企業に勤める外国籍の方の多くは「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれる在留資格をお持ちです。就労目的の外国籍の方が、初めて「技術・人文知識・国際業務」を得る際には、その際に雇用主となる企業の協力が必要となります。しかし、この「技術・人文知識・国際業務」は外国籍の方の学歴や職歴を元に許可・交付される資格のため、在留期限が残っている内はその資格を保持したまま他の企業に転職することが可能で、これまでと同種の業務を行うことが望ましいとされています。
採用を担当される人事の方からは「既に日本で就労資格を持っている方の採用は安心だ」という意見を伺う事もありますが、実は注意しなければならないこともあります。既に国内に居る方の在留状況は入国管理局により情報管理され、これらの情報は今後の在留資格更新手続きにも影響を与える可能性が高いからです。そのため具体的には下記のような点に注意が必要です。
1:業務内容
現在の制度では、エンジニアの方も、人事をされてきた方も同じ「技術・人文知識・国際業務」をお持ちです。そのため在留資格名だけでは、これまでどのような立場でどういった内容の業務を行ってきたのかが分かりません。
これまで其々が独立していた「技術」と「人文知識・国際業務」が2015年春に統一され、業務内容の理系と文系の垣根も緩和されてきたとは言われています。しかし2016年の夏に調査した限りでは全国の入国管理局レベルでその判断基準も異なっており、実質的には名称の統一だけに過ぎず、これまでと同様に各個人毎に就労可能な業務は区別されているという回答の局もありました。
やはり「技術・人文知識・国際業務」さえ持っていれば、単純作業以外のどの様な業務にでも就けるというわけではないといえるでしょう。前職での業務内容を確認し、これまでと大きく相違のないようにした方がより安全だと考えられます。また原則に立ち返りますが、学歴を確認の上でそちらと関連性のある業務を行ってもらうことが一番間違いのない方法です。
また、もし万が一前職で「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務を行っていたような場合も今後の更新が認められない可能性が考えられます。こちらも可能な限りの詳細を確認することをお勧めいたします。
2:前職を離職してから再就職までのブランク
「技術・人文知識・国際業務」は国内で就労することを目的とした在留資格です。そのため就職先を離れ無職のまま3ヵ月が経過した場合は在留資格の取消事由に該当します。もし仮に採用したとしても、あまりにも長期に渡り無職のまま国内に滞在していたような場合は、その後の在留資格の更新が認められないことも十分考えられます。
過去に有ったケースでは、就職から3ヵ月ほどで退職しその後は再就職をしないまま1年近くが経過していた方が居ました。納税課税証明書の額が極端に低かったことからこれらの滞在記録が発覚し、最終的には本国に帰国することとなりました。
採用に際し履歴書などの確認を行われると思いますが、前職との間にブランクが無いかの確認が必要です。
3:今後の在留期限
カテゴリー1・2の企業に所属する外国籍の方の場合、3年や5年の長期の「技術・人文知識・国際業務」をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、他企業から転職してきたような方の場合は無事に更新手続きが出来たとしても、なかなか長期の在留資格を貰えないケースが多いようです。転職者の場合は前職での滞在記録が換算されることが原因のひとつだと言われていますが、この在留期限については入国管理局の判断次第なので明確な基準は不明です。1年の在留資格を持つ転職者の方が3年以上の長期の在留資格を得るためには根気よく更新を続けるしかありません。
前項でお話しした方とは別件で、無職の期間が3ヵ月を超えてしまった方が再就職し運よく在留資格の更新が認められたケースもあります。しかし更新に際し3年以上の在留期限を貰えていないのが現実のようです。こちらも入国管理局に問い合わせたところ、在留状況や必要な届出を怠っていたことなどが要因のひとつとなって、長期の結果を貰えない場合もあるとのことでした。
上記の様に、既に就労可能な在留資格をお持ちの方であったとしても、これまでの滞在記録が在留資格更新手続きに影響する可能性があります。在留期限が切れる直前に転職を行う「転職を伴う更新申請」を行う必要がある際には、これまでの記録を本人に細かく確認する必要があるため特に注意が必要です。
今後も外国人採用をご検討される皆様に有益な情報を提供して参ります。
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