【海外の就活・転職事情】中国人の就活・転職観を見てみる

海外就活・転職を見てみる -【中国人の就活・転職観】
2019.10.03

日本における中国人就労者

 日本で就労する外国人就労者は、2018年10月時点で146万人を超え、過去最高に達したが、国籍別では39万人近い中国が最も多く、外国人就労者数全体の26.6%を占めている。※1

国籍別外国人就労者の割合

国籍別外国人就労者の割合

 また、中国人の就労者の在留資格は「身分に基づく在留資格」の割合が26.7%、「専門的・技術的分野の在留資格」が26.5%、「資格外活動」が24.0%、「技能実習」が21.6%となっている。
 「専門的・技術的分野の在留資格」とは、「高度な専門的な職業」「大卒ホワイトカラー、技術者」「外国人特有又は特殊な能力等を活かした職業」であり、中国人就労者の4分の1強が高等教育を受け、高度なスキルを備えた人材であることがわかる。
 さらに、昨年、高等教育機関に在籍する外国人留学生は20万人を超えたが、そのうち中国からの留学生(8万6000人)が全体の41%を占めており、やはり中国籍がもっとも多い。

※1.
厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(平成30年10月末現在)』
※2.
日本学生支援機構『平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果』 高等教育機関における留学生受入れ状況

 このように、外国人労働者においても高等教育機関の留学生においても、中国籍が最多であるが、日本で就労または留学する動機として、下記のような事情がある。
 中国の給与水準が上がっているとは言え、日本の水準以上の給料を得ている人は一部の優秀な人材のみであり、平均的な給料は、日本の半分以下である。そのため、より高い給料を求めて日本に向かうのだが、とくに北京や上海などの大都市に比べ給料が低い地方都市出身者に見られる傾向だ。
 また、やはり欧米諸国と同様に、「日本のアニメや漫画が好きで、中国の大学で日本語を勉強した」というような学生も多い。
 中には、「中国の過酷な受験戦争に耐えられず、日本に逃げてきた」という学生もいる。中国では、1990年以降生まれの世代は「90後(后)」と呼ばれ、高度経済成長の下、一人っ子政策の下で裕福に成人した世代である。それまでの世代のようにガツガツしておらず、主体性がなく、おっとりしており、日本のゆとり世代に似ているとも言われる。 ※3
 そして、中国特有とも言える事情が下記である。

<就職難>

 中国では、今年、建国以来、過去70年で最高の830万人以上が大学を卒業した。さらに、英語圏で就労ビザの取得が難しくなったり、政治的に中国への風当たりが強くなっている中、大学卒業後、中国に戻る卒業生が50万人近くにのぼっている。
 一方、すでに経済が減速していたところに、米中貿易戦争が起こり、さらに経済が打撃を受けている。とくに輸出産業では、採用を控える企業も出ており、新卒の就職にも影響が出ている。今年は「史上最悪の就職シーズン」とも言われ、若者の反発を恐れる中国政府がタスクフォースを設けて対策に乗り出しているほどだ。
 卒業後半年以内に就職した新卒は、2014年に77.6%だったのが、2018年時点で73.6%に減少しており、今年は、さらに下落する見込みだ。今年、春節後の3カ月間の新卒向け求人数は、昨年同時期に比べ、13%減少したという。
 初任給も、新卒の3分の1が月6000(約9万円)~7999元(約12万円)もらえると期待していたところが、実際にそれだけの給料を得たのは18%のみであり、新卒の約70%は6000元未満だという。
 新卒の多くは、安定性を求め、国営企業での就職を希望しているものの、国営企業も採用を控えている状態だ。国営企業の新卒採用は、昨年比19%減少しているのに対し、応募者は5%増加し、求人数は7人に対し平均1件という狭い門となっている。月給は4000元(約6万円)で、北京の平均給料の半分以下であるにもかかわらず、国鉄が一番人気であるという。
 従業員1万人超の民間企業でも、今年、採用数が37%減少する中、応募者は11%増加している。一方、中小企業では、応募者が減少しているという状況で、大企業偏重傾向は韓国と似ている。

※3
東洋経済「”日本化する”90年代生まれの中国男子」2013/4/18

 アンケート調査では、大学生の88%が「今年中に就職するのは難しい」と答えており、就職留年するという学生も、昨年に比べて増えている状況だ。同時に、大学院に進学する学生も増えており、昨年末に大学院統一試験を受けた受験生も、過去40年で最高の290万人に達している。大学院試験を受ける理由として一番多いのが、「就職が難しく、競争力を高めるため」(36%)であった。

<競争力向上のための留学>

 競争力を高める手段として、留学を選ぶ中国人学生も多い。昨年、中国で発行された「中国学生研究生留学白書」によると、海外留学を選択した学生は、その主な目的として「就活戦線の競争力を高める(65%)」「新しいことを体験し、視野を広める(56%)」「国内より教育条件が良い(46%)」「語学力アップ(40%)」を挙げており、学生の66%が留学によって「就活の競争力が高まった」と回答している。

・”学歴ロンダリング”

 中国で大学卒業生が史上最多に達した背景には、大学の増加がある。今年、労働市場に入職する就労者の3分の2が大卒であり、3年前に比べても倍に増えている。大学数は、2000年に1000校強だったのが、今では2700校を超え3倍近くに達している。
 そうした背景から、無名の大学の履歴書は、即、ゴミ箱行きであるという。そのため、とくに中国の二流大学や地方大学出身者は、”学歴ロンダリング”のために、中国の出身大学よりブランド力のある日本の大学院に入る傾向が高い。(日本には、日本の有名大学を目指す中国人向け予備校がある。)
 また、近年は、地方都市から日本に留学する学生が増えているが、中国の大都市で就職したくても、大都市の戸籍を得るのが難しい上、北京や上海では家賃が高騰しているという事情がある。Uターンを希望する学生も増えているものの、「中国の地方都市に帰るくらいなら日本に行った方がいい」という学生も少なくないということだ。
 8月に『外国人の採用市場を読む 先進国の外国人材を雇用する上での留意点』でも触れたように、新興国の富裕層が米英に留学し、日本に向かうのは主に中流層である点は、中国も同じである。お金もコネもない学生は、中国国内の有名大学に入るためには過酷な受験戦争を勝ち抜かねばならないのだが、それを避けて、日本で”学歴ロンダリング”しようということだ。

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有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。