平成29年4月26日、永住許可申請要件緩和に関するガイドラインが改定された。 本来、永住許可申請には10年以上の日本滞在が必要である。しかし、このガイドラインではその例外として特定の要件を満たす者であれば滞在期間が10年に満たない場合であっても永住許可申請を認める旨が規定されている。今回はその内の高度人材ポイントを利用した「永住許可に関するガイドライン」改定による現状と、企業が求められる対応について紹介したい。
改定された「永住許可に関するガイドライン」では「高度人材ポイント」を用いて申請人の職歴や経歴のポイント換算を行う。この「高度人材ポイント」は、本来は在留資格「高度専門職(旧特定活動:高度人材)」という就労資格の申請に用いるが、かかるポイント制度上で高得点を獲得できるほど優秀な人材には永住許可申請の門戸を広げようという趣旨のもと規定されたものである。就労審査部門と永住審査部門との垣根を越えて共通のポイント制度を用いるという点では非常に画期的な改定であったといえるだろう。
高度人材ポイントを利用した「永住許可に関するガイドライン」の対象となるのは、「技術・人文知識国・際業務」「経営・管理」「教育」などの就労資格を持ち滞在している者である。平成28年には日本で就労する外国人の数が100万人を超えた事も話題となったが、日本の在留資格の制度上「就労資格」を得て来日する外国人の方はそもそも優秀な経歴をお持ちの方が非常に多い。本改定により、多くの方が永住許可申請の可能性を得られた事になり、いわば10年滞在を要件とする原則と、ガイドラインによる例外とが逆転現象を起こしている状況だと評価できるだろう。本件ガイドラインの具体的な制度の解説は、法務省のウェブサイトや過去にコラム上での取り扱いがあるため、そちらを参照されたい。
本改定に伴い、過去の高度人材ポイント制度で用いられていたポイントシートの様式変更も行われた。具体的には、日本語検定1級保有者だけでなく、条件付で2級の保有者にもポイントが付与されるようになるなど、より項目が増加・緩和され、ポイントが取得しやすい物へと変更されている。
入国管理局へのポイントを申告する際、このポイントを証明する資料を添付し申請書と併せて提出しなければならない。先ほどの日本語検定の例で言えば、その合格証書の写し等がその提出すべき疎明資料に該当する。
永住許可には就労制限がないだけでなく、またローンを組む際に永住者のみを対象とした低金利のサービスを提供している銀行が多いなど、長期滞在を望む外国人にとって非常に魅力的な在留資格であるといえるだろう。 一方で直接就労に関係することが少ない資格であることから、これまでは企業側もあまり注目してこない分野の在留資格でもあった。
本改定によって、就労資格それ自体が永住許可申請への近道としての付加価値を得た今こそ、企業としても従業員の永住許可申請により積極的に協力することが企業のブランド力アップに繋がるといえるだろう。
手続きに使用するポイントの証明資料として、企業側も様々な書類の提供を求められる可能性がある。その中には補助金の交付決定通知書や、申請人外国人の先端プロジェクトへの従事記録など、一部企業秘密に近い情報の提供を求められる場面も考えられる。
現在、かかる制度を利用した永住許可申請は急増しており入国管理局の職員もその対応に追われている。まだ始まって間もない制度ではあるが、在留外国人同士の情報共有なども進み徐々に制度も浸透しており、その申請件数はまだまだ増加することが予想される。永住許可申請を求める外国人に対し、企業としてどの程度までの協力を行うのか、ある程度の社内規定の準備を進めておくことが期待される。
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