平成26年6月18日、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が公布されました(一部を除き、平成27年4月1日施行)。これによると在留資格「人文知識・国際業務」と「技術」が一本化され、新たに「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が新設されます。これに該当する活動は、主に以下のいずれかに係る活動となります。
(1)日本の公私の期間との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野
(2)法律学、経済学、社会学、その他の人文知科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
(3)外国の文化に基盤を有する思考、もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動
(企業内転勤などの一部業務は除きます)
従来、業務に要する知識が文系は「人文知識・国際業務」、理系は「技術」と区分されていましたが、これに伴い文系、理系の区分が無くなることになります。
そもそも世界的にみれば大学の学部・学科が文系か理系かという区分で分かれている事自体が珍しく、最近では「環境情報学部」などのように、日本の大学でも文系・理系の区分がつかない学科も多く見られるようになりました。また、企業内での職種においても同様のケースが多くみられるようになっています。
例えば、ブリッジSEは発注者である日本企業の担当者と開発者であるシステムエンジニアの間に入り、的確に情報を伝えるため高度な日本語能力が要求される一方、エンジニアとしての高度な知識も求められます。このような外国人材を採用する際、企業担当者の頭を悩ませるのが、「人文知識・国際業務」と「技術」のどちらで申請するかということです。従来はこの境界が不明確なこともあり、申請後に在留資格の変更を余儀なくされるケースもありましたが、今後はこのような問題は解消される模様です。
また、文系として採用された人材であっても社内研修の一環として、一時的に情報処理などの職務に就くことも考えられます。従来は仕事量の割合に応じて、在留資格の変更、または資格外活動許可の取得が必要とされていましたが、「技術・人文知識・国際業務」への一本化によりこのような申請作業も不要となります。今後は、外国人材が活躍できる業務の幅も広がることが期待されます。
ただし、注意して頂きたい点としては、在留資格の該当性そのものが緩和された訳ではないということです。要は「人文知識・国際業務」か「技術」のどちらかに該当する活動でなければならず、単純労働に該当する可能性の高いと思われる営業、接客、工場内作業などでは、職務内容にもよりけりですが、依然として「技術・人文知識・国際業務」の許可は難しいといえます。これは社内研修などの場合も同様で、キャリア形成のための一時的な配属であっても店舗での接客などであれば、不法就労に問われる可能性も否定できません。そのため、雇用企業側としては、外国人材の職務内容については常に入管法に合致するかという観点から把握しなければなりません。
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