組織のつながりの豊かさはコーポレートブランドに結びつく

皆さん、こんにちは。ESコンサルタントの金野です。

今、伸びている企業に共通しているのは、「つながり」を成長の糧とし
大小様々なイノベーションを起こしながら前進している、という点です。

何度もお伝えしている点ですが、社員同士のつながり(絆)、
自分が所属する組織とのつながり(貢献意識)、
自分が携わる商品サービスとのつながり(こだわり・仕事哲学)など、
いかに組織の中に多くの“つながり”を生み出すか、
という視点が、コーポレートブランディング
(“我が社らしさ”を磨き上げること)の上でも重要です。

組織が多くの「つながり」を有する、ということは、
そのつながりの相手・関わっている人から、多くの共感を得る“接点”がある、
ということです。

接点を通して互いに共感した状態で仕事に取り組めば、
何か問題が生じても協力して歩み寄りながら問題解決に取り組んだり、
対話をしながら良い仕事を創り上げようと努力するようになります。

このように社内のつながりを豊かにすることを
“インナーコミュニケーション”と言います。

そして、お客様や地域といった社外との接点が増えることによっても、
つながりという資産を増やすことができます(ソーシャルコミュニケーション)。

つまり、共感を得る接点は、社内外両方において創るべきものです。

このためのしくみを「コミュニケーションモデル」と言い、
コミュニケーションモデルが構築されることによって、
「ヒト・モノ・カネ」という会社の三大資本に加えた新たな“第四の資本”
である「共感資本」を高めることができます。

組織のつながりの大きさは、すなわち、組織に所属する一人ひとりが
持つつながりの総量でもあります。

つまり、一人ひとりが持つつながりが多ければ多いほど、
組織のつながりも大きくなり、社内外の接点が増え、
共感資本を高めやすくなる、ということです。

地域社会とのつながりを増やし成長し続ける企業の事例として、
このメルマガでも何度もご紹介している新潟県の越後湯沢で
旅館を営む株式会社いせんの取り組みを改めてお伝えします。

株式会社いせんには、「旅籠三輪書」という経営理念があります。

「人に尽くし、己を磨き、共に伸びる」。社長である井口智裕氏が
先代から経営を受け継ぎ、旅館を大幅にリニューアルした当時に、
「お客様、地域、HATAGO井仙という三者が和を保ちながら共に発展する」
というおもいのもと、“地域と共に歩み成長していく”という
決意でまとめられたものです。

株式会社いせんでは、この経営理念を土台に、
会社と社員、あるいは社員同士が価値観のベクトルを合わせていくために、
朝礼の場やミーティングなどを活用した「対話」を重視し、また、
今後の事業の方向性や現状などを社員にも伝えていくことで経営への
「参画」意識を高めることで、社内のつながりを豊かにしています。

さらに、地域の酒蔵や農家などとのコラボレーションによる商品開発を推進し、
社員自らプロジェクトメンバーとして関わることで、
社外の場との“接点”を増やしています。

そのため、株式会社いせんの社員は皆、越後湯沢を舞台に
一人ひとりが主役として輝いていると言えます。

滞在型観光ツアー企画として、越後湯沢出身の社員が
地の利を活かしてコーディネートした「山菜採りツアー」。

旅館の中のレストランでは、地域で採れたばかりの野菜や
伝統的な食材を社員自ら仕入れ、開発されたコース料理を提供し、
観光客だけではなく地元の人たちも訪れる場となっています。

また、昨年オープンした駅構内の店では、
それらの食材がイタリアンやスイーツに形を変えて提供され、
多くのお客様によろこばれています。

井口社長はもちろん、個々の社員も“地域のプロデューサー”となって、
越後湯沢の魅力を表現しているのです。

今伸びている企業は、個々の社員が地域の人たちとのつながりを
多く持つことで、働くよろこびを実感し、
仕事を通して成長し続けられるイメージを描く土壌ができていると言えます。

なぜなら、先述の井口社長の取り組みが、
越後湯沢の地域がもつ“雪”や“米”“伝統的な食文化”といった
ソーシャルキャピタルの価値を高め、農家や酒蔵など地域の
さまざまな“作り手”と地域を訪れるお客様とを結びつける役割を
果たしているからです。

そのような「地域のプロデューサー」としての役割を通して、
株式会社いせんで働く社員一人ひとりにも作り手や訪問客から
「ありがとう」と感謝の言葉が寄せられ、
他の地域や他社からも見本とされることでよろこびや誇りを得られるのです。

このように、働く個々のよろこびや誇りの実感が、
組織の活性化にもつながり、訪れるお客様や関わる人たちの
満足感や充実感にも結びつく、という好循環を、
企業を基点に生み出していく時代に入っていると言えます。
 

金野 美香:日本ES開発協会プロフィール
金野美香(きんの みか)日本ES開発協会 専務理事 | 福島大学行政社会学部卒業後、有限会社人事・労務にて、日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務めるなど幅広く活動する。“会社と社員の懸け橋”という信念のもと、独自に編み出したES向上組織開発プログラム「クレボリューション」や、組織活性度診断「人財士」を活用した社内プロジェクトの立ち上げに取り組む。[http://www.jinji-roumu.com/] ・Tel:03-5827-8217 ・Mail:info@jinji-roumu.com