社会人としての ES の視点

皆さん、こんにちは。
日本ES開発協会の金野です。
今回は、先日ある大学で行なった「キャリアデザイン」に関するセミナーで感じたことを少しお伝えしたいと思います。

このセミナーでは、これから就職や就職活動を控えている学生たちに対し、いくつかのワークショップを行いながら、
「社会人とは ? 」「働くとは ? 」ということについて考えてもらう場として話をしました。

その中で、「今、頭の中に思い浮かぶ“理想的な社会人”とは誰ですか ? 」
という問いかけをしたところ、さまざまな名前が挙がってきました。

スポーツ選手、タレント、家族、新卒として入る会社の先輩社員・・・。

「両親」という言葉が挙がったことから、
彼らも親の姿をきちんと見ているんだなとホッとする一方、
ふと気付いた点があります。

それは、「情報の受け手として知り得た人の名前しか挙がってこない」という
ことです。

自ら積極的に動いて出会った人や知った人ではなく、
普段生活する中で出会う人、新聞やテレビを通して知った人など、
受け身の状態で得た情報の中から「理想的な人物」を思い描いている、
という点でした。

おそらく社会人の先輩である皆さんに同様の質問を投げかけた場合、
豊臣秀吉や上杉鷹山といった歴史上の人物や、
松下幸之助など名経営者の名前、
あるいは、仕事や地域活動などつながりある人の名前
といったさまざまな人物像が挙がってくるのではないでしょうか。

一人ひとりの心の中に何かしらの”志”があるからこそ、
「あのように生きたい」「こういう姿を示したい」という理想の姿が描かれ、
使命感が生まれ、その姿に近づくための「自己実現の欲求」が
生まれてきます。

そしてその”志”は、多くの場合、社会人としての仕事、つまり「働く」という
経験を通して培われるものです。

このセミナーでのエピソードは、若手世代の世界観の狭さを表す一例
であると言えると思います。

もちろん、全ての学生がそうとは限りません。
部活やアルバイトなど、積極的に新しい世界に飛び込んで人とのつながりを
増やしていく人も多いでしょうし、
国内・国外へと旅行をしながら経験を積む人もたくさんいるでしょう。

ただ、それでも、出会う人と経験する場の数は限られています。
そして、それらの経験知だけをベースとした”モノの見方””視点””視野”は、
とかく偏ったものになりがちです。
特に、日々これだけ多くの情報が行き交い複雑化している世の中において、
自ら積極的に動いていかないと、
「情報の受け手」として与えられた情報からしか自己の価値観が形成されない
ことにもなりかねません。

私も、高校時代は部活に明け暮れ、大学時代はアルバイトに明け暮れ
時に鈍行で旅に出る、という繰り返しで経験を重ねてきました。
しかし、それらの経験は社会に出てからの”土台”にはなったものの、
物事の判断基準やモノの見方・視点に関しては、
上司をはじめ社会人の先輩方・リーダーたちからの教えや、
仕事や書籍を通して出会った数々の人たちから学んだことが
軸になっていると実感しています。

今の学生たち、あるいは社会に出たばかりの若手世代に伝えたいのは、
「今あなたに見えている世界は、実はほんの一部。
 世の中はまだまだ知らないことばかりで、それらを吸収して自分の糧に
 していくのが”社会人として生きていく”ということなんだ。」
ということです。

相手の話やモノの見方を「こういう価値観もあるんだ」と広く受け止め、
そこから広がる世界を楽しむこと。そしてそのプロセスを楽しむこと。

カー用品店大手の株式会社オートウェーブで代表取締役を務めて
いらした廣岡等氏が、対談でお話を伺った際このようにおっしゃっていました。

「私たちの目に見えるものはたった 0.0001 のもの。
 99.9999 のものは見えない。」

世の中のことを知っていると思っていても、
実は知らないことの方が多い。
当たり前ですが、このことを押さえておかないと、
自分の偏った判断で 3 年も経たないうちに会社を辞めてしまったり、
何かの思い込みから誤解ができ人間関係にひずみが生じたり、
若手社員にとっては今後のキャリアにも影響を及ぼす結果と
なってしまいます。

私たちリーダー・先輩社員が伝えるべきは、
物事を捉える「視点」や、判断する際の「軸」、向き合う「スタンス」。
こういったことを意識して、若手社員・若手世代に接していくべきではないかと
思います。

皆さんの会社の若手社員はいかがでしょうか ?
一度ゆっくり向き合ってみてはいかがでしょうか ?
 

金野 美香:日本ES開発協会プロフィール
金野美香(きんの みか)日本ES開発協会 専務理事 | 福島大学行政社会学部卒業後、有限会社人事・労務にて、日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務めるなど幅広く活動する。“会社と社員の懸け橋”という信念のもと、独自に編み出したES向上組織開発プログラム「クレボリューション」や、組織活性度診断「人財士」を活用した社内プロジェクトの立ち上げに取り組む。[http://www.jinji-roumu.com/] ・Tel:03-5827-8217 ・Mail:info@jinji-roumu.com