他社のフィットネスクラブと提携! シニア向けフィットネスプログラムを提供

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2015.10.21

アメリカでは、通常、シニアが利用するスポーツクラブは、一般の有料フィットネスクラブか、市やコミュニティカレッジなどが提供する無料または低料金のジムやクラスである。
SilverSneakersでは、独自でフィットネスクラブを経営するのではなく、全米のフィットネスクラブやYNCAなどと提携し、シニア向けフィットネスプログラムを提供するというユニークな形をとっている。独自のインストラクターやパーソナルトレーナーの認定も行っている。

さらに、SilverSneakersでは、保険会社と提携し、高齢者向け国営健康保険であるMedicare保険加入者(ただし一部のMedicare保険のみ)に対し、クラブ会費を保険でまかなえるようにしている。

なお、プログラムの効果測定は、対会員アンケート調査の結果によって行われている。

■SilverSneakers

URL http://www.silversneakers.com
http://www.healthwaysFIT.com(会員ポータル)
http://www.healthways.com
企業名 Healhways, Inc.
本社所在地 テネシー州
フェイスブック https://www.facebook.com/silversneakers
ツイッター https://twitter.com/silversneakers
創業 1992年。2006年、Healthwaysによって買収
会員数 無料会員資格のあるMedicare加入者は1,200万人
従業員数 フルタイム社員 2,500人以上
売上 7億4,200万ドル、損失556万ドル。2013年から赤字
資金調達 Healthwaysはナスダック上場企業

創業経緯
1992年、運動を通じた高齢者の心臓疾患予防を目的に設立された。創業者の父親が51歳で心臓発作を起こし、同世代向けフィットネスプログラムを探したものの、なかったことが、設立のきっかけとなった。

運動をし、かつ人と交わることで、高齢者の身体的健康だけでなく、精神衛生も改善でき、認知症や老人性うつなどを防げるという考えに基づいている。

創業者は、この運動にかかる費用を高齢者向け健康保険でカバーできる仕組みを築いた。

アメリカでは65歳になると加入できる公的健康保険Medicareがあるが、Medicareだけでは自己負担が2割で、負担額の上限がないため(アメリカでは手術をすると1,000万円くらい軽くかかる)、その差額を補う保険や上限を定めた民間のMedicare保険に加入する人が多い(Medicareの保障分までは国が支払い)。こうした民間保険の加入者はフィットネスクラブの会費が保険でカバーされる。

・アメリカの健康保険制度に関する関連記事
http://japan.cnet.com/marketers/sp_socialinsigthts/35037497/
http://japan.cnet.com/marketers/sp_socialinsigthts/35037498/

・2006年、SilverSneakersは、疾病予防管理会社大手のHealthwaysによって買収。
Healthwaysに関しては、下記を参照のこと。
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/199.html
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/310.html

Medicare政府支出額は、今後10年で70%増加すると予想されており、支出削減のための米政府の最大の狙いは疾病予防である。また、医療保険改革法(通称オバマケア)の施行に伴い、2016年末までにMedicare給付額の30%、2018年末までに50%が医療の量でなく、質をベースに支給されることになった。たとえば、退院した患者が、すぐに再入院するような病院は給付額を減らされる。こうした中、保険加入者の健康をいかに管理するかが焦点となっており、Healthwaysのような疾病予防管理会社が台頭している。

仕組み
SilverSneakersでは、全米1万6,000以上のフィットネスクラブと提携し、65歳以上向けフィットネスプログラムを提供している。現時点で、65のMedicare民間保険プランがSilverSneakersを提供しており、該当保険加入者は、クラブ会費が保険でカバーされる。

SilverSneakersに加入するには、65歳以上で、Medicare加入者である必要がある。
(入会資格を満たさない場合、フィットネスクラブの会費は自己負担。インストラクターの裁量で低料金で参加可能なクラスもあり。)

SilverSneakers.comで、氏名、生年月日、郵便番号、保険加入者番号を入力すると、無料で同プログラムに参加か否か(加入保険によってカバーされているかどうか)をチェックできる。同プログラムの会員証をネットでダウンロードして(または保険証を)最寄の参加施設に持参する。

会費に含まれるのは、
・ 提携施設の利用
・ SilverSneakersプログラム認定アドバイザー:
  同プログラム、施設内のSilverSneakers クラスを紹介。各施設のスタッフから成る。
・ SilverSneakersクラス:
 45~60分の全身調整運動(ボディコンディショニング)。週に最低2回。
・ 会員向けポータル、HealthwaysFIT.com
 - 栄養、健康増進プラン、献立、トラッキングシステム(成果は各自モニター)
 - 健康に関する記事やレシピ
 - 運動デモビデオ
 - SilverSneakersクラスビデオ
 - フォーラム
・ 健康に関するセミナーなど

参加の際に、運動に関するアセスメントを行い、その時点で医師に相談すべきと判断すれば、会員が各自、医師に相談する。
近くに提携施設がない場合、または会員が外出不可能の場合、会員が独自で運動できるようエクササイズグッズやDVD、その他資料から成るキットが送付される。
また、公園やコミュニティセンター、シニアセンター、高齢者サービス住宅(Assisted Living Home)、老人ホームなどでクラスを開催するSilverSneakers FLEXプログラムもある。

<提携先>
提携施設となるには、場所や安全性、一定の機器や設備を備えていることが条件で、SilverSneakersの認定を受けなければならない。
医者とも提携しており、患者にSilverSneakersを勧めてもらう。
高血圧で、心臓バイパス手術をし、杖をついてやっと歩けるかどうかくらいの70代の女性が、週に3回、SilverSneakersのクラスをとり、食生活を改善することで、減量して、杖なしで歩けるようになり、高血圧や心臓の薬を飲む必要もなくなったといった例が多々ある。(こうした場合、患者の健康状態は医師がモニター。)

SilverSneakersの流れ

特徴
会員全米平均年齢73歳。上は90代まで。
エアロビクスなどのクラスで流れる音楽は50~60年代のロック。

独自のシニア向けインストラクターおよびパーソナルトレーナ認定制度を設けている。
・ 提携フィットネスクラブで教えるSilverSneakersインストラクター
・ シニアセンターなどフィットネスクラブ以外で教えるFLEXインストラクター
・ ベビーブーム世代向けBOOMクラスを教えるBOOMインストラクター
 (ブーム世代は、その前の世代よりアクティブな人が多いので、フィットネスレベル高。)

孤独が身体的健康だけでなく、精神衛生にも悪影響を与えることから、運動を通じた仲間作りにも力を入れている。インストラクターはエクササイズだけでなく、昼食会やパーティーなども企画し、こうした交流により、会員同士が友達となり、仲間作りができる。

会員の60%が友人と一緒にSilverSneakersのクラスに参加するという。
SilverSneakersプログラムがうまくいくかどうかは、それぞれのフィットネスクラブやインストラクターにより、どれもがうまく行っているわけではない。

毎年、創業者の父親を記念したSilverSneakers’Richard L. Swanson Inspiration Awardを授賞しており、これも運動を続ける動機付けとなっている。

効果の測定
プログラムの効果は、対会員アンケート調査で測定される。

・提携保険会社のアンケート調査で、同社の保険加入者で同プログラム会員は、59%が「すばらしく健康、または非常に健康」と回答し、Medicareのアンケート調査による高齢者の全米平均29%の倍近くであることから、「同プログラムは効果がある」と結論づけている。また、81%が「週に最低3回は中程度の運動を30分以上、行う」、65%が「健康状態によって中程度の活動を制限されない」と回答し、これも全米平均40%を大きく上回っている。

・2013年のHealthwaysのアンケート調査では、高血圧や心臓疾患、糖尿病などの慢性疾病の症状が50%、関節炎は59%、四肢麻痺は49%、腰痛は59%改善したという回答が得られた。

なお、Healthwaysでは、世論調査会社、ギャラップと協力し、Gallup-Healthways Well-Being Indexという全人的健康指数を測定している。これは200万人を対象にしたアンケート調査で、日々の活動、社会との交流、ストレス軽減につながる金銭管理、在住地域での満足、身体的健康といった要素を基に満足度を測るものである。測定内容は、疾病に冒されたり、脆弱でないというだけでなく、身体的・精神的・社会的に満足のいく生活が送れること(Wellbeing)というWHOによる健康の定義に基づいている。

収益モデル
Medicareによる保険金給付

今後の展望
保険会社・保険組合によっては、SilverSneaksers会員に、Healthwaysの子会社の製品、万歩計を使ったソーシャルネットワーキングサービスのWalkadooなど他のサービスを提供しているところもある。現時点では、使用料は保険会社が負担しているが、Healthwaysでは、効果データを収集してMedicareによるカバーを目指している。

SilverSneakersでは、フィットネスクラブで各会員がどういった運動をしているかをモニターすることはできないが、Walkadooでは各会員の運動状況がモニターできるため、Healthwaysでは、そのデータを収集し、保険会社に提供する予定である。

フィットネスクラブに通えないシニアもいるため、今後、Walkadooのような他の運動オプション提供も予定している。

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有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。