企業文化を育み“つながり”を生み出すツール「クレド」

■  企業文化を育み“つながり”を生み出すツール「クレド」
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皆さん、こんにちは。
日本ES開発協会の金野です。
今回は、ESの視点で組織づくりを進める上で柱となるツールである「クレド」に
ついて、考え方をご紹介したいと思います。

ESを軸とした組織づくりで大切なことは、
社員同士の絆や組織に対する帰属意識、商品サービスへのこだわりなど、
さまざまな“つながり意識”を強めていくことです。

つながり意識が強くなることで、例えば自分の担当外の仕事で問題が生じたとしても、
その仕事を担当する仲間を助けるために共に解決策を考えるなど
「互いに踏み込み協力し合う」ことが当たり前の組織風土が育まれていきます。

また、そのような職場で働くことにやりがいを見い出した社員が、
より質の高い仕事を生み出すようになり、
その結果、お客様から「ありがとう」と感謝の言葉を受け取ることで、
ますます仕事が楽しくなる、というプラスのスパイラルが始まります。

そして、お客様など関わる人たちのよろこびに接することを通して自分の会社が
「地域社会からよろこばれる存在」であることを知り、
地域社会とのつながり意識をも体感することができます。

このようなつながり意識は、自然と高まるものではありません。

クレドという一つのツールを意識して行動する場が基点となり、
働く一人ひとりの自律性や主体性を高め、
組織全体に相乗効果を生み出すことができます。

改めての確認になりますが、クレドとは、
経営理念を実現するために必要な組織の共通の価値観を
分かりやすい言葉で表現したものです。

語源はラテン語で、「信条」「よりどころ」という意味を表します。

多くの会社では、「わが社がなにゆえこの世に存在するのか」という
存在意義を言葉で表現しています。

その言葉が表すゴールに向けて経営を追求していくわけですが、
抽象的な文章でまとめられているため、
もう少しわかりやすく「ビジョン」として具現化していきます。

ビジョンは、ある程度のスパンで期間を区切って数字や分かりやすい言葉で
示していくものです。

そして自社の戦略に沿って、
そのビジョンを一年ごと・四半期ごと・一か月ごとの目標に
落とし込んでいく、というのがマネジメントの流れです。

このマネジメントのサイクルに基づいて目標達成・課題解決がなされ、
できるだけスムーズにビジョンを実現し、
少しずつでも経営理念の実現に近づけるように、
日々の仕事に取り組む上での心がまえ・心の支柱となるものが、「クレド」なのです。

例えば、クレームが起こってしまった場合に、
「自社としてどのように対応すべきか」を考えるために、
クレドの項目を踏まえて判断することができます。

また、新たに人を採用する際に、クレドの項目に照らして自社の
社員としてふさわしいかどうかを見極める基準としても、
活用することができます。

リッツカールトンホテルやジョンソン・エンド・ジョンソンなど
外資系企業でのクレド活用事例が日本の企業にも広まり、
今や社員数が数名の小さな会社に至るまで、
多くの企業でクレドが創られるようになりました。

かつての時代であれば、クレドをもたなくとも、
創業社長が発する言葉に基づいて社員が判断に迷うことがなく
仕事に取り組む状態が一般的でしたが、
今、多くの企業は創業社長から二代目、三代目・・・と受け継がれ、
働く社員も価値観や生活スタイルが多様化しています。

また、IT化や国際化等で、日々の職場の中には数多くの情報が行きかい、
一つの仕事を成し遂げるにはさまざまな人が関わり、
まさに職場は“複雑系”の状態です。

そのため、あえて自社が大切にしたい心がまえや信条を
分かりやすい言葉で表現し、ツールとして社員一人ひとりに
携帯させることで、自社の価値観に基づいたスピーディーな
意志決定を各現場で行なうことができるのです。

クレドは、クレドカードを導入し組織づくりのツールとして活用して初めて、
その効果が2倍にも3倍にも広がっていきます。

また、クレドを作るプロセス自体に意味があるため、
特別プロジェクトとして立ち上げ、社員を参画させて複数回の
対話の場を設けながら作り進めていきます。

具体的には、
①自分自身と向き合う⇒
②個々の価値観を共有する⇒
③互いに共感するキーワードを言葉にまとめる⇒
④クレドの文章として仕上げる、という4つのステップを設け、
完成したクレドは全社に発表します。

仕事の形態にもよりますが、基本的には月一回、
プロジェクトメンバーが集まる場を作り、各ステップに取り組みます。

全社員にクレド導入の意義を伝えたり、
プロジェクトメンバーに作り方等を説明するワークショップを事前に行うと、
完成までよりスムーズに進んで行きます。

これらを通して、最短で半年、綿密に作れば一年間をかけて、
クレドを導入します。
http://www.jinji-roumu.com/es/escreed_dounyu.html

このようなクレド作成のプロセスを通して大切なのは
「対話」です。

対話とは、言葉によるコミュニケーションを通して
“コンテキスト(文脈)”を明らかにし、相互理解を深めることです。

一回集まって話しただけでは、互いの価値観を把握するのは難しいですが、
何度か集まって、クレドに関する話し合いを通して対話を重ねていくと、
プロジェクトメンバー個々の言動の裏に隠れた背景や経緯を把握することができ、
こだわりや哲学、誇りに思っていることなどを理解することができます。

それによって、プロジェクトチーム内のつながり意識が強まり、
チームとしての組織力を高めることができます。

その結果、自社の企業文化や働く個々の価値観を汲み取った、
質の高いクレドを作り上げることができるのです。
 

金野 美香:日本ES開発協会プロフィール
金野美香(きんの みか)日本ES開発協会 専務理事 | 福島大学行政社会学部卒業後、有限会社人事・労務にて、日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務めるなど幅広く活動する。“会社と社員の懸け橋”という信念のもと、独自に編み出したES向上組織開発プログラム「クレボリューション」や、組織活性度診断「人財士」を活用した社内プロジェクトの立ち上げに取り組む。[http://www.jinji-roumu.com/] ・Tel:03-5827-8217 ・Mail:info@jinji-roumu.com