海外からの人材受入体制構築について

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現在、「研修」目的での受入についての相談も多くよせられます。一重に「研修」といっても会社により日本での活動内容は様々です。内容によっては入管法で定められている「企業内転勤」「技術・人文知識・国際業務」に該当する場合、「技能実習」の場合、状況によっては「研修」「短期滞在」で受け入れる場合もあります。
どの在留資格に該当するかは、会社の意向、日本での活動内容など、様々な角度から検証する必要があります。受入の重要なポイントの一つである「実務」か「非実務」かについて記載させていただきます。

報酬が発生しないから「非実務」というわけではなく、生産するラインを使用するからといって必ずしも「実務」とも言い切れません。基準省令には「実務研修」とは「商品を生産し若しくは販売する業務又は対価を得て役務の提供を行う業務に従事することにより技能、技術又は知識を修得する研修をいう。」と定められています。
すなわち、一般の職員と同様に生産ラインに参加し、製品を生産することを通じて技能、技術又は知識を修得する場合などがこれにあたります。他方、「非実務研修」には、日本語教育や労働安全衛生に係る講習など座学による研修が含まれます。また、製品を実際には製造せず、生産ラインで見学すること等を通じて技術等を修得するような場合も含まれます。
「実務研修」か否かは、講義形式か否か等により決まるものではなく、研修生の行う作業が企業等の商品の生産又は有償の役務提供の過程の一部を構成するか否かにより判断されます。

製造業等において「生産機器の操作に係る実習」として試作品の製造を行う場合の「非実務研修」の例が法務省のホームページに記載されています。

  • 1. 工場の敷地内にはあるが別棟の研修センター等生産施設とは別の施設で行う場合
  • 2. 商品生産施設内の商品を生産する区域とは明確な区分がなされている場所等に設置された模擬ライン等を使用して行う場合
  • 3. 通常の商品を生産するラインを使用して行うが、同ラインをあらかじめ一定の時間を区分して研修生による試作品製造のために使用し、そのことが第三者にも明確に分かる状態で行われる場合は、「非実務研修」に該当します。この場合の「試作品」は,商品として販売される等のことがないことが必要であり、研修生以外の者が若干の点検、仕上げを行うことによって最終的に商品となるものも該当しません。

「実務」か「非実務」かは、あくまでも受入の判断材料の一部にすぎません。実際の相談としてあったのが、海外の共同研究をしている企業から、技術や知見を共有し、今後の生産技術開発の加速を目的とした研究員の受入相談です。会社の意向としては、報酬は発生せず、海外出張手当のみ、期間は約3ヶ月間、実際に研究所にて研究に携わるなどが挙げられます。
会社が考えているビジネスプランに100%沿った申請をしようとすると、どの在留資格にも該当しない可能性があります。日本の受入機関と契約を結び、日本人と同等以上の報酬を支払うことで、研究員として「技術・人文知識・国際業務」を申請するのか、完全に「非実務」として、企業等の商品の生産又は有償の役務提供の過程の一部を構成する作業には携わらないなど、該当する在留資格の要件に寄せていくことが重要だと考えます。
今後も海外からの人材受入の必要性は増加する傾向があり、日本での活動内容も多種多様になっていくはずです。その時、必要なことは、会社の意向に限りなく沿った形で、法的にも問題ないビジネスプランを構築し、どのような受入でも対応可能な土台を築きあげることが必要不可欠ではないかと思います。

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ACROSEEDグループプロフィール
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