2015年4月より、入管法が一部改正され新たに施行されました。今回は改正された在留資格の中の「技術・人文知識・国際業務」および「経営・管理」について説明したいと思います。
「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、就労可能な在留資格の中でも多く申請される在留資格だと思われます。この在留資格は入管法改正前の「技術」と「人文知識・国際業務」が一本化された在留資格です。
これに関しては、法務省のWebサイトに“専門的・技術的分野における外国人の受入れに関する企業等のニーズに柔軟に対応するため、業務に必要な知識の区分に必要な知識の区分(理系・文系)に基づく「技術」と「人文知識・国際業務」の区分をなくし、包括的な在留資格「技術・人文知識・国際業務」へと一本化します。”と記載してありますが、審査上は今まで通り、「技術」、「人文知識」、「国際業務」、という3つの分野に分けて審査されます。
一本化した理由としては、企業における人材活用の在り方が多様化しており、いずれの在留資格に区分されるかは不明確な場合があることは主な経緯となっております。
例えば「人間学」部を卒業し、企業のマーケティング部で人間システム開発に携わる業務を従事する場合、「技術」に該当するか「人文知識」に該当するかは判断しづらい場面を考えられます。また、例えば在留資格「技術」を有し、エンジニアの仕事を従事する外国人の方が時には業務上、簡単な翻訳や連絡などの業務をせざる得ない場合、企業や所属機関のニーズに対する柔軟化政策も一つの経緯だと考えられます。
また、法改正前の「人文知識・国際業務」という在留資格に関しては、その要件を誤解されている方が多いように思われます。“人文知識”・“国際業務”それぞれ要件があり、大まかに説明すると、歴史学や社会学や心理学などに関わる仕事は“人文知識”に該当し、よく申請される翻訳・通訳やデザインなどに関する仕事は“国際業務”に該当します。両方の要件を混合したままで申請をしてしまうと、不許可になる可能性があります。
実際、中国から来日して日本の大学を卒業し、その後、コンビニ加盟店の店長として雇われた方がいます。店のアルバイトの方も来客も中国人が多く、業務上、新人への研修教育および顧客への対応などで通訳する必要もあり、責任者として店の全般を運営管理する必要もあることから、単純労働ではないとのを理由で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請に至りました。
結果は不許可となり、理由を直接入管に聞いていないそうですが、弊社としての見解では、いくら説明しても、コンビニの店長としての仕事はシンプルに言えば“接客”に過ぎないとのことが不許可となった一つの要因だと考えられます。最後に申請人が弊社に“どうすればいいか”と電話をかけてきました。留学生が仕事を探して選ぶ際も、企業が外国人を採用する際も、やはり一度入管への確認や専門家に相談することをおすすめします。
もう一つ外国人の方の中で注目されている新しい在留資格は「経営・管理」です。
実際弊社では、個人客の中で「経営・管理」に関する問い合わせが非常に多い上、最近、取締役や部長として外国人を雇用したいということで企業からの問い合わせも増えています。この在留資格に関する相談は今になって増えたわけではなく、前身である「投資・経営」の時代から、日本国内に限らず海外からの電話も毎日絶えませんでした。
「投資・経営」の在留資格を申請する際、“投資金の流れが客観的に証明できる500万円以上の投資”が1つの要件でした。しかし、この在留資格の名前が「投資・経営」から「経営・管理」に変わったことで、外国人の方々から、「投資」という文言がなくなったので、もう500万円の資本金や証明などは必要ないでしょう。”と相談されることが増加しています。しかし残念ながら、答えは“NO!”です。
弊社は今回の法改正に関する入管が開催した研修会に参加し、個人の「経営・管理」在留資格については、今まで通り、「投資・経営」の申請条件と全く変わりがないとはっきり告げられました。
逆に、既に日本にある安定した企業(外資かどうかはともかく)が管理者を採用する際、その管理者の在留資格は緩和されました。
以前、取締役であっても、在留資格「人文知識・国際業務」を申請するのが一般的でした。入管法改正後、法務省入国管理局のWebサイトに“日本国内企業において事業の経営・管理活動を行う外国人を広く迎え入れることができるよう、これまでの外国資本との結びつきの要件をなくしました。”と記載してあります。現段階ではそれは役員などの「管理」職としての入国を指していると弊社が見解しています。
また、外資企業を誘致するため、新たに4ヵ月間の「経営・管理」在留資格を創設しましたが、これはあくまでも、既に日本に事務所の賃貸借契約を結び定款認証済の外資企業そしてこれから日本支社/支店での経営者や管理者に対しての緩和政策であります。いち早く日本での業務を始めたいが、「経営・管理」を申請して許可後に入国するのに時間がかかってしまうため、一時的に与えられる在留資格と考えられます。4ヵ月間の「経営・管理」在留資格として日本に入国後、すぐに支社もしくは支店の設立手続きをしなければなりません。設立後、「経営・管理」の更新許可申請をしますが、新たな在留資格として認定申請のように申請すると考えたほうが良いかと思います。4ヵ月間の「経営・管理」在留資格として日本に入国後、4ヵ月以内に支社もしくは支店の設立登記を完了しなければ、「経営・管理」の更新を許可されるのが難しくなると思われます。
また、実際弊社はつい最近、入管に一度4ヵ月間の「経営・管理」在留資格の変更許可申請をしたことがありますが、入管の職員に“そもそも4ヵ月間の「経営・管理」在留資格は認定申請に限られ、変更申請をするなら、希望期間を1年以上にしなければならない”と言われました。ただし、仮に4ヵ月間の「経営・管理」在留資格を認定申請しても、個人投資の外国人の方が上述のように4ヵ月間の「経営・管理」在留資格を取得するには相当難しいと考えられます。
これから多くの優秀な外国人経営者・管理者を日本に誘致することは日本政府の狙いでもあり、日本企業に限らず、海外の大企業からも有能な経営者・管理者がどんどん来日することが見込まれると考えております。
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