在留資格申請上の学歴について

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入国管理局に提出する在留資格の許可申請書には、「最終学歴」という記載欄があります。今回は実務上の経験からこの「最終学歴」についてお話ししたいと思います。

 先ずこちらの「最終」を、多くの方は「最後」に通った学校と理解しているようですが、実はこの「最終」は、「最高」とご理解いただいたほうが、より正しいかと思います。通常、高校⇒大学⇒大学院のように徐々にランクを上げて学校に通うのが一般的です。しかし、外国人の方は本国の大学を卒業してから来日するケースが少なくありませんが、日本語学校に通った後、一律に日本の大学院に進学するのではなく、日本の専門学校に進学することも多々あります。この場合の「最終学歴」は、一部の特殊職種を除き、専門学校の学歴を記載するのではなく、本国の大学の学歴を記載したほうが申請上、比較的有利と言えるからです。

 次に、「学歴」について説明したいと思います。入管による「学歴」に対する審査は、主に「学位」から判断します。日本の大学や大学院の場合、「学位記」又は「卒業証明書」から「○○学学士」(英語版の書類ではBachelor)のように、一目瞭然でありますが、外国の場合、たとえ英語であっても、そう分かりやすく記載されるとは限りません。

 例えば、

※ アジアでは:

・外国人の数の絶対値が一番大きい中国の場合、学歴と卒業証明に関する書類が分かれており、それぞれ「学位证书」「毕业证书」(「学位証書」「卒業証書」)といいます。「学位证书」には、「学士」「硕士」「博士」があり、それぞれ日本の「学士」「修士」「博士」に相当します。こちらのほうは理解しやすいと思いますが、ややこしいのは「毕业证书」です。中国では高等教育の中に「四年制本科」「自学考四年制本科」「三年制专科」「高等职业技术」(「四年制大学」「通信制四年制大学」「三年制専科」「高度職業技術」)などさまざまな種類があります。しかし、これらの学歴は日本の「短期大学」や「専門学校」に相当するか否かはともかく、学位の有無のみで学歴が判断されます。「四年制本科」や「自学考四年制本科」であっても、学士学位を授与されない場合がある(理由はさまざま)ので、特に要注意です。「三年制专科」や「高等职业技术」はそもそも学位が授与されません。よって、一言で言うと、中国の「毕业证书」を見ても、日本の大学卒業に相当するかどうかは分かりません。「学位证书」を確認したほうが確実です。

・近年、ベトナムから来日する外国人が増加し続け、年単位で来日するベトナム人の数は中国人を抜かす勢いであります。ベトナムの場合は現在、技術職などで来日する方の学歴はほとんどが日本の学士に相当する、いわゆるバチェラーです。しかし、ベトナムの学位証書(大体ベトナム語と英語で併記)には、学士であっても、全てがBachelorと記載されるとは限らず、専攻分野によって分けられています。主に以下のものがあります。



・韓国の場合、ほぼ日本の学位制度と変わりがありませんが、一つ日本人に馴染みがない学校の種類があります。英語では「Junior Colleges」と表記される学校です。実はこちらの学校は日本の短期大学に相当し、卒業した方には「Associate Degree」(「準学士」、日本の短期大学では「副学士」)学位が授与されます。また、在留資格の許可申請書に、「短期大学」の下に少し小さい文字で「Junior College」が併記されており、ここからもこちらの学歴は日本の短期大学を卒業したに相当することが分かります。

※ 欧米の場合、学位にDiplomaとDegree二つの言葉を使われているのが多いようですが、何の学位なのかが理解しにくいです。ここで、イングランド,フランス,ドイツ3つの地域の主な学歴の名称を下表でまとめます。



なお、以上述べた外国の学歴と日本の学歴との対照関係については、あくまでも学術上からした一理であり、最終的な学歴及び学位の判断は入管の審査によります。

参考文献: (独立行政法人 大学評価・学位授与機構)
≪ベトナム高等教育の質保証≫
≪韓国高等教育質保証 インフォメーション・パッケージ≫
≪学位と大学 イギリス・フランス・ドイツ・アメリカ・日本の比較研究報告≫

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