皆さん、こんにちは。日本ES開発協会の金野です。
◆暗黙知をいかに経営に活用することができるかで企業の業績は決まる。
今回は、暗黙知経営で定評のある経営学者の野中郁次郎の経営理論を紹介し、
その中で、テクノロジーの限界による、在宅勤務等の組織の
危険性についてお話をしたいと思います。
野中氏は日本企業の優れている点として、組織が持っている暗黙知の
素晴らしさをあげています。
彼の研究発表では「場」を通じて共有された暗黙知をいかに
経営に活用することができるかが創造性追求企業では大切だと述べています。
この暗黙知を体系化した、独自の経営手法として、SECIモデルを発表しています。
その一つの例として、富士ゼロックスにおける、
プリンター修理技術者達の例をあげて、ここではプリンターの
修理技術者達が修理をするのにどれだけ暗黙知に頼っているかを述べています。
プリンターの修理技術者達にとって非常に簡単な修理でもマニュアルでは
問題は解決できないというのです。
技術者達は自分たちのスキルというのはマニュアルや学習で身に
つくものではなく、現場でお互いに教えあったりする人と人との関係性の中で
身につくものだと、組織の対話を促すルールが必要だと言います。
知恵はマニュアルのような言葉では表現できず、このように、
これからのクリエイティブを追求する組織は暗黙知をいかに
引き出し見える化する為のプロセスを確立させ、その知恵を社内に
浸透させるかが必要です。それは、規程やマニュアルを整備して
確立するものでなく、対話から生まれるからです。
昨今の企業を取り巻く状況は、組織が行っている経済活動そのものの
目的すら今日と明日では変わってしまうような予定不調和の時代では、
形式的なマニュアルや規程では役にたたず、職場で起きる問題に対し、
社員一人一人が自律性を持って行動し、複雑性を伴った問題を自律性を
もった社員がつながりを通して解決することができる組織体制をつくって
いかなくてはならないのではないでしょうか。
◆フリーエージェント、在宅勤務等のつながりを破壊する働き方は企業を滅ぼす。
さて、そこでもう一つ皆さんと一緒に考えてみたいことがあります。
それは、私見であるが、以上の点から在宅勤務に対して私は
反対の立場を取っています。
インターネットの発達によりパソコンが
1台あればどこでも仕事が出来る時代になりました。
通勤疲労から軽減され、自分の裁量で仕事が出来ることは
ワークライフ・バランスを実現しようとする社員には、一見、
生産性や効率性が上がる働き方であるとマスコミや有識者達は述べています。
テクノロジーによる、会社という場からの解放こそ素晴らしいと。
しかし、私はそうは思いません。
私の経験からだと、在宅勤務を始めて1年も経つと約50%の人が
従来の職場に戻ってくる。その理由は「会社」は有識者が言うような
ただ単に経済活動をするだけの機械的な場というのみにあるのでなく、
これから時代により大切になってくるのは社員同士の“つながり”といった
社会的側面だということを忘れてはならないのです。
人間とは私達が思っている以上に社会性を必要としているのであり、
人とのつながりが希薄になることに人は耐えられないのです。
◆テクノロジーの限界について
フリーエージェントや在宅勤務の働き方は、
インターネットではつながっているけれど実は孤独感を感じて
働いているというケースは少なくありません。
共に働くということを通してその場に身を置くことで
得られるものはお金以外たくさんあります。
インターネット等のテクノロジーには限界があるのです。
創造性を追求する組織にとって、イノベーションを起こすには
なにも大きな「技術革新」や「経営革新」が必要なわけではありません。
イノベーションの小さな芽は、“つながり”と共通の場での
体験を通して生まれてくるのです。
社員一人ひとりがその「場」で感じこと、
体験したことを共有・共感していくことで、芽がつぼみとなり、
社員の自律性を高め、やがては企業文化を育て、より大きな花を咲かせます。
◆人と人とのつながりに着目したつながりの組織づくりこそ、
これからの新しい時代の新しい組織
私は、ソーシャルキャピタルというものに着目しています。
ソーシャルキャピタルは国や地域といった観点から
取り上げられることが多かった時代から、企業にとっても、
大切な視点だと言うことが認識されつつあります。
ソーシャルキャピタルという社会的性質を醸成することが
企業全体にとって多くのメリットがあるはずだというアプローチは、
今までの行政に提出する為の就業規則づくりや労務トラブル解決の為の
規程という観点とは、全く違います。
規程を整備すればするほど、労務トラブルがその分増えていく。
私には、そんな負のスパイラルに企業が陥っているように思えるのです。
そんな中、今話題になりつつあるソーシャルキャピタルというアプローチから、
ルール、組織づくりというものを考えていくのは、これからの新しい時代の
新しい経営を目指す社長にとっては大切な社員になるでしょう。
地域を大切にし、つながりある豊かな社会へ貢献したいという
経営者の方々に是非参考にしてほしいと思います。