企業研修において、利用される在留資格について

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弊社によくいただくお問い合わせのひとつとして、企業研修の受け入れがあげられます。例えば、「海外現地法人の社員を短期間受け入れて、研修を行いたいがビザは必要なのか、必要な場合どの在留資格に該当するのか」といった問い合わせです。

 一言に「研修」といっても、受け入れる企業によって、研修目的や内容は様々です。企業理念研修や管理職研修のように座学のみの場合、工場作業や実地研修のように実務研修を伴う場合、また給与支払の有無によっても該当する在留資格は異なります。在留資格によって活動内容が定められている現行の入管法に適用させるには、研修内容を申請される在留資格にあてはめて調整していただく必要があります。

 在留資格のひとつ「研修」は、日本の公私の機関に受け入れられて行う技能などの習得をする活動と定められています。この在留資格で行うことができる研修とは、海外生産拠点の現地社員を日本に呼び寄せて行う社内研修・工場見学に限られており、実務研修を伴わない研修、国や地方公共団体等の資金により主として運営される事業として行われる公的研修に限定されています。ただし、そして、公的機関が行う場合には実務研修を伴う研修も認められています。
例えば、現地採用社員の理念研修や座学研修などの活動内容が認められています。

 「研修」と似ているものとして「技能実習」があげられます。「技能実習」は、日本で開発され培われた技能・技術・知識の開発途上国などへの移転等を目的とし、1年目から労働者として在留する外国人技能実習生に与えられる在留資格です。日本の公私の機関に受け入れられて行う技能等の習得をする活動と定められている点は「研修」と同様ですが、「技能実習」の場合は、一定の講習期間の後に雇用契約に基づいてその機関の業務に従事して技能などを修得する活動に従事するものであり、雇用契約などによる雇用関係の有無に大きな違いがあります。そのため「技能実習」の場合は、技能実習生にも労基法が適用され、最低賃金や残業代の支払、夜間の割増賃金などの決まりが適用され、労働関係法上の保護が受けられます。
例えば、自動車メーカーで、現地子会社の社員が自動車の組み立て技術の移転のため、約3ヵ月間雇用契約に基づいて日本の工場内で当工程にて研修を受ける場合は、この「技能実習」での申請が必要です。

 また、「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」にてご来日後、日本本社で行う研修内容に、実務研修が含まれる場合には注意が必要です。製造業の場合の工事作業、接客業務など、本来は就労可能な在留資格で行うことができない単純作業が含まれている場合です。企業側の見解としては、「現場の業務が分からなければ仕事にならない。短期間でも現場に出てもらいたい」というものですが、「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」の在留資格でこれらの業務に就かせた場合には、例え研修の一環であったとしても入管法違法となる可能性があり、慎重な対応が求められます。

 実務上、研修として受け入れを希望される企業は多くなっておりますが、上記のとおりそれぞれの在留資格ごとに受入条件等が異なるため、雇用企業担当者は頭を悩ませるケースが増えていると思われます。主に日本での活動内容と雇用形態などを照らし合わせ、何かしらの条件を変更していただくなどの対策を講じていただく必要があるかもしれません。

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ACROSEEDグループプロフィール
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