国民健康保険に加入及び保険料納付の義務があると考えます。

③ 各種届出を適正な時期にしたこと
コメント: 例えば退職や転職の場合の『所属機関に関する届出』、離婚や再婚の場合の『配偶者に関する届出』などがあります。

 上記2つの在留資格に関し、当行政書士法人の実務上でもお問い合わせが増えており、実際の申請を通じて更に入管の審査ポイントを把握していく所存です。何かご不明点がありましたら、在留資格関連業務を専門とする行政書士などにご相談をなされれば一番よいかと思います。


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ACROSEEDグループプロフィール
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