ES向上型人事制度「教育」のしくみを考える ~ 会社の“伸び”は社員の人間力の“伸び”以上にはならない ~

皆さん、こんにちは。
今回は、ES向上型人事制度の大切なしくみ「教育訓練」について、
お話をしたいと思います。

本題に入る前に、
先日私は「子供の教育」について書かれた本を読んでいました。
”才教学園”という、進学校に合格者を何人も輩出し、
しかも出来てまだ一年しか経ってないのに地域の方々から
「立派なお子さん達がたくさんいる」と評判になっている学校の
山田昌俊校長が書かれた本です。

その中に、会社の人事と共通するので皆さんにぜひご紹介したい!
と思ったことが書かれていました。
それは、山田校長の次の言葉です。
「子供の学力は、ただ詰め込んだだけでは伸ばすことは出来ない。
 ある程度のところで限界が訪れる。
 でもその子供に人間力をつけると、学力もまたぐんぐん伸びるのです。」

なるほど、これは我が意を得たり!
そうなのです。
会社もこれと同じ。
社長さんから私のところに教育のことで相談をいただくケースがこれなのです。

「いろいろな技術研修をしてきました。
 研修を受けた直後は良かったのですが、このところ研修の効果が全くなくて
 困っています。」
その答えは、ズバリ、あなたの会社の「人格」ならぬ「社格」を大きくしないと、
それ以上、研修効果は表れてこないということなのです。

そして、この社格を作るのは誰か?というと、それは、社員一人ひとりの
”人間力”ですね。

このコーナーでも何度か使わせていただいているフレーズ
「志の大きい会社が志の小さな会社を喰う時代」
という言葉のとおりです。

今までの教育研修では、これまでお話してきた通り、外部・内部環境の
激しい変化のせいで、行き詰っているのです。

今大切なのは、この「志」を社員一人ひとりに身につけさせる教育
を実践することなのです。
そして、個々の人間力を高め、その総量としての「社格」を向上させることが、
その解決策であると言えると思います。

ただ、そのために何も新しいシステムや小難しい教育訓練手法を
取り入れる必要はありません。
これまでこのメルマガでもお伝えしてきました
「ES」を中心とした組織づくりの取り組みを「教育の場」として体系だてる
ことが重要なのです。
そして、皆さんが、売上の伸び悩みに直面したり、新しい事業への取り組み、
新しい取引先とのご縁などが最近どうもなくなってきたなと感じたら、
それは、社員の「人間力」の向上にこそ原因があるのではないか?という
前提に立って、教育プログラムを作ることが大切であると言えます。

そのような教育プログラムを立てる際のポイントについて解説していきたいと
思います。
大きくは、以下の3つです。

1.「志」とは、社員の「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」
 の3つの輪の重ねた交点の大きさによって決まる

2.「志が高まる」というのは、社員の自律性と社会性の高まりによって
 生じるものだ

3.志を高めるには、”暗黙知”を”見える化”するための職場環境が大切

これら3点について、順を追って解説したいと思います。

まず、「志」教育で大切なことは、社員自身の「個」から出発することです。
「会社の”伸び”は、社員一人ひとりの”人間力の伸び”以上にはならない」
という前提で、教育プログラムを考えることが必要です。

先にご紹介した山田校長は、子供たちの学力を伸ばすためには
その前提として
・「夢」を持たせること
・「役割」を与えること
そして、
・「才」=子供の才能を本人が見つけるだけでなく、
 教師も見つける努力をしてあげること
であると言っています。

私はこれは、大人の教育の世界でも当てはまると思います。

「目標管理」のお話でも解説した通り、
社員の目標設定の際に大切なことは、その社員の「やりたいこと」
「やるべきこと」「やれること」の3つの輪を前提に、
「チャレンジングシート」を使って会社のクレドと結びつけ、
上司と部下との対話を通して、目標を立てることが大切である
というお話をさせて頂きました。
そして、上司がその目標設定に介入して、支援してあげるかどうかで、
”ノルマ”か”目標”かは決まるということをお伝え致しました。

私にはまず、目標管理を査定に使うだけでなく、「チャレンジングシート」
のようなものを使って教育に用いることが大切だと思っています。

さて、次は、志が高まるメカニズムについてです。
グロービス経営大学院の田久保善彦さんは、志が高まるメカニズムについて、
志が高まっていく時は、必ず、その個人の”自律性”の高まりと”社会性”
の高まりが見られると言っています。
では、(1)自律(2)自立の違いとは何でしょうか?
私はマズローの欲求5段階説を用いて、ES経営とは「人間性尊重経営」
であるということをお伝えしていますが、
自立と自律とは、まさに動物性と人間性の違いを表しているといえる
でしょう。
グロービス経営大学院の田久保さんは、
「自立」とは、経済的に自立した状態であり、マズローの言う
生理的欲求、安全の欲求をクリアした状態、
そして「自律」とは、「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」
まで人間力が高まった状態だと言っています。

それは、自分のあるべき姿が確定し、それに合わせ自分を律していて
人生を進んでいく状態です。
これはまさに、ESとは何かの根本を問うものであり、
「志」教育とは、私はそのまま、今まで皆さんにご紹介している、
ESを高める「クレボリューションプログラム」の実践に他ならないと
思うのです。
 

金野 美香:日本ES開発協会プロフィール
金野美香(きんの みか)日本ES開発協会 専務理事 | 福島大学行政社会学部卒業後、有限会社人事・労務にて、日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務めるなど幅広く活動する。“会社と社員の懸け橋”という信念のもと、独自に編み出したES向上組織開発プログラム「クレボリューション」や、組織活性度診断「人財士」を活用した社内プロジェクトの立ち上げに取り組む。[http://www.jinji-roumu.com/] ・Tel:03-5827-8217 ・Mail:info@jinji-roumu.com