新卒外国籍留学生の採用ルーティン化について

弊社のクライアントからいただくご要望、ご相談で増えているのが、新卒外国籍留学生の採用時期についてです。数年前までは、「3月卒業、4月入社」、1年に一度の新卒採用をしていた企業が大半を占めておりましたが、ここ最近の傾向は主に3つに分類できます。①「3月卒業、4月入社(卒業見込み型4月入社)」、②「9月卒業、10月入社」、③「3月又は9月卒業、翌年4月入社(既卒型4月入社)」の3パターンを1年のルーティンとして、優秀な外国籍の人材を確保する傾向が伺えます。そのため、企業の採用の担当者としては、1年中、採用活動をおこなうこととなり、内定を出すことに伴い、在留資格申請の手続きが発生している状況であります。

従来型であり最もポピュラーな上記①「3月卒業、4月入社」の場合、例年、前年の12月から卒業見込みの段階で申請が開始され、審査結果は翌年1月から3月にかけて完了し、3月末頃の卒業した旨の立証をもって在留カードが交付され、4月入社の流れが一般的ではありました。ただ、4月入社でも上記③「3月又は9月卒業、翌年4月入社」の場合、すでに9月の時点で卒業しており、入社までに数か月の時間があります。卒業したにも関わらず、在留資格「留学」のまま、入社までの数か月間、日本に在留するというのは好ましい滞在とは言えません。在留資格制度は外国人の活動の類型である以上、学生ではない、つまりは留学の活動を行わないにも関わらず「留学」の在留資格で滞在するのは想定外と言えます。そこで、実務上は、卒業から入社までの期間(在留上のタイムラグ)を埋めるため、在留資格「特定活動」に変更する必要性が高まっております。

在留資格「特定活動」といっても、内容は“採用内定”になります。要するに採用内定の段階で、入社までの期間を日本で在留することを許可されることになります。すでに留学生ではない内定者が行う活動について在留が許される在留資格と言い換えることもできると思います。雇用予定企業にとっても入社前の連絡等の必要性から内定者が継続して滞在する方が都合がよいということもございます。この内定者のための特定活動の在留資格の申請をする際に重要となるのは、内定者の“経費支弁能力”、雇用予定企業の“内定者との連絡義務等の遵守が記載された誓約”になります。“経費支弁能力”としては、実務上は、“海外からの仕送り、預金額が確認できる通帳コピーや残高証明書等”です。原則として就労が許可されていない留学生が、内定者となった途端にもてあます時間を利用し、許可されていないアルバイト等にいそしむことが許されるとすれば本末転倒と言えましょう。また、就労ができない状況で困窮することがわかっていながら滞在を許すわけにもいかないのでしょう。

次に、“内定者との連絡義務等の遵守が記載された誓約”は、決まったフォーマットがなく、あくまでも一例になりますが、下記のような内容になります。
 1. ○月から○月末までに内定先より発信するEメールへの返信(3回程度)
 2. 2週に1度下記インターネットサイト(閲覧者限定サイト)における安否情報の報告
 3. その他、長期にわたり上記拠点を離れる場合の事前連絡

要するに、入社までの期間の生活費は問題なく、雇用予定企業として入社までの期間中についても内定者をケアしていることを入国管理局に立証する必要があります。当然、雇用予定企業の規模によっても期間は前後いたしますが、この審査期間はおおむね1ヵ月程度です。審査に問題なければ在留資格「特定活動」の在留カードが交付されます。利点としては、入社前に就労の在留資格への変更申請をおこないますが、その際、すでに入国管理局としては、雇用予定企業に入社することを前提で「特定活動」の許可を出しておりますので、日本に居ながらにして安心して審査結果を待つことができることが挙げられます。ただ、手続きとしては、「留学」から「特定活動」へ、「特定活動」から「就労の在留資格」へと、2度の申請手続きがあり、迂遠に感じるかも知れません。もちろん、迂遠な手続きを嫌ってか、失念してなのか、実務上は3月又は9月に卒業した内定者がそのまま在留資格「留学」で在留し、翌年4月の入社にあわせて就労の在留資格に変更申請をするケースもあり、今のところ問題なく許可されている例は多々あるようですが、入国管理局の見解としては、入社までの間、日本に在留するのであれば、「特定活動」を踏んだ上で、就労の在留資格に変更するよう指導を受けます。弊社は、上記の手続きをルーティン化してしまうほうがトラブルを避けることができると助言させていただいております。むしろ、企業側としては、コミュニケーション不足による内定辞退を防ぐことができ、尚且つ、入社前提で入国管理局からお墨付きをもらえる事で、就労の在留資格への変更許可の可能性が高まる実感を得やすいと思います。内定者としても、入社までの期間は日本に在留しても問題ないといった安心感が生まれる事等から考えても、在留資格「特定活動」へ変更する事をお勧めしております。

実のところ、留学生が卒業した後の滞在が緩やかに認められるようになってからの歴史は浅いといえます。話は変わりますが、内定者のみならず、就職活動を続ける留学生の在留についてもご説明いたします。数年前までは、大学、専門学校卒業後、就職が決まっていなければ猶予期間はありませんでした。しかし、せっかく日本を留学先に選び、遥々日本に滞在していた留学生が、卒業後に就職先がないからといって直ちに帰国するしか選択肢しかないとすれば、今後は日本に留学し、その後の就労を希望する優秀な留学生は減少してしまうでしょう。現行は、一定の条件をクリアする必要はありますが、“就職活動”のための「特定活動」、“採用内定”の「特定活動」等、留学生にとっては日本で就職先を選択するための滞在が認められ、企業としては優秀な留学生を確保するための猶予期間があたえられるようになってきております。

企業の入社時期、職務内容等はグローバル化に伴い多岐に渡ってきております。そういった中で、在留資格の制度をうまく利用し、優秀な外国人を確保し、事業の発展に結びつけていただければと思います。

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ACROSEEDグループプロフィール
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