ソフトエンジニア遠隔派遣ビジネス | 社員もすべて遠隔勤務。ノマドを推奨!

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IT技術者不足が叫ばれているが、特に高度なスキルを持ったソフトエンジニアの需要は増える一方で、供給が追いついていない。一方、エンジニア側は「スキルに見合った報酬が払われていないのが原因」という。

そうした中、エンジニアと企業をマッチングするサービスは増えているが、大半が引き合わせるだけで、エンジニアの質のチェックや交渉、契約には関与しない。そのため、企業側は期待どおりの成果が得られなかったり、エンジニアには支払いがされなかったりと、両者にとって満足のいかないケースも多い。

今回紹介するToptalは、派遣するエンジニアを厳しく審査し、品質管理をしている点が競合他社と異なる。応募するエンジニアの合格率は3%未満といわれ、「エリートエンジニア集団」としてのブランドを築いている。
また、同社の派遣エンジニアは、世界に散在しており、クライアント企業のプロジェクトに遠隔で従事させている。(Remote Staffing)

Toptal自身、事務所を持っておらず、社員もすべて遠隔勤務である。同社は、前回、紹介したHacker Paradiseのスポンサーでもあるが、社員にも、仕事をしながら旅行するノマド生活を奨励している。ToptalのエンジニアがHacker Paradiseを利用して旅行し、Hacker Paradiseを利用して旅行しながら働きたいというエンジニアは、Toptalで仕事を見つけることができる。

■Toptal

URL http://www.toptal.com
企業名 Toptal, LLC
本社所在地 ノマド(法人登録はデラウエア州)
フェイスブック https://www.facebook.com/pages/Toptal/141928212544793
ツイッター https://twitter.com/toptalllc
代表 Taso Du Val(共同創業者兼 CEO),
Breanden Beneschott(共同創業者兼 COO)
創業 2010年
クライアント数 2,000社以上
(AirBNB, JP Chase Morgan, KDDI America、ファイザーなど)
従業員数 約50人
売上 1億ドル(2015年見込み)黒字
2014年の売上は前年比 189%増
資金調達 有名VCが投資

創業経緯
創業者(20代)は高校中退後、数々のスタートアップでソフトエンジニアとして勤務。コンサルティング会社を営んでいる際に、グーグルやフェイスブックのエンジニアと同じくらい優秀なエンジニアが海外に大勢いるにもかかわらず、エンジニアを求めている企業に発掘されることが難しいことを実感。海外のソフトエンジニアとアメリカを中心とした企業とをつなげるサービスを思いつく。

アメリカでは、ソフトエンジニアの失業率は2.6%で、完全雇用(5.5%)の半分のレベルである。2012年の調査では、大規模なソフトのプロジェクトは、平均66%が予算をオーバーし、33%が予定が遅れており、人材不足が予算オーバーの原因の半分近くを占めるという結果が出ている。特にシリコンバレーでは、エンジニア獲得競争が熾烈である。

一方、有能なエンジニアらは、エンジニアが不足しているわけではなく、スキルに見合った報酬が支払われていないことが問題との見方を示している。社員ではなくフリーで働くことで、より高い報酬が得られると同時に、仕事と生活のバランスもとりやすくなるため、フリーを選ぶエンジニアも増えている。

今夏、新たにVCから資金調達を受け、スタートアップ支援のために、20%割引料金でエンジニアの派遣を開始した。

仕組み
厳しい審査過程を設け、有能なソフトエンジニアだけを集め、クライアント企業の各プロジェクトの要件に合わせて派遣する。エンジニアは一人でも、チームでも派遣可能である。

Upwork(前 eLance-oDesk)をはじめとする他のフリーランサー向け仕事仲介サービス(クラウドソーシングウ)は、仲介業者は求職者の質のチェックや条件交渉、契約には関与しない。雇用企業側は品質管理ができず、期待した製品や成果が得られず不満、エンジニア側は、よく知らない企業の仕事を請け負い、約束の料金が支払われなかったという事態も多発している。また、求職者の競合入札式のため、料金がどんどん下がっていき、最低料金を提示した求職者が仕事を得る場合が多いことに対する不満も高い。

エンジニアにとっては、不得意な営業や交渉などを行わなくてよく、かつクライアントにはスタートアップが多いため、最初から最後まで製品制作に関われ、また毎回、革新的なプロジェクトに関われるというのも魅力である。特に有能なエンジニアの間では、大企業で歯車のひとつとして一つの仕事のみ任されることに対する不満がある。

TopTalでは、求職者の面接、試験をして、質・レベルを確認し、企業からのプロジェクトにマッチさせる。毎月、応募者の3%未満しか受け入れないことで有名で、これはハーバード大学やNavy Sealよりも難関と言われている。(社名のToptal は top talentから。)

<エンジニア審査過程>

審査内容 合格率
第一次面接
人事部・リクルーターによる面接
語学・性格審査:
性格やコミュニケーション力、仕事への熱意などのほか、英語が流暢であることが条件であるため、英語力も試される。(登録エンジニアにアジア系が少ないのは、このためか。)
26.4%
アルゴリズム試験:
90分にわたるアルゴリズムの試験。
7.4%
第二次面接
少なくとも2人の認定エンジニアによる審査
技術試験:
ライブでプログラミング試験。
問題解決能力、技術経験、コミュニケーション力、創造性をチェック。
3.6%
第三次面接 テストプロジェクト 3.2%
仕事開始後 3.0%

<品質保証>
クライアント企業からは、エンジニア派遣時、500ドルの手付金を請求。
最高2週間のお試し期間があり、その期間に仕事の質に満足がいかなければ料金は無料で、手付金も返金する。作成したプログラムも返却不要である。
クライアントは、その時点で契約を終了するか、代わりのエンジニアの派遣を依頼することができる。そこからまた、お試し期間が始まる。代わりのエンジニアの派遣は5人まで可能。

特徴
95%のプロジェクトは遠隔で行われる。
派遣するエンジニアの大半が海外在住で、北中南米とヨーロッパを中心に90ヵ国以上にわたる。有名大学出身者、グーグルなどの有名IT企業、Top 100 Rails 貢献者、Django開発者、大学教授や著書なども登録している。

TopTal自体、事務所を持っておらず、社員は世界各地に散在している。(CEOはシリコンバレー在住。)

<エンジニアのコミュニティ>
各地で登録エンジニアら主導による交流会、技術会議などのイベントなどが開かれ、エンジニアのコミュニティ(Toptal Community)が築かれている。

日々、一人で孤独に働くフリーランスにとって、地元の他のメンバーと交流できるコミュニティは貴重である。他のトップエンジニアらとの交流を通じて、新たなスキルを学ぶこともでき、シニアメンバーが新メンバーの指導にもあたる。他国のメンバーと仲良くなり、訪問するメンバーもいる。

最近、各地のToptal Communityで、低所得・マイノリティなどのソフトエンジニアの学生をボランティアでメンタリングするプログラムを開始したが、これも、すべて遠隔で行われる。

同社サイトで掲載しているToptal Engineering Blogも、登録エンジニアらがボランティアで執筆している。

収益モデル
エンジニア派遣料。

週あたりの派遣料金:

フルタイムのFront-End or Back-Endエンジニア 1,800 – 3,200ドル以上
パートタイムのFront-End or Back-Endエンジニア 1,000 – 1,600ドル以上
フルタイムのQAエンジニア 1,200 – 1,800ドル以上
パートタイムのQAエンジニア 600 – 1,000ドル以上

Upworkなどのマッチングサイトよりは高いが、大手コンサルティング会社よりは安い。
プロジェクトの規模は、平均4万ドル。競合他社の10倍。

今後の展望
他企業向けに、エンジニアの審査などのサービスも提供予定。(よく頼まれるもよう。)

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有元 美津世プロフィール
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。 社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米27年。 著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』など多数。